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伝説の狼でした

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『童の浄化は美しいわ。私の炎にふさわしいわね。』後藤さんご満悦だ。

あぁ良かった、あの人達助けられて。
後藤さんの炎で、穢れも一発で浄化できる事も判明したし、浄化行脚のスケジュール組もうかな。

自分に回復魔法をかけて、火傷を治癒する、こんな悲惨な姿で戻ったらロベリア気絶しちゃうからね。
もちろんキノコ狩りも決行したよ。
穴場の狩場も見つかって、僕はほくほく顔で帰路についた。
夕飯のシチューは、キノコのうま味たっぷりで、大好評だった。
うん今度は炊き込みご飯にしてみよう。

その日は大立ち回りしたから、流石に疲れちゃって、田中さん、鈴木さん、後藤さん、佐藤さんと一緒に、ソファーで寝落ちしちゃった。
4匹に埋もれて眠る僕をみて、ロベリアとラダさんが悶絶してたなんて知る由もなかった。


今日は古老の狼さんへの訪問日。

この間の「手首ちょんぱ事件」を踏まえて、今日は僕自身の色を変えて、堂々とお出かけする事にした。
瞳の色は翠、髪の色は銀、そうロベリアと同じ色だ。おぉ雰囲気が全然違う。
ふふっ、本当の親子になったみたい。

「お揃いにしてみた、どうかな?」

ひょこっと、ロベリアの前に飛び出してみれば、あれ?固まっちゃった。

「あっ、あっ、愛らしいです!とても似合ってますよ夜空!」

高い高いは止めてよ、ロベリア。
今日の衣装は淡い緑。
ロベリアと同じ色で出掛けたいって、ラダさんにお願いしてあったんだ。
今回は、随分シンプルな衣装だなぁと思っていたら、しっかりと透かし模様が入っていた。・・まさか織りから?
怖くて聞けない・・。


「黒狼は生まれておりません。それは確かです。」

古老はっきりと断言した。
・・あれ?生まれてないって・・。
あの僕、がっつり黒なんですけど?

「これは、狼に古くから伝わる『最後の黒狼』と『黒喰い』の伝説を模したタペストリーです。」

中央左右に白狼が二匹
上部には小さな黒狼。大きな手に迎えられて空に昇ってるみたい。
下部には、青い炎と雷に打たれ、鎖に縛られ引きずり落とされる、背中に沢山の蛇が生えた黒狼。

「この歪な黒狼が『黒喰い』です。元はこの白狼の兄にあたり、黒持ちの大変力のある狼だったそうです。ですが力に溺れ『禁忌』を犯し異形となり、手あたり次第黒持ちを食いつくしたと言われています。」

ふぅん兄弟がいたんだ。

「左右の白狼は番で、小さな黒狼がその子供です。我等はこの黒狼を『始祖様』と呼んでいます。白狼が黒喰いを封じる代償として、始祖様は神の身元は迎えられたとされています。
そしてこの始祖様は、封じられた黒喰いを滅する為、久遠の彼方から再びこの地に戻って来る、と言い伝えられております。始祖様がこの世界から御隠れになって以降、狼には『黒』が生れてくる事は無くなったのです。」

・・・ん?彼方から・・戻って来る?

あれ、僕ですか?
いやいや、そんなまさか。

『これ童じゃないの?』佐藤さん。

『そうじゃそうじゃ忘れとったわい。遠い昔におらんくなった黒の子狼が確かにおったのう。あれが坊だったか。いやはや盲点じゃったな。』

忘れてたって・・田中さん。
僕って・・伝説の狼なの?
・・じゃあ、あれが僕の両親で、黒喰いは叔父さん・・・。

え?僕ご先祖様?

「つい先日、伝説の『黒狼』に守っていただいたと言っている村の者がおりまして・・。魔法を使い『黒喰い』を滅し、青い炎を以て穢れを払い森へ帰ったと。村中『始祖様』がお戻りになったと大騒ぎです。その件で、騎士の方々に説明を求められ、このお話しをお伝えしたばかりなのですよ。」

うん、それは確かに僕だけど・・そんな騒ぎになってたんだ。
はぁー、しばらく獣化してのお出掛けは控えた方がいいみたいだね。

「ほう・・黒狼がですか・・。」

ロベリアの綺麗な微笑と共に、首の後ろにすぅっ・・と冷気が流れた。
ばれたー!絶対ばれたー!
皆も不自然に目をそらさないでー。
うぇぇん!冷や汗がとまらないよぉ。

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