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第七章 再出発
妊娠…そして…
しおりを挟む話は舞華の七回忌法要の日までもどる…
恋の家に美紀が訪ねてきた。
「いらっしゃい!美紀!」
「恋…」
「どうしたの?全然元気ないじゃん!」
「うん…」
「もしかして…龍兄とケンカした?それなら仲裁に入るよ!もち!美紀の味方だよ」
「ううん…違うの…」
「えぇ…わかんないよ…話してみて?」
「……ないの……」
「ん?ないって…」
「…生理が…しばらく…来ないの…」
「そ…それって…」
「検査薬でね…調べたの…」
「そしたら…」
「陽性だった…」
「えぇ!美紀ぃー!おめでとう!」
「……」
「え?なんか…違う?」
「ううん!私は嬉しいんだよ!龍ちんの子供…」
「じゃあ…」
「龍ちんはどう思うかな…迷惑がらないかな…」
恋はつい先程、舞華のお墓の前で家族全員の今後を語ったばかりで、その時龍弥の想いも聞いていた。だがこれは美紀に言うべきことではないので、胸にしまった。
「美紀…美紀は龍兄の事好き?」
「もち!大好き!」
「家族になれる?美紀がもし、龍兄と結婚したらね、わたしたち家族の一員になるの。それはどぉ?」
「恋。あんたも知っての通り、私は母親はいるけど、あまりいい関係じゃないし、あんた達家族を見てて、ずっと羨ましかった」
「そっか…そっか!美紀!龍兄の事、信じてあげて?龍兄なら必ず全て受け入れてくれるよ!」
「でも…なんて言えばいいか…」
「…少し…待ってみたら?」
「待つ?」
「そっ!待つの。龍兄を信じて」
「うん…恋、このことは…」
「言わないよ!当然でしょ?」
「ありがとう…」
「それにしても…美紀がママかぁ。そしてあの龍兄がパパになるんだ」
「私…いいママに…なれるかな?」
「当たり前でしょ?わたし達は、母親の悪いところばかりを目の当たりにしてきたの。いわゆる反面教師だね。だから、わたし達はいい母親になれる!っていうか、美紀ひとりじゃないからね」
「え?…」
「わたし達がついてるから、協力して育てていこう!」
「れ…恋…」
美紀は恋に飛びついて、泣いた…
「こらこら。お腹の赤ちゃん、びっくりしちゃうしょ」
「恋…私、幸せ者すぎるよー」
「自分で言わないの!ふふふ」
恋は美紀の頭を撫でた。
「さぁ!美紀、今日はふたり…いや3人でお祝いしよ?」
「うん…」
そして…数日後…
「美紀…今日は大事な話があるんだ」
龍弥が美紀にそう伝えると…美紀も
「私も…龍ちんに話があるの…」
「え!うん…わかった…。今日、仕事終わったら苑香さんのお店で待ち合わせしよう」
「わかった…」
龍弥は美紀の(私も話がある…)という言葉に一抹の不安を覚えた…
(美紀…まさか…別れたいっていうんじゃないだろうな)
龍弥は不安になって仕事が手につかなかった。
(あーダメだ!ぜんっぜん頭が回らない)
龍弥は恋に電話した。
☎︎「恋…今大丈夫か?」
☎︎「うん。どったの?」
☎︎「あのさ…美紀から…お前に何か相談されなかったか?」
恋はドキっとした!
☎︎「え!何が?どうして?」
☎︎「やっぱあったんだな…なぁ、なんの相談だ?」
☎︎「そんな事、言えるわけないでしょ!」
☎︎「兄貴にもか?」
☎︎「龍兄…その言い方はずるいよ…言えない!これは家族でも、友人の相談事は言えない!」
☎︎「……」
☎︎「もしもし?龍兄?」
☎︎「俺よ…今日…プロポーズしようと思ったんだ」
☎︎「えぇ!そうなの!」
☎︎「そしたら、私も話があるって…暗い顔で言うんだ」
☎︎「…うん」
☎︎「別れたいのか?あいつ…」
☎︎「はぁ?…いや…その…」
☎︎「やっぱそうか…」
☎︎「ちょちょっ!ちょっと待ったー!龍兄!」
☎︎「あぁ?なんだよ」
☎︎「内容は言えない…だけどそんなんじゃないの。だから、今日は龍兄の想いをぶつけてみてよ!ね?」
☎︎「大丈夫か?」
☎︎「わたしが保証する!絶対大丈夫!」
☎︎「わかった…少し気持ちが晴れた!今日、アタックするから。あっ!まぁやんにはまだ言うなよ?」
☎︎「わかってる!結果教えてね」
☎︎「おう!じゃあな」
龍弥は電話を切った…
(別れたいじゃない…じゃあなんだろ?)
龍弥は仕事に戻った。
一方、恋は…
「ふぅ…龍兄ってあんなにナイーブだっけ?焦った龍兄は面白かったな。びっくりするだろうな…」
その夜…
苑香のレストランに美紀が先に到着した。
「美紀ちゃん!お久しぶり!」
「こんばんは。苑香さん」
「ご予約承っております。こちらへどうぞ」
予約をしていた席は、普段の席からちょっと離れた『ラウンジ席』と言って、チャージ料金を支払って入れる特別な席だった。
「え…こんなところ…?」
「えぇ。龍弥さんからこの席でって」
「あ…そうですか…」
美紀は少し照れた。
「はい、美紀さん。こちらウェルカムドリンク。今日は梅酒です」
「ありがとう。…美味しい…」
「お飲み物先に頼む?」
「いえ、龍ちんが来てからでお願いします」
「わかりました」
そして数分後…
龍弥がお店に到着した。
「ごめんな!美紀!待たせたかな?」
「ううん。大丈夫」
龍弥は苑香に注文を頼んだ。
「美紀はビールか?」
「あっ!今日はソフトドリンクで…クランベリージュースでお願いします」
「珍しいな。酒飲まないなんて」
「うん…」
沈黙が流れた…
「あっ…えっと…今日は天気よくて良かったな」
(なんちゅう話題だしてるんだよ。俺…)
「え?うん…そだね」
また沈黙が流れた…
遠くから苑香が心配そうに見ていた。
「んもう。龍弥さんったら。だらしないなー」
苑香が料理を出しに来て、
「今日ね、すっごく新鮮な鯛が入荷したから、カルパッチョにしてみたの」
「わぁ。美味しそう…」
「最近ね、雷斗もあまり店に来れなくてね。龍弥さんたちに会いたがってたわよ」
「ら…雷斗が?へ…へぇ~」
龍弥はガチガチに緊張していた。
(こりゃダメだ…仕方がない…)
料理をメインまで出して、少し落ち着いた頃、急に店内の照明が薄暗くなった。
「え?なに?」
美紀が驚いた。
龍弥は苑香に目で訴えた。
(早いよ!苑香さん!)
苑香は手で合図をしながら
(言っちゃえ!言っちゃえ!)
っとジェスチャーした。
「ごほん!美紀」
「え?」
龍弥はポケットから指輪のケースを取り出した。
「え!?え!?」
「美紀、俺と出会ったのって変な出会い方だったけどな。俺はお前を真剣に愛してる。俺にはお前しかいねぇんだ」
「……」
「俺と…結婚してくれ!」
「……龍ちん…」
すると美紀が龍弥の手を取って、自分のお腹にあてた。
「龍ちん…私と…もうひとり…この子…守ってくれる?」
「へ?この子?」
「うん…龍ちんの子…このお腹に…いるの…」
「マジ?」
「マジ!」
「マジのマジ?」
「マジのマジ!」
「うおぉぉぉ…」
龍弥は勢い良く立ちあがろうとした時、テーブルの照明に勢いよく頭をぶつけた。
「ぐわ!いっつー」
「ちょっと!龍ちん!大丈夫」
「夢じゃ…ねぇ…」
「え?」
「夢じゃねぇんだ!美紀!やったよ!」
「慌てすぎ!」
すると苑香をはじめ、お店のスタッフが拍手をしながらケーキを持ってきた。
「おめでとう!龍弥さん、美紀さん!」
『おめでとうございます』
一斉にクラッカーがパパンっとなった。
他の席の客からも拍手が沸き起こった。
「ありがとうございます!」
美紀がみんなに頭を下げた。
「今何ヶ月?」
苑香が質問した。
「ちょうど4ヶ月目です」
「つわりとか大丈夫?今日の料理問題なかった?」
「はい!美味しく頂きました」
「よかった…」
「美紀!」
「なぁに?龍ちん」
「俺らはさ、親に愛されなかったもの同士じゃんか?だから…俺らは全力でこの子を…またこれから生まれてくるかもしれない子も…愛情注いで、二人で歩いていこうな」
「龍ちん…やっぱり大好き」
美紀は龍弥に抱きついた。
店内からは拍手が沸き起こった。
すると苑香が
「皆様、このふたりは私の知り合いなんです。一緒にお祝いして頂き、ありがとうございます。私から皆様へシャンパンをプレゼントさせて頂きます!」
またまた店内が盛り上がった。
「苑香さん。ありがとうございます」
「良かったね!龍弥さん!」
龍弥のプロポーズ大作戦は大成功に終わった。
数日後…
龍弥と美紀はまぁやん宅を訪れた。
「どうぞ!開いてるぞ」
龍弥がドアを開けると、猫を抱っこしたまぁやんがいた。
「なした?その猫!」
「可愛いだろ?俺の娘だ!みりんって名前だ」
「みりん…調味料かよ!」
「ウッセーな!響きがいいだろ」
美紀がみりんを見て
