67 / 80
番外編 高志くんの甘い災難
高志くんの災難4
しおりを挟む
「食べてもらうのも、こうなるとなかなか難しいんだね」
どうしたものかと考え込んでしまう。何となくだけれどサキュバスの食事は、こう………相手が色々やって勝手に食べてくれると思っていたのだが、確かに死を覚悟して同時に楽しむ事は容易に出来るものではないかもしれない。
「失敗………ここ?」
彼女は、そっと小さな右手でボクの心臓の辺りを触れた。
「失敗?あ、うん、そう、ここが悪いんだ。よくわかったね」
「ここが………魔力で視ると………濁ってる」
触れられた部分が、ポワポワ暖かい気がする。
そう言えば、診察以外で誰かに触れられたのは久しぶりだ。………………ついさっきの衝撃的な突発的事故的接触を除けば。
「そうやって君に触れられると温かくて気持ちいい………………気がする」
「気持ちいい?」
「うん、気持ちいい」
彼女が嬉しそうにボクを見上げて弾けるように笑った。
発作とは違う痛みが心臓のあたりで、僅かに疼くように感じられたのは気のせいだろうか?
自然に彼女に両腕を回してしゃがみこみ軽く抱き込む。
彼女は右手はボクの胸に当てたまま左手を背中に回してくっついてくる。
自分を拒否しないで抱きしめ返してくれる存在にこんなに飢えていたんだなと気付く。
「ここに居てくれないかな。ボクは、良い食材ではないと思うけど、どちらかが消えるまでそばにいてはいけないかな?………少なくともボクは正直に言うとね、一人で消えるのは怖いんだ。君がそばに居てくれたら嬉しい」
ボクが死んでしまうまでと言う事は出来なかった。
しばらく、そうやってお互いに緩く抱き合っていた。
「うん………………そばにいる………約束する………………あ………名前がいる………名前」
「そういえば、名乗ってなかったよね。ボクの名前は桜木 高志。君は名前が無いんだったね」
「名前………約束に………必要。さくらぎたかし………付けて。名前」
いつもより幾分、早口で催促するかのような口調が可愛らしい。
「高志でいいよ。名前か………うーん、どうしようかな」
名前を付けるとは責任重大だが、こんなのは直感が大事だ、サクッと決めよう。
「そうだね~。裸で平気なところとか、楽園にいた頃のアダムとイブみたいだから、女の子だしイブとかどう?」
「とても良い………イブ。イブは………約束する………たかしのそばにいる」
うっとりとした表情で「イブ」「イブ」と繰り返す少女を微笑ましく見守っていたこの時は、淫魔の真名を賭けた約束が、そんなに重いものだとボクは知る由もなかった。
ボクとイブの不思議な共同生活は、こうして始まった。
イブは人間の食事を全く食べなかった。
かろうじて水や紅茶などを飲むことは出来たが、それに意味はないようだった。
飲んでも飲まなくてもいい嗜好品程度。身体を維持する為に必要なのは精気なのだという。
姿を大人にするのにも、髪や瞳の色を変化させる為にも魔力が必要で、魔力は人の精気をたくさん吸収すると使えるようになるらしい。
何度もボクの精気を食べる事を固辞するイブをキスくらいならと説得して精気を与える許しを得る。
彼女になるべくたくさんの精気を与えて、ボクがいなくなってからも一人で生きていけるようにしてあげたい。
彼女は、心臓を守りながら食べると言って、ボクの胸の上にしばらく手のひらを乗せた。
「口………開けて………うん………そう………舌出して」
そんな扇情的な言葉を、小さな女の子から平坦な声で言われる。
ボクは今、イブをベッドに組み敷くようにして覆い被さって、彼女の言うまま口を開けてだらしなく舌を出している。心臓にしっかりと手を当てたまま、下からイブがボクの舌先を舐める。
開けてままの口から唾液が流れて落ちそうになるのをボクの舌ごと唇をしっかり合わせて一滴たりとも零さず飲み込む。
頭がジンジン痺れるような背徳的な快楽と興奮に、このまま死んでしまうのではないかと思う。
いや、正確には死んでしまってもいいかもしれないなとおもっている。
彼女の身体が、もし大人だったら服を脱がせて、たくさん触って本懐を遂げたい。
其れが例え未遂で終わってしまっても。
触れる事が憚られる今の彼女ですら、敏感な部分を見たり触れたりしてみたいのだから自分が嫌になる。
本当の子供相手にそんな事、考えるだけでも下衆だ。
無理にそんな行為を強いる男も女も唾棄すべき対象だと断言出来るのに。
これは彼女の食事だ。ボクは彼女に捧げられる糧。彼女が成長する為の贄だ。
そう思い込まなければ暴走して彼女に酷いことをしてしまいそうだった。
無心に舌先を擦り合わしながらボクを貪るイブの陶酔した顔を薄目を開けて覗き見る。
その情景も含めてゾクゾクするような快楽だ。
普段なら、こんな事を1日に二度もしていて呼吸困難にならないわけがないのだが。
いつ大きな発作を起こして倒れてもおかしくない状態なのに。
彼女が胸に触れた事で何か身体に変化があったのだろうか。
さっき抱き合った後から少しだけ身体が軽い気がする。
このところは、体調が悪いのが普通という状態だったから、特殊な状況とはいえ異性とのこんな生々しい口付けを自分が二度も経験するとは思いもしなかった。
それでも、やはり疲れていたのだろう。早朝からの様々な出来事と長いキス(給餌行為)に、ボクは、いつの間にか眠ってしまっていた。
どうしたものかと考え込んでしまう。何となくだけれどサキュバスの食事は、こう………相手が色々やって勝手に食べてくれると思っていたのだが、確かに死を覚悟して同時に楽しむ事は容易に出来るものではないかもしれない。
「失敗………ここ?」
彼女は、そっと小さな右手でボクの心臓の辺りを触れた。
「失敗?あ、うん、そう、ここが悪いんだ。よくわかったね」
「ここが………魔力で視ると………濁ってる」
触れられた部分が、ポワポワ暖かい気がする。
そう言えば、診察以外で誰かに触れられたのは久しぶりだ。………………ついさっきの衝撃的な突発的事故的接触を除けば。
「そうやって君に触れられると温かくて気持ちいい………………気がする」
「気持ちいい?」
「うん、気持ちいい」
彼女が嬉しそうにボクを見上げて弾けるように笑った。
発作とは違う痛みが心臓のあたりで、僅かに疼くように感じられたのは気のせいだろうか?
