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その淫魔の名は
手の中の奇跡
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書庫のソファの上に黒いドレス姿で、意識を失っているサラの頭を、膝に乗せ、手の甲で頬をそっとなぞりながら、遠い昔のプラチナブロンドの女性の事を思い出していた。そして、現在この中にいる奇跡に、そっと囁いた。
「もう、離れる事はない。決して側から離さない。誰にも…運命にすら君を渡しはしない。君は永遠に私のものだ。……たとえ君が望まなくても。」
それが、身勝手な自己満足であることを自覚しながら、それでも、そう言葉にした。もう決めたのだ。彼女を赤い部屋で見つけた瞬間に。
頬にあてていた手の甲を耳のうえに移し、艶やかな黒髪を優しく指で弄んでいると、瞼が一度、震えて、エメラルドグリーンの瞳が現れる。
「レオ様」
「目が覚めた?サラ」
膝に乗せていたサラの額にキスを落とす。
「長く、意識を失っておりましたでしょうか?」
サラは、申し訳なさそうな表情で身体を起こそうとする。
「そんなに長い間ではなかったよ。無理をさせてしまったね、まだ、起きなくても良い」
やんわりと、それを阻む。
「申し訳ございません」
困惑した表情を浮かべた後
「また魔力を頂いてしまって」
サラは、悲しげにレオから目を逸らした。
「私から、こうやって魔力を受け取るのは辛いかい?君に、どれだけ魔力を与えても困る程、か弱いインキュバスでは無いつもりなんだけど。」
「そうでは無いのです。そうではなくて」
「そうではなくて?」
「私に、そんな価値など無いのです。私には何も無い。記憶も…サキュバスとして人間を食べる力すら無い。不完全で脆弱な存在です。力の無い者は、この世界で生きていてはいけないのです。私は、そう思うのです」
自分に言い聞かせるように、サラは、そう言った。
「…………君の価値、君の生きる意味が、私。それでは、駄目だろうか?」
「そんな……恐れ多いことです、それから、あのあの……お膝から、離して頂けますか?」
居心地悪そうに視線を逸らしたまま、膝から起き上がろうとする彼女の肩を押さえて押し留める。
「……話が終わるまで待って。それなら、命令の方が良い?」
加虐的な光を瞳に宿して、身を屈めて囁く。
「サラを毎日、味あわせて。好きな場所で、好きな時間に、好きな方法で。……君は下着を着けてはいけないよ。そして、私から呼ばれたら、自ら足を開くんだ。私を愛して下さいませと、言ってね。」
サラは、息をつめて私の顔を、ようやく見た。妖しい光をたたえた私の瞳と視線が絡み合う。
「………ご命令……でしたら」
苦しげな表情で彼女は何とか、それだけ答えた。
「そんな顔を、させたい訳では無いのに。どうしたら私の気持ちが伝わるのだろう」
私は苦笑を浮かべて溜息をついた。
「いっそ、何も考えられないように、快楽だけ与え続けてしまいたくなるよ。一週間くらい私と絡まっていれば、そんな余計で面倒で堅苦しい事を考える余裕は、無くなると思うのだけれど………」
そう言った後、暫くレオは考えてから決心したように言葉を続ける。
「そうだ。ちょっと、時間を作るから、そうしようか。」
「ええっ」
「それが良いと思うよ。サラは頭で考え過ぎなんだよ。そうと決まったら、いつにしようか。早い方がいいよね。何だかハネムーンみたいだねー。」
「れ、レオ様、それは………」
「あ、しまった。由希人くんの、ゴタゴタの目処がたつまで、ゆうきさんの元にサラを派遣するって言ってしまった。うっかりしてた」
「伺います!ゆうきさまの為に誠心誠意、尽くさせていただきます!」
「なんかキズ付くなぁ。自宅は、蛇みたいな由希人くんがいるから、大丈夫なんだよ。彼女が会社に居る時とか外出時の護衛。多分、彼女、日に日に美味そうになってくはずだからね」