「可愛いぃぃ!ねぇ?抱っこしていい?」
「おう!いいぞ」
美紀はみりんを抱っこして撫でた。
「おっ!美紀は猫の扱いうまいな」
「昔飼ってたことあってね…」
「そっか!まぁ座れよ」
まぁやん宅は、引っ越しの準備が進められていた。
「おまえ…引っ越すのか?」
龍弥が尋ねた。
「あぁ!マンション買ったからな!そこに引っ越す」
「いつ?」
「来週くらいかな」
「マジか…今度招待しろよ」
「もち!んで?今日はふたりして何の用だ?」
龍弥と美紀がもじもじしながら
「実は俺ら…結婚することになった」
「マジかぁ~!イヤーおめでとう!」
「それとな…美紀…子供いるんだ。お腹に!」
「うっそー!マジ?」
「マジです…」
「そっかぁ~じゃあ俺も叔父さんになるな」
「叔父さん?」
「龍の子供だろ?龍は俺の兄弟みたいなもんだし」
「確かにな…」
「男の子?女の子?」
「それはまだこれからだ」
「そっかぁ~!家族が増えるかぁ」
美紀がもじもじしながら
「ねぇ…これで私も…みんなの家族になれるのかな?」
「って言うかさぁ、もう既に家族だよ」
まぁやんがそう言うと、美紀は泣き出した。
「う…嬉しい…」
「おいおい。泣くなよ…龍!慰めてやれ」
「美紀ぃ~みーきちゃーん」
「もう!何かそれ…やだ…」
「わはははは!龍、嫌われたな」
「なんだよ…はははは!」
まぁやんと龍弥の周りに、徐々に家族が増えてきた。
この事に幸せを噛み締めていた。
恋の家に美紀が訪ねてきた。
「いらっしゃい!美紀!」
「恋…」
「どうしたの?全然元気ないじゃん!」
「うん…」
「もしかして…龍兄とケンカした?それなら仲裁に入るよ!もち!美紀の味方だよ」
「ううん…違うの…」
「えぇ…わかんないよ…話してみて?」
「……ないの……」
「ん?ないって…」
「…生理が…しばらく…来ないの…」
「そ…それって…」
「検査薬でね…調べたの…」
「そしたら…」
「陽性だった…」
「えぇ!美紀ぃー!おめでとう!」
「……」
「え?なんか…違う?」
「ううん!私は嬉しいんだよ!龍ちんの子供…」
「じゃあ…」
「龍ちんはどう思うかな…迷惑がらないかな…」
恋はつい先程、舞華のお墓の前で家族全員の今後を語ったばかりで、その時龍弥の想いも聞いていた。だがこれは美紀に言うべきことではないので、胸にしまった。
「美紀…美紀は龍兄の事好き?」
「もち!大好き!」
「家族になれる?美紀がもし、龍兄と結婚したらね、わたしたち家族の一員になるの。それはどぉ?」
「恋。あんたも知っての通り、私は母親はいるけど、あまりいい関係じゃないし、あんた達家族を見てて、ずっと羨ましかった」
「そっか…そっか!美紀!龍兄の事、信じてあげて?龍兄なら必ず全て受け入れてくれるよ!」
「でも…なんて言えばいいか…」
「…少し…待ってみたら?」
「待つ?」
「そっ!待つの。龍兄を信じて」
「うん…恋、このことは…」
「言わないよ!当然でしょ?」
「ありがとう…」
「それにしても…美紀がママかぁ。そしてあの龍兄がパパになるんだ」
「私…いいママに…なれるかな?」
「当たり前でしょ?わたし達は、母親の悪いところばかりを目の当たりにしてきたの。いわゆる反面教師だね。だから、わたし達はいい母親になれる!っていうか、美紀ひとりじゃないからね」
「え?…」
「わたし達がついてるから、協力して育てていこう!」
「れ…恋…」
美紀は恋に飛びついて、泣いた…
「こらこら。お腹の赤ちゃん、びっくりしちゃうしょ」
「恋…私、幸せ者すぎるよー」
「自分で言わないの!ふふふ」
恋は美紀の頭を撫でた。
「さぁ!美紀、今日はふたり…いや3人でお祝いしよ?」
「うん…」
そして…数日後…
「美紀…今日は大事な話があるんだ」
龍弥が美紀にそう伝えると…美紀も
「私も…龍ちんに話があるの…」
「え!うん…わかった…。今日、仕事終わったら苑香さんのお店で待ち合わせしよう」
「わかった…」
龍弥は美紀の(私も話がある…)という言葉に一抹の不安を覚えた…
(美紀…まさか…別れたいっていうんじゃないだろうな)
龍弥は不安になって仕事が手につかなかった。
(あーダメだ!ぜんっぜん頭が回らない)
龍弥は恋に電話した。
☎︎「恋…今大丈夫か?」
☎︎「うん。どったの?」
☎︎「あのさ…美紀から…お前に何か相談されなかったか?」
恋はドキっとした!
☎︎「え!何が?どうして?」
☎︎「やっぱあったんだな…なぁ、なんの相談だ?」
☎︎「そんな事、言えるわけないでしょ!」
☎︎「兄貴にもか?」
☎︎「龍兄…その言い方はずるいよ…言えない!これは家族でも、友人の相談事は言えない!」
☎︎「……」
☎︎「もしもし?龍兄?」
☎︎「俺よ…今日…プロポーズしようと思ったんだ」
☎︎「えぇ!そうなの!」
☎︎「そしたら、私も話があるって…暗い顔で言うんだ」
☎︎「…うん」
☎︎「別れたいのか?あいつ…」
☎︎「はぁ?…いや…その…」
☎︎「やっぱそうか…」
☎︎「ちょちょっ!ちょっと待ったー!龍兄!」
☎︎「あぁ?なんだよ」
☎︎「内容は言えない…だけどそんなんじゃないの。だから、今日は龍兄の想いをぶつけてみてよ!ね?」
☎︎「大丈夫か?」
☎︎「わたしが保証する!絶対大丈夫!」
☎︎「わかった…少し気持ちが晴れた!今日、アタックするから。あっ!まぁやんにはまだ言うなよ?」
☎︎「わかってる!結果教えてね」
☎︎「おう!じゃあな」
龍弥は電話を切った…
(別れたいじゃない…じゃあなんだろ?)
龍弥は仕事に戻った。
一方、恋は…
「ふぅ…龍兄ってあんなにナイーブだっけ?焦った龍兄は面白かったな。びっくりするだろうな…」
その夜…
苑香のレストランに美紀が先に到着した。
「美紀ちゃん!お久しぶり!」
「こんばんは。苑香さん」
「ご予約承っております。こちらへどうぞ」
予約をしていた席は、普段の席からちょっと離れた『ラウンジ席』と言って、チャージ料金を支払って入れる特別な席だった。
「え…こんなところ…?」
「えぇ。龍弥さんからこの席でって」
「あ…そうですか…」
美紀は少し照れた。
「はい、美紀さん。こちらウェルカムドリンク。今日は梅酒です」
「ありがとう。…美味しい…」
「お飲み物先に頼む?」
「いえ、龍ちんが来てからでお願いします」
「わかりました」
そして数分後…
龍弥がお店に到着した。
「ごめんな!美紀!待たせたかな?」
「ううん。大丈夫」
龍弥は苑香に注文を頼んだ。
「美紀はビールか?」
「あっ!今日はソフトドリンクで…クランベリージュースでお願いします」
「珍しいな。酒飲まないなんて」
「うん…」
沈黙が流れた…
「あっ…えっと…今日は天気よくて良かったな」
(なんちゅう話題だしてるんだよ。俺…)
「え?うん…そだね」
また沈黙が流れた…
遠くから苑香が心配そうに見ていた。
「んもう。龍弥さんったら。だらしないなー」
苑香が料理を出しに来て、
「今日ね、すっごく新鮮な鯛が入荷したから、カルパッチョにしてみたの」
「わぁ。美味しそう…」
「最近ね、雷斗もあまり店に来れなくてね。龍弥さんたちに会いたがってたわよ」
「ら…雷斗が?へ…へぇ~」
龍弥はガチガチに緊張していた。
(こりゃダメだ…仕方がない…)
料理をメインまで出して、少し落ち着いた頃、急に店内の照明が薄暗くなった。
「え?なに?」
美紀が驚いた。
龍弥は苑香に目で訴えた。
(早いよ!苑香さん!)
苑香は手で合図をしながら
(言っちゃえ!言っちゃえ!)
っとジェスチャーした。
「ごほん!美紀」
「え?」
龍弥はポケットから指輪のケースを取り出した。
「え!?え!?」
「美紀、俺と出会ったのって変な出会い方だったけどな。俺はお前を真剣に愛してる。俺にはお前しかいねぇんだ」
「……」
「俺と…結婚してくれ!」
「……龍ちん…」
すると美紀が龍弥の手を取って、自分のお腹にあてた。
「龍ちん…私と…もうひとり…この子…守ってくれる?」
「へ?この子?」
「うん…龍ちんの子…このお腹に…いるの…」
「マジ?」
「マジ!」
「マジのマジ?」
「マジのマジ!」
「うおぉぉぉ…」
龍弥は勢い良く立ちあがろうとした時、テーブルの照明に勢いよく頭をぶつけた。
「ぐわ!いっつー」
「ちょっと!龍ちん!大丈夫」
「夢じゃ…ねぇ…」
「え?」
「夢じゃねぇんだ!美紀!やったよ!」
「慌てすぎ!」
すると苑香をはじめ、お店のスタッフが拍手をしながらケーキを持ってきた。
「おめでとう!龍弥さん、美紀さん!」
『おめでとうございます』
一斉にクラッカーがパパンっとなった。
他の席の客からも拍手が沸き起こった。
「ありがとうございます!」
美紀がみんなに頭を下げた。
「今何ヶ月?」
苑香が質問した。
「ちょうど4ヶ月目です」
「つわりとか大丈夫?今日の料理問題なかった?」
「はい!美味しく頂きました」
「よかった…」
「美紀!」
「なぁに?龍ちん」
「俺らはさ、親に愛されなかったもの同士じゃんか?だから…俺らは全力でこの子を…またこれから生まれてくるかもしれない子も…愛情注いで、二人で歩いていこうな」
「龍ちん…やっぱり大好き」
美紀は龍弥に抱きついた。
店内からは拍手が沸き起こった。
すると苑香が
「皆様、このふたりは私の知り合いなんです。一緒にお祝いして頂き、ありがとうございます。私から皆様へシャンパンをプレゼントさせて頂きます!」
またまた店内が盛り上がった。
「苑香さん。ありがとうございます」
「良かったね!龍弥さん!」
龍弥のプロポーズ大作戦は大成功に終わった。
数日後…
龍弥と美紀はまぁやん宅を訪れた。
「どうぞ!開いてるぞ」
龍弥がドアを開けると、猫を抱っこしたまぁやんがいた。
「なした?その猫!」
「可愛いだろ?俺の娘だ!みりんって名前だ」
「みりん…調味料かよ!」
「ウッセーな!響きがいいだろ」
美紀がみりんを見て
「可愛いぃぃ!ねぇ?抱っこしていい?」
「おう!いいぞ」
美紀はみりんを抱っこして撫でた。
「おっ!美紀は猫の扱いうまいな」
「昔飼ってたことあってね…」
「そっか!まぁ座れよ」
まぁやん宅は、引っ越しの準備が進められていた。
「おまえ…引っ越すのか?」
龍弥が尋ねた。
「あぁ!マンション買ったからな!そこに引っ越す」
「いつ?」
「来週くらいかな」
「マジか…今度招待しろよ」
「もち!んで?今日はふたりして何の用だ?」
龍弥と美紀がもじもじしながら
「実は俺ら…結婚することになった」
「マジかぁ~!イヤーおめでとう!」
「それとな…美紀…子供いるんだ。お腹に!」
「うっそー!マジ?」
「マジです…」
「そっかぁ~じゃあ俺も叔父さんになるな」
「叔父さん?」
「龍の子供だろ?龍は俺の兄弟みたいなもんだし」
「確かにな…」
「男の子?女の子?」
「それはまだこれからだ」
「そっかぁ~!家族が増えるかぁ」
美紀がもじもじしながら
「ねぇ…これで私も…みんなの家族になれるのかな?」
「って言うかさぁ、もう既に家族だよ」
まぁやんがそう言うと、美紀は泣き出した。
「う…嬉しい…」
「おいおい。泣くなよ…龍!慰めてやれ」
「美紀ぃ~みーきちゃーん」
「もう!何かそれ…やだ…」
「わはははは!龍、嫌われたな」
「なんだよ…はははは!」
まぁやんと龍弥の周りに、徐々に家族が増えてきた。
この事に幸せを噛み締めていた。
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