自然に彼女に両腕を回してしゃがみこみ軽く抱き込む。
彼女は右手はボクの胸に当てたまま左手を背中に回してくっついてくる。
自分を拒否しないで抱きしめ返してくれる存在にこんなに飢えていたんだなと気付く。
「ここに居てくれないかな。ボクは、良い食材ではないと思うけど、どちらかが消えるまでそばにいてはいけないかな?………少なくともボクは正直に言うとね、一人で消えるのは怖いんだ。君がそばに居てくれたら嬉しい」
ボクが死んでしまうまでと言う事は出来なかった。
しばらく、そうやってお互いに緩く抱き合っていた。
「うん………………そばにいる………約束する………………あ………名前がいる………名前」
「そういえば、名乗ってなかったよね。ボクの名前は桜木 高志。君は名前が無いんだったね」
「名前………約束に………必要。さくらぎたかし………付けて。名前」
いつもより幾分、早口で催促するかのような口調が可愛らしい。
「高志でいいよ。名前か………うーん、どうしようかな」
名前を付けるとは責任重大だが、こんなのは直感が大事だ、サクッと決めよう。
「そうだね~。裸で平気なところとか、楽園にいた頃のアダムとイブみたいだから、女の子だしイブとかどう?」
「とても良い………イブ。イブは………約束する………たかしのそばにいる」
うっとりとした表情で「イブ」「イブ」と繰り返す少女を微笑ましく見守っていたこの時は、淫魔の真名を賭けた約束が、そんなに重いものだとボクは知る由もなかった。
ボクとイブの不思議な共同生活は、こうして始まった。
イブは人間の食事を全く食べなかった。
かろうじて水や紅茶などを飲むことは出来たが、それに意味はないようだった。
飲んでも飲まなくてもいい嗜好品程度。身体を維持する為に必要なのは精気なのだという。
姿を大人にするのにも、髪や瞳の色を変化させる為にも魔力が必要で、魔力は人の精気をたくさん吸収すると使えるようになるらしい。
何度もボクの精気を食べる事を固辞するイブをキスくらいならと説得して精気を与える許しを得る。
彼女になるべくたくさんの精気を与えて、ボクがいなくなってからも一人で生きていけるようにしてあげたい。
彼女は、心臓を守りながら食べると言って、ボクの胸の上にしばらく手のひらを乗せた。
「口………開けて………うん………そう………舌出して」
そんな扇情的な言葉を、小さな女の子から平坦な声で言われる。
ボクは今、イブをベッドに組み敷くようにして覆い被さって、彼女の言うまま口を開けてだらしなく舌を出している。心臓にしっかりと手を当てたまま、下からイブがボクの舌先を舐める。
開けてままの口から唾液が流れて落ちそうになるのをボクの舌ごと唇をしっかり合わせて一滴たりとも零さず飲み込む。
頭がジンジン痺れるような背徳的な快楽と興奮に、このまま死んでしまうのではないかと思う。
いや、正確には死んでしまってもいいかもしれないなとおもっている。
彼女の身体が、もし大人だったら服を脱がせて、たくさん触って本懐を遂げたい。
其れが例え未遂で終わってしまっても。
触れる事が憚られる今の彼女ですら、敏感な部分を見たり触れたりしてみたいのだから自分が嫌になる。
本当の子供相手にそんな事、考えるだけでも下衆だ。
無理にそんな行為を強いる男も女も唾棄すべき対象だと断言出来るのに。
これは彼女の食事だ。ボクは彼女に捧げられる糧。彼女が成長する為の贄だ。
そう思い込まなければ暴走して彼女に酷いことをしてしまいそうだった。
無心に舌先を擦り合わしながらボクを貪るイブの陶酔した顔を薄目を開けて覗き見る。
その情景も含めてゾクゾクするような快楽だ。
普段なら、こんな事を1日に二度もしていて呼吸困難にならないわけがないのだが。
いつ大きな発作を起こして倒れてもおかしくない状態なのに。
彼女が胸に触れた事で何か身体に変化があったのだろうか。
さっき抱き合った後から少しだけ身体が軽い気がする。
このところは、体調が悪いのが普通という状態だったから、特殊な状況とはいえ異性とのこんな生々しい口付けを自分が二度も経験するとは思いもしなかった。
それでも、やはり疲れていたのだろう。早朝からの様々な出来事と長いキス(給餌行為)に、ボクは、いつの間にか眠ってしまっていた。
0
お気に入りに追加
306
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる