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夢見る狼
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与えられてばかりの私が、主に給餌が出来る日が訪れるとは。
まるで番になった様で夢見心地だ。
惜しむらくは、獲物がありあわせの粗野な男ばかりだった事だ。
腹をすかせた主の前には瑣事とは言え、次の機会は、厳選した獲物を献上したい。
狩った獲物の首は全て落とし主の魔法で水牢へ、古参への心ばかりの土産だ。
子ども達を放置してはさすがにまずいだろう。
館の惨状に狂乱をきたしトラウマを発症するのは必須、街中に飛ばす事に。
無事戻った子どもや親族達は神にでも感謝を捧げるのだろうな。
正に『知らぬが仏』と言うやつだ。
当の主は『この中にも将来の贄がいるかもしれないねぇ』と笑っておられた。
本気なのか冗談なのか判りづらいです主。
雑然と積まれた陰惨な首無し死体の山。
そこに続く引きずられた血の道標。
抗った様子が見られない館内。
まるで悪夢の様な有様に、主を攫った輩も暫くは鳴りを潜める事だろう。
精々暗がりを恐れて歩くがいいさ。
ふん、と鼻で笑い、愚か者共の末路に溜飲を下げ狩場を後にした。
私は女性の買い物を正直なめていた。
まさか、女性の生活に必要な物が、こんなにも多岐に渡るとは。
あまり多さに眩暈がする。
これを世の女性全てがこなしているなら称賛に値する。
私一人では思いつかない物も多く、女性経験のある主の助言を頼りに店を巡る。
どの選択でも『一臣に任せるよ』と笑う主。
任された私は、喜々として主の為の最良を選んでいく。買いすぎた事は認めよう。
本気で楽しかったのだ。
裸石で潤沢に資金を用意できたし、主の為の品だ、金に糸目を付けるつもりは無い。
が、金の髪のとびきり美しい娘に、異国の風貌の黒髪の従者、金払いのいい太客は少々目立ちすぎたか、気を付けなければ。
服飾店では、数々のドレスと共に、落ち着いた深い赤のケープを購入した。
主を『赤ずきんちゃん』にしてみたい。
そのまま狼に襲われてほしい。
あの話では赤ずきんを食べ損ねたか。
狼は最後に駆られて、めでたしめでたし。
むぅ、所詮叶わぬ夢か。
さすがに下着だけは、店の者と主にお願いした、私には・・・いろいろと無理だ。
店の者達の『察してますよ』の暖かい目が居たたまれなかった。
主がこの買い物中唯一自ら選んだのは、化粧品や香油の類。
どれもほとんど香りのしない物ばかり。
もっと華やかな香りをお勧めしたのだが、これで良いと譲らない。
「だって一臣は強い香りは苦手だろう?」
主が華がほころぶ様に楚々と微笑む。
体の芯が歓喜で震え、腸の奥底は業火の様にグラグラと熱を持った。
・・噛みたい。
まるで番になった様で夢見心地だ。
惜しむらくは、獲物がありあわせの粗野な男ばかりだった事だ。
腹をすかせた主の前には瑣事とは言え、次の機会は、厳選した獲物を献上したい。
狩った獲物の首は全て落とし主の魔法で水牢へ、古参への心ばかりの土産だ。
子ども達を放置してはさすがにまずいだろう。
館の惨状に狂乱をきたしトラウマを発症するのは必須、街中に飛ばす事に。
無事戻った子どもや親族達は神にでも感謝を捧げるのだろうな。
正に『知らぬが仏』と言うやつだ。
当の主は『この中にも将来の贄がいるかもしれないねぇ』と笑っておられた。
本気なのか冗談なのか判りづらいです主。
雑然と積まれた陰惨な首無し死体の山。
そこに続く引きずられた血の道標。
抗った様子が見られない館内。
まるで悪夢の様な有様に、主を攫った輩も暫くは鳴りを潜める事だろう。
精々暗がりを恐れて歩くがいいさ。
ふん、と鼻で笑い、愚か者共の末路に溜飲を下げ狩場を後にした。
私は女性の買い物を正直なめていた。
まさか、女性の生活に必要な物が、こんなにも多岐に渡るとは。
あまり多さに眩暈がする。
これを世の女性全てがこなしているなら称賛に値する。
私一人では思いつかない物も多く、女性経験のある主の助言を頼りに店を巡る。
どの選択でも『一臣に任せるよ』と笑う主。
任された私は、喜々として主の為の最良を選んでいく。買いすぎた事は認めよう。
本気で楽しかったのだ。
裸石で潤沢に資金を用意できたし、主の為の品だ、金に糸目を付けるつもりは無い。
が、金の髪のとびきり美しい娘に、異国の風貌の黒髪の従者、金払いのいい太客は少々目立ちすぎたか、気を付けなければ。
服飾店では、数々のドレスと共に、落ち着いた深い赤のケープを購入した。
主を『赤ずきんちゃん』にしてみたい。
そのまま狼に襲われてほしい。
あの話では赤ずきんを食べ損ねたか。
狼は最後に駆られて、めでたしめでたし。
むぅ、所詮叶わぬ夢か。
さすがに下着だけは、店の者と主にお願いした、私には・・・いろいろと無理だ。
店の者達の『察してますよ』の暖かい目が居たたまれなかった。
主がこの買い物中唯一自ら選んだのは、化粧品や香油の類。
どれもほとんど香りのしない物ばかり。
もっと華やかな香りをお勧めしたのだが、これで良いと譲らない。
「だって一臣は強い香りは苦手だろう?」
主が華がほころぶ様に楚々と微笑む。
体の芯が歓喜で震え、腸の奥底は業火の様にグラグラと熱を持った。
・・噛みたい。
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