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父
しおりを挟む青年は呆れた顔をした。
ちなみにマールも湯浴みを手伝った時に、女の子だと気付いている。
「そもそも気付くも何もそんな余裕などなかった……いや、赤ん坊の存在は知っていても間近で見る機会などロクに今まで……いや待てよ。かなり昔にみた事があるような? ……あぁそれに魔族の女はみな赤い髪に翠の瞳であぁでも確かに人間の女といえば」
しどろもどろになる魔王の横で、黙って顔を伏せていたハクイがいきなり針と糸とを取り出す。
その妙な気迫にぎょっとしたのも束の間、針と糸が浮いて見え、物凄い勢いで赤ん坊の服に何かを縫いだす。
着たままの服に何を!と言う暇もなく、ハクイは手を止め糸を切った。
「く、わたくしとした事が、女の子をいつまでもほぼほぼ素っ裸のままに、なんと可哀想な事を……今はこの程度の事しか出来ませんが、今に、今に可愛さプラスで作ってみせましょう。えぇみせますとも」
「い、いや、あまり気合いをいれられても、多分直ぐに汚れてダメになるだろうしってあ、可愛い」
赤ん坊の服の端に、大きめの花と小さめの花の刺繍がぐるっとされていた。
更に凄い事に、赤ん坊になんの外傷もみられない。
いやあっては困るが。
「ところで魔王さまミルクは出来ました?」
「んん!?」
言われて思い出した魔王は手元を見る。
見事にお湯が哺乳瓶ではなく、魔王の手元に注がれていた。
「あつ!」
慌てて哺乳瓶を冷やす為にあった氷水を入れたボールに手をつっこむ。
「魔王さまオレやりますよ」
機転をきかせ、マールは魔王のかわりに粉ミルクの入った哺乳瓶に少しお湯をそそぐと、中に入った粉ミルクを溶かすため瓶をくるくると軽く振り、更にお湯をそそぐ。
魔王が氷水から手を引っ込めると、マールは哺乳瓶をそこに浸した。
「これは何をしている?」
「人肌まで冷ましているんです。でないと赤ちゃんが飲むときに焼けどしちゃうので」
「あ、あぁそうかそうか。そうだな、うん」
じぃっと見て、魔王の目にマールの手が目にはいる。
さっきの焦げた見た目と違い、今は綺麗に戻っていた。
「その手、ハクイに治して貰ったか?あれは《白の魔族》だからな、あの程度の外傷なら直ぐだっただろう」
するとマールは嬉しそうに「はい!」と答える。
「ハクイ様は凄いです! オレ、ハクイ様の事尊敬してます!」
「そうか、お前はハクイの事が大好きなのだな」
「はい! あ、もういいかな?」
素直な返答に魔王は「そうか、そうか」と傍にいたハクイをみた。
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