1 / 3
1話
しおりを挟む
「くそっ!ここまでやっても勝てないのか!」
人類世界最強と名高い勇者と呼ばれている男が膝をついた。
「もう魔力が持ちそうにないです…」
死んでなければどんな傷さえも治すことが出来る聖女と呼ばれている女の魔力が尽きた。
「くそ!俺はここまでなのかっ!」
剣の腕だけなら勇者に負けず劣らずの実力を持つ剣豪と呼ばれた男の剣が砕け散った。
他にも英雄と呼ばれた人達がいるが全員が全員、ボロボロで傷だらけだ。
「妾には勝てぬよ!勝てぬよ!そなた達が人間達の間で英雄と呼ばれているようだが妾にとっては関係のないことよ!」
英雄達の目の前に立ちはだかるのはこの世で見たことがないほど美しい女だった。だが美しい見た目に騙されてはいけない。こいつは世界の破壊を求め実行しようとしている存在だからだ。
「だからと言って僕たちは諦めるわけにはいかない!勝てないのなら勝つまで諦めない!」
勇者は持っている聖剣を支えにして立ち上がる、膝は震えて立つのも精一杯のようだ。
「そろそろ俺の出番かな?」
俺は倒れている英雄達の前にそして1番前にいて、ただ1人立ち上がろうとしている勇者よりも前に出る。
「れ…レイン…なんで…ま…待ってくれ…僕はまだ戦えるんだ」
勇者は前に出た俺に辛そうな表情を浮かべ一歩また一歩と俺に向かって近づいてくる。だが傷だらけで立つのもやっとな状態なので歩くたびに端正な顔が歪む。
「ありがとう…お前、お前達はよくやってくれたよ…だから後は俺に任せてくれ」
人類最強と名高い勇者と世界でも名のある英雄達が束になっても敵わない相手に俺はこれから1人で戦おうとしていた。
「《封印》を使うつもりなんだろ…だけど…それを使ってしまったら君が……」
「あぁ、あいつに倒すには《封印》の力しか無いからな」
俺は別に勇者より強い……とかそんなことはない。何をしたって俺は勇者に勝つことはできないだろう、勇者どころかこの場にいる英雄達誰1人として俺は勝つことはできないだろう、だが俺には俺だけの特別な力があった、それが《封印》の力だ。この《封印》の力は人間以外のモノならなんでも封印することができる力だ。それなら初めから使っていれば勇者達が傷つくこともなかったじゃないかと思うかもしれないがこの力を使うには代償が必要なんだ。その代償は封印する対処によって内容と大きさが変わるのだ。例えば小石を封印するなら多少の魔力を消費するだけで大丈夫だが意思がある存在とかだと小さいモノや弱いモノでも寿命を削られたり何日も目が覚めなくなるとかだったりと色々ある。
「あの相手を封印するってなるとその代償も大きくなるはずだ!」
「まぁそうだな…今までの比じゃないことは確かだろう」
そう意識あるモノを封印するってだけで代償はかなり大きいのだから、意思がありなおかつ人類最強と呼ばれている勇者、そして勇者率いる世界で名高い英雄達が一丸となって戦っても勝てなかった相手だ。しかも相手はまだまだ余裕そうで底が知れないそんな存在を封印するってなると今まで封印して払って来た代償よりと確実に大きく想像もできないような代償を払わなければならないだろう。
「最悪死んでしまうかもしれない!」
「そうかもな」
あいつを封印するための代償で俺は死んでしまうかもしれない。
「だから!」
「だから! 僕が戦う! って言うんだろうなお前は」
俺は最初から死んでも構わないと一人であいつを封印するつもりだった。だが勇者は俺が一人であいつの元へ行こうとしているのに気が付き阻止して来たのだ。そして勇者は俺に力を使わせないためにもあいつの元へ自分が戦うと言って各地の英雄達に頼み込み協力を得てあいつの元へ戦いに向かったのだ。
「だがお前ではあいつには勝てない」
「そ…そんなことは……」
そんなことはないと言いたいのだろう。だが勇者の口からその言葉が出ることはない。実際に戦ってみてあいつに勝てるビジョンが浮かんでこない。それは一番前で戦っている勇者が一番わかっている、無理矢理にでもわからされているところだろう。
「後ろを見てみろよ…」
「う…しろ……?ッッッ」