「かしこまりました」
「それから、今夜から君の私室は、私の隣に変更~あ、ご希望なら同じ部屋でも」
「隣のお部屋で結構でございますっ」
「もう、離れる事はない。決して側から離さない。誰にも…運命にすら君を渡しはしない。君は永遠に私のものだ。……たとえ君が望まなくても。」
それが、身勝手な自己満足であることを自覚しながら、それでも、そう言葉にした。もう決めたのだ。彼女を赤い部屋で見つけた瞬間に。
頬にあてていた手の甲を耳のうえに移し、艶やかな黒髪を優しく指で弄んでいると、瞼が一度、震えて、エメラルドグリーンの瞳が現れる。
「レオ様」
「目が覚めた?サラ」
膝に乗せていたサラの額にキスを落とす。
「長く、意識を失っておりましたでしょうか?」
サラは、申し訳なさそうな表情で身体を起こそうとする。
「そんなに長い間ではなかったよ。無理をさせてしまったね、まだ、起きなくても良い」
やんわりと、それを阻む。
「申し訳ございません」
困惑した表情を浮かべた後
「また魔力を頂いてしまって」
サラは、悲しげにレオから目を逸らした。
「私から、こうやって魔力を受け取るのは辛いかい?君に、どれだけ魔力を与えても困る程、か弱いインキュバスでは無いつもりなんだけど。」
「そうでは無いのです。そうではなくて」
「そうではなくて?」
「私に、そんな価値など無いのです。私には何も無い。記憶も…サキュバスとして人間を食べる力すら無い。不完全で脆弱な存在です。力の無い者は、この世界で生きていてはいけないのです。私は、そう思うのです」
自分に言い聞かせるように、サラは、そう言った。
「…………君の価値、君の生きる意味が、私。それでは、駄目だろうか?」
「そんな……恐れ多いことです、それから、あのあの……お膝から、離して頂けますか?」
居心地悪そうに視線を逸らしたまま、膝から起き上がろうとする彼女の肩を押さえて押し留める。
「……話が終わるまで待って。それなら、命令の方が良い?」
加虐的な光を瞳に宿して、身を屈めて囁く。
「サラを毎日、味あわせて。好きな場所で、好きな時間に、好きな方法で。……君は下着を着けてはいけないよ。そして、私から呼ばれたら、自ら足を開くんだ。私を愛して下さいませと、言ってね。」
サラは、息をつめて私の顔を、ようやく見た。妖しい光をたたえた私の瞳と視線が絡み合う。
「………ご命令……でしたら」
苦しげな表情で彼女は何とか、それだけ答えた。
「そんな顔を、させたい訳では無いのに。どうしたら私の気持ちが伝わるのだろう」
私は苦笑を浮かべて溜息をついた。
「いっそ、何も考えられないように、快楽だけ与え続けてしまいたくなるよ。一週間くらい私と絡まっていれば、そんな余計で面倒で堅苦しい事を考える余裕は、無くなると思うのだけれど………」
そう言った後、暫くレオは考えてから決心したように言葉を続ける。
「そうだ。ちょっと、時間を作るから、そうしようか。」
「ええっ」
「それが良いと思うよ。サラは頭で考え過ぎなんだよ。そうと決まったら、いつにしようか。早い方がいいよね。何だかハネムーンみたいだねー。」
「れ、レオ様、それは………」
「あ、しまった。由希人くんの、ゴタゴタの目処がたつまで、ゆうきさんの元にサラを派遣するって言ってしまった。うっかりしてた」
「伺います!ゆうきさまの為に誠心誠意、尽くさせていただきます!」
「なんかキズ付くなぁ。自宅は、蛇みたいな由希人くんがいるから、大丈夫なんだよ。彼女が会社に居る時とか外出時の護衛。多分、彼女、日に日に美味そうになってくはずだからね」
「かしこまりました」
「それから、今夜から君の私室は、私の隣に変更~あ、ご希望なら同じ部屋でも」
「隣のお部屋で結構でございますっ」
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