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お使い精霊
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「・・高位精霊・・。」
流石に宰相もこれには動揺を隠せない。
御伽噺に語られる存在が目の前にいるのだから。小さかろうが、見た目がオコジョだろうが、伝説の生き物が今ここで、自分に話しかけている・・。
黒塗りの細工箱を開けると模様の部分が淡くひかる。見たこともない見事な細工だ。『蒼』の手がけた箱に違いない。
2匹して箱をがさごそあさる姿の微笑ましい事、小動物が悪戯をしている様にしか見えない。
眷属さえ愛らしいとは夜空様らしい。
「これは姫さんので、これが宰相殿宛ての手紙。それと菓子は・・これか。」
中には数点の封書と小分けされた菓子がぎっしりと詰まっていた。
菓子には、それぞれ名前札が付いている。シキとヒガは自分の名前を目ざとく見つけ、内心喝采をあげた。
「姫さんとシーアの黒持ちには、直接渡したい。急な事ですまんが、先触れを頼む。後のう、図書館職員さんはともかく、侍従さんと言うのは誰じゃ?侍従など沢山おるだろうに・・うん?違うな。おしぼりの侍従さん・・だな。」
「わ、私にですか?」
思わずと言った感で、側に控えていた年嵩の侍従から声が出た。
なるほど、先日の会議で冷えたおしぼりを渡し助言していた侍従だ。
「夜空様からお手紙とお手製の菓子。」
感極まって涙目じゃぞ。
周りの侍従も一緒になって「良かったな」と頷いている。
・・坊よ愛されとるのう。
「・・高位精霊・・。」
タナカとスズキの来訪はシーア側にも動揺をもたらした。
あの可愛らしい『黒』の眷属が高位精霊とは・・。
精霊をただのお使いに使うとは、どれだけの力量を持っているのだ。
引きつるシーアの面々に同情しつつ『うん、夜空様だから』・・そう言ってやりたいシキとヒガだった。
案内兼護衛騎士としてタナカ達の後ろに控えてはいるが、高位精霊に護衛の必要があるのか甚だ疑問だ。
「貴殿がシーアのケネス殿か。坊から手紙と手製の菓子を預かってきた。納められよ。・・貴殿は先日坊に求婚したそうじゃな?」
机の上に2匹して立ち上がり、ケネスの顔をしげしげと眺めている。
相手は高位の存在だが、あまりの愛らしさについ笑みがこぼれた。
「精霊殿の御眼鏡に適いますかな?」
・・ふむ。魔力量も豊富、胆力も十分、平民の出らしいが奥底に王気も持っとる、側におっても嫌な気一つ感じらん。
こうも気が凪いでいるとは、ホンに魔導士か?神官の様じゃ。
見目も申し分ないし、体も相当鍛えとるときた。
こりゃ当たりだぞ坊、中々の逸材じゃ。
スズキもこくん頷く。
「おいゴトウ、サトウ。お前達はどうじゃ。」
タナカの掛け声に応じ、机の上に新たな精霊が現れた。赤い小鳥と、形容しずらい緑の丸い生き物。
いや可愛いのだが・・すんなり破られる城の結界の意味とは・・。
小動物がフリフリ尻尾を揺らしながら円陣組んで内緒話とか、俺ら萌え殺す気なの?皆身悶えしてるじゃん!
あ、あいつ崩れ落ちた。
「『翠』はともかくとして、わしらは認めてやっても良いぞ。坊は押しに弱いからのう。押して押して押しまくれ。」
は?何言ってんの、この精霊達。
眷属とは言え、本人抜きでそんな勝手な発言大丈夫なのか?
確実に『翠』の逆鱗にふれる案件だ。
『翠』対4精霊?
待て待て待て!国を焦土にする気か?