勇者は前を、前だけを向いて戦っていた。それは別に後ろを気にしていないわけではないのだろう。うしろに気を向けられるだけの余裕がない、それほどまでに勇者とあいつの力には差があるのだ。
「勇者であるお前はまだ戦えるかもしれない、だが後ろの連中はもう立ち上がることさえできないだろう」
「……ッッッッッッ!」
勇者は後ろを振り返り言葉にできない程のショックを受けた顔をした。勇者に協力して一緒に戦ってくれていた英雄達はボロボロで誰一人として無事な奴はおらず誰一人として立ち上がっている者はいなかった。
「そう言うことだ、ありがとうな」
「…ぼ………僕はなんにもッッ……」
勇者も後ろを振り返りようやく今の状態を知ることが出来たのだろう。勇者は自分が戦えるのだから仲間も戦えると思っていたのだろう。だが実際には戦える者は勇者ただ一人だけだ。ある者は手をある者は足をある者は大量の血を失っていたのだ。辛うじて息はしているがこれ以上戦うことはもちろん今すぐ回復に努めないと生きられる保証はなかった。
「それじゃ後は任せた」
「………うんッッ……」
俺は勇者に後のことを任せてあいつの元へ向かう。
「なんじゃ?そなたがやるのか?そなたはそこの勇者と呼ばれている奴より弱そうなんじゃが妾を楽しませてくれるのか?」
「すまないなお前を楽しませてやることはできないよ、一瞬で終わるからな!《封印》」
俺はあいつに向かって《封印》を使う。
そして俺とあいつは姿を消したのだった。
人類世界最強と名高い勇者と呼ばれている男が膝をついた。
「もう魔力が持ちそうにないです…」
死んでなければどんな傷さえも治すことが出来る聖女と呼ばれている女の魔力が尽きた。
「くそ!俺はここまでなのかっ!」
剣の腕だけなら勇者に負けず劣らずの実力を持つ剣豪と呼ばれた男の剣が砕け散った。
他にも英雄と呼ばれた人達がいるが全員が全員、ボロボロで傷だらけだ。
「妾には勝てぬよ!勝てぬよ!そなた達が人間達の間で英雄と呼ばれているようだが妾にとっては関係のないことよ!」
英雄達の目の前に立ちはだかるのはこの世で見たことがないほど美しい女だった。だが美しい見た目に騙されてはいけない。こいつは世界の破壊を求め実行しようとしている存在だからだ。
「だからと言って僕たちは諦めるわけにはいかない!勝てないのなら勝つまで諦めない!」
勇者は持っている聖剣を支えにして立ち上がる、膝は震えて立つのも精一杯のようだ。
「そろそろ俺の出番かな?」
俺は倒れている英雄達の前にそして1番前にいて、ただ1人立ち上がろうとしている勇者よりも前に出る。
「れ…レイン…なんで…ま…待ってくれ…僕はまだ戦えるんだ」
勇者は前に出た俺に辛そうな表情を浮かべ一歩また一歩と俺に向かって近づいてくる。だが傷だらけで立つのもやっとな状態なので歩くたびに端正な顔が歪む。
「ありがとう…お前、お前達はよくやってくれたよ…だから後は俺に任せてくれ」
人類最強と名高い勇者と世界でも名のある英雄達が束になっても敵わない相手に俺はこれから1人で戦おうとしていた。
「《封印》を使うつもりなんだろ…だけど…それを使ってしまったら君が……」
「あぁ、あいつに倒すには《封印》の力しか無いからな」
俺は別に勇者より強い……とかそんなことはない。何をしたって俺は勇者に勝つことはできないだろう、勇者どころかこの場にいる英雄達誰1人として俺は勝つことはできないだろう、だが俺には俺だけの特別な力があった、それが《封印》の力だ。この《封印》の力は人間以外のモノならなんでも封印することができる力だ。それなら初めから使っていれば勇者達が傷つくこともなかったじゃないかと思うかもしれないがこの力を使うには代償が必要なんだ。その代償は封印する対処によって内容と大きさが変わるのだ。例えば小石を封印するなら多少の魔力を消費するだけで大丈夫だが意思がある存在とかだと小さいモノや弱いモノでも寿命を削られたり何日も目が覚めなくなるとかだったりと色々ある。
「あの相手を封印するってなるとその代償も大きくなるはずだ!」
「まぁそうだな…今までの比じゃないことは確かだろう」
そう意識あるモノを封印するってだけで代償はかなり大きいのだから、意思がありなおかつ人類最強と呼ばれている勇者、そして勇者率いる世界で名高い英雄達が一丸となって戦っても勝てなかった相手だ。しかも相手はまだまだ余裕そうで底が知れないそんな存在を封印するってなると今まで封印して払って来た代償よりと確実に大きく想像もできないような代償を払わなければならないだろう。
「最悪死んでしまうかもしれない!」
「そうかもな」
あいつを封印するための代償で俺は死んでしまうかもしれない。
「だから!」
「だから! 僕が戦う! って言うんだろうなお前は」
俺は最初から死んでも構わないと一人であいつを封印するつもりだった。だが勇者は俺が一人であいつの元へ行こうとしているのに気が付き阻止して来たのだ。そして勇者は俺に力を使わせないためにもあいつの元へ自分が戦うと言って各地の英雄達に頼み込み協力を得てあいつの元へ戦いに向かったのだ。
「だがお前ではあいつには勝てない」
「そ…そんなことは……」
そんなことはないと言いたいのだろう。だが勇者の口からその言葉が出ることはない。実際に戦ってみてあいつに勝てるビジョンが浮かんでこない。それは一番前で戦っている勇者が一番わかっている、無理矢理にでもわからされているところだろう。
「後ろを見てみろよ…」
「う…しろ……?ッッッ」
勇者は前を、前だけを向いて戦っていた。それは別に後ろを気にしていないわけではないのだろう。うしろに気を向けられるだけの余裕がない、それほどまでに勇者とあいつの力には差があるのだ。
「勇者であるお前はまだ戦えるかもしれない、だが後ろの連中はもう立ち上がることさえできないだろう」
「……ッッッッッッ!」
勇者は後ろを振り返り言葉にできない程のショックを受けた顔をした。勇者に協力して一緒に戦ってくれていた英雄達はボロボロで誰一人として無事な奴はおらず誰一人として立ち上がっている者はいなかった。
「そう言うことだ、ありがとうな」
「…ぼ………僕はなんにもッッ……」
勇者も後ろを振り返りようやく今の状態を知ることが出来たのだろう。勇者は自分が戦えるのだから仲間も戦えると思っていたのだろう。だが実際には戦える者は勇者ただ一人だけだ。ある者は手をある者は足をある者は大量の血を失っていたのだ。辛うじて息はしているがこれ以上戦うことはもちろん今すぐ回復に努めないと生きられる保証はなかった。
「それじゃ後は任せた」
「………うんッッ……」
俺は勇者に後のことを任せてあいつの元へ向かう。
「なんじゃ?そなたがやるのか?そなたはそこの勇者と呼ばれている奴より弱そうなんじゃが妾を楽しませてくれるのか?」
「すまないなお前を楽しませてやることはできないよ、一瞬で終わるからな!《封印》」
俺はあいつに向かって《封印》を使う。
そして俺とあいつは姿を消したのだった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった
海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····?
友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
お馬鹿な聖女に「だから?」と言ってみた
リオール
恋愛
だから?
それは最強の言葉
~~~~~~~~~
※全6話。短いです
※ダークです!ダークな終わりしてます!
筆者がたまに書きたくなるダークなお話なんです。
スカッと爽快ハッピーエンドをお求めの方はごめんなさい。
※勢いで書いたので支離滅裂です。生ぬるい目でスルーして下さい(^-^;
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ああ、もういらないのね
志位斗 茂家波
ファンタジー
……ある国で起きた、婚約破棄。
それは重要性を理解していなかったがゆえに起きた悲劇の始まりでもあった。
だけど、もうその事を理解しても遅い…‥‥
たまにやりたくなる短編。興味があればぜひどうぞ。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる