人狼ちゃんのあべこべ転移奇譚

後ろ向きミーさん

文字の大きさ
上 下
24 / 47

おじゃまします

しおりを挟む
田中さんに手招きされるまま進めば、ふわりと膜を通る様な、不思議な抵抗感の後、苔むした大きな洞の中に立っていた。
ふかふかの苔に足を取られて歩き辛いけど、トランポリンみたいで楽しい。
これが祠の中か、機会があったらお山の祠にもお邪魔してみたい。

「適当な所にかけておくれ。客人を招くのも久しぶりじゃ。童が来るとわかっていたら菓子の一つでも用意しておいたんじゃがのう。」

カピバラさんが切なそうな表情が浮かべる。切なそうなカピバラ!なんてチャーミング!抱きしめたい!

「初めまして。『翠』の名を頂いておりますロベリアと息子の夜空と申します。お目にかかれ光栄です。」

あら、いつも不遜な態度のロベリアが自分から挨拶してる。
ここならベールをとっても大丈夫だよね。えーと、頭は下げないで・・ロベリアに倣い、胸に手を当てて挨拶をする。

「初めまして夜空です。」

うんうんと、挨拶が出来た事に保護者ズが温かい目で頷いている。
そこ!小さい子が良く出来ましたみたいに微笑ましく見ないで!
僕もうすぐ18だって忘れてないよね!

「これが古い馴染みの、水のサトナ=ウ=ウイデと、炎のゴート=ウ=カガリじゃ。サトゥとゴトゥと呼んで構わんぞい。」

「・・佐藤さんと後藤さん。」

どうして略しちゃうと、こうも日本人感漂う名前になるんだろう?
いや、僕としたら覚えやすくて大変助かるけど。

「むぅ、やっぱり坊の発音は何かちと違うのぉ。」田中さん苦笑い。

「ほう黒か行幸行幸。」

後藤さんが羽をパタパタ拍手する・・器用だ。
佐藤さんの頭の上から降りませんが、そこ定位置なんですか?
だめだ、このショット可愛すぎるよ。

僕は手土産の新作「抹茶カステラ」を
渡し、収納魔法で用意して来たお茶を
振舞った。
「おもたせとはすまんなぁ。」と、しきりに恐縮する佐藤さん達に癒された。
うん、ちゃぶ台も用意しておいて良かった。

「さて尋ねたいのはこの子ことじゃい。この子は翠の養子で、狼の子じゃ。そうじゃな17年程前に、この子の様な黒狼が村で生れたなぞ、お前達聞いた事はないかいの?」

田中さんもきゅもきゅ頬張りながら話のは、お行儀が悪いよ。ほらこぼしてる。

「いや聞いたことはないな。これだけ見事な黒なら、大騒ぎになったろうに。」

あっさり情報が潰えちゃった。
うん・・そんなに直ぐにわかるとは思ってなかったよ、うん大丈夫・・想定内。

「大昔は大勢おったがのう、粗方黒喰いに喰いつくされてしもうた。それからサッパリ見ない様になったな。この村に限らず、黒が生れたなんぞあれからとんと聞かんわ。」

「御伽話のあの『黒喰い』ですか?」

狼のおとぎ話にでてくる「悪戯ばかりする悪い子を連れていく」黒い怪物の事だって、なまはげみたいに『悪い子はいねぇかぁー』って脅すやつ、この世界にもあるんだね。
どの世界でも、子供の悪戯に手をやく親は共通かぁ。
そうだ、最近似た言葉聞いたばっかりだ。あれは『黒狂い』一文字違い。

「本当の『黒喰い』は、狼にとって禁忌なんじゃ。大昔の事で今ではすっかり形骸化してしもうて、おとぎ話にも出てきよる。古い狼でも覚えとるもんも、もうおらんかもしれんなぁ。」

「禁忌ですか?」

「そうじゃ『黒喰い』は狼喰い、同族喰いだからな。」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

【完結】魔王様、溺愛しすぎです!

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
「パパと結婚する!」  8万年近い長きにわたり、最強の名を冠する魔王。勇者を退け続ける彼の居城である『魔王城』の城門に、人族と思われる赤子が捨てられた。その子を拾った魔王は自ら育てると言い出し!? しかも溺愛しすぎて、周囲が大混乱!  拾われた子は幼女となり、やがて育て親を喜ばせる最強の一言を放った。魔王は素直にその言葉を受け止め、嫁にすると宣言する。  シリアスなようでコメディな軽いドタバタ喜劇(?)です。 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう 【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264) 挿絵★あり 【完結】2021/12/02 ※2022/08/16 第3回HJ小説大賞前期「小説家になろう」部門 一次審査通過 ※2021/12/16 第1回 一二三書房WEB小説大賞、一次審査通過 ※2021/12/03 「小説家になろう」ハイファンタジー日間94位 ※2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過作品 ※2020年8月「エブリスタ」ファンタジーカテゴリー1位(8/20〜24) ※2019年11月「ツギクル」第4回ツギクル大賞、最終選考作品 ※2019年10月「ノベルアップ+」第1回小説大賞、一次選考通過作品 ※2019年9月「マグネット」ヤンデレ特集掲載作品

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

捨てた騎士と拾った魔術師

吉野屋
恋愛
 貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

処理中です...