「これは・・思ってもみないお言葉を頂いた、心強い。このケネス、相手がたとえあの『翠』殿であっても不退転で望む所存です。」
対するケネスは本気で喜んでいる。
ケネスの喧嘩上等発言に『頼むから自国で(他国で)で事を起こさないでくれ』
クリアゼとシーアの騎士達の心が一つになった。
流石に宰相もこれには動揺を隠せない。
御伽噺に語られる存在が目の前にいるのだから。小さかろうが、見た目がオコジョだろうが、伝説の生き物が今ここで、自分に話しかけている・・。
黒塗りの細工箱を開けると模様の部分が淡くひかる。見たこともない見事な細工だ。『蒼』の手がけた箱に違いない。
2匹して箱をがさごそあさる姿の微笑ましい事、小動物が悪戯をしている様にしか見えない。
眷属さえ愛らしいとは夜空様らしい。
「これは姫さんので、これが宰相殿宛ての手紙。それと菓子は・・これか。」
中には数点の封書と小分けされた菓子がぎっしりと詰まっていた。
菓子には、それぞれ名前札が付いている。シキとヒガは自分の名前を目ざとく見つけ、内心喝采をあげた。
「姫さんとシーアの黒持ちには、直接渡したい。急な事ですまんが、先触れを頼む。後のう、図書館職員さんはともかく、侍従さんと言うのは誰じゃ?侍従など沢山おるだろうに・・うん?違うな。おしぼりの侍従さん・・だな。」
「わ、私にですか?」
思わずと言った感で、側に控えていた年嵩の侍従から声が出た。
なるほど、先日の会議で冷えたおしぼりを渡し助言していた侍従だ。
「夜空様からお手紙とお手製の菓子。」
感極まって涙目じゃぞ。
周りの侍従も一緒になって「良かったな」と頷いている。
・・坊よ愛されとるのう。
「・・高位精霊・・。」
タナカとスズキの来訪はシーア側にも動揺をもたらした。
あの可愛らしい『黒』の眷属が高位精霊とは・・。
精霊をただのお使いに使うとは、どれだけの力量を持っているのだ。
引きつるシーアの面々に同情しつつ『うん、夜空様だから』・・そう言ってやりたいシキとヒガだった。
案内兼護衛騎士としてタナカ達の後ろに控えてはいるが、高位精霊に護衛の必要があるのか甚だ疑問だ。
「貴殿がシーアのケネス殿か。坊から手紙と手製の菓子を預かってきた。納められよ。・・貴殿は先日坊に求婚したそうじゃな?」
机の上に2匹して立ち上がり、ケネスの顔をしげしげと眺めている。
相手は高位の存在だが、あまりの愛らしさについ笑みがこぼれた。
「精霊殿の御眼鏡に適いますかな?」
・・ふむ。魔力量も豊富、胆力も十分、平民の出らしいが奥底に王気も持っとる、側におっても嫌な気一つ感じらん。
こうも気が凪いでいるとは、ホンに魔導士か?神官の様じゃ。
見目も申し分ないし、体も相当鍛えとるときた。
こりゃ当たりだぞ坊、中々の逸材じゃ。
スズキもこくん頷く。
「おいゴトウ、サトウ。お前達はどうじゃ。」
タナカの掛け声に応じ、机の上に新たな精霊が現れた。赤い小鳥と、形容しずらい緑の丸い生き物。
いや可愛いのだが・・すんなり破られる城の結界の意味とは・・。
小動物がフリフリ尻尾を揺らしながら円陣組んで内緒話とか、俺ら萌え殺す気なの?皆身悶えしてるじゃん!
あ、あいつ崩れ落ちた。
「『翠』はともかくとして、わしらは認めてやっても良いぞ。坊は押しに弱いからのう。押して押して押しまくれ。」
は?何言ってんの、この精霊達。
眷属とは言え、本人抜きでそんな勝手な発言大丈夫なのか?
確実に『翠』の逆鱗にふれる案件だ。
『翠』対4精霊?
待て待て待て!国を焦土にする気か?
「これは・・思ってもみないお言葉を頂いた、心強い。このケネス、相手がたとえあの『翠』殿であっても不退転で望む所存です。」
対するケネスは本気で喜んでいる。
ケネスの喧嘩上等発言に『頼むから自国で(他国で)で事を起こさないでくれ』
クリアゼとシーアの騎士達の心が一つになった。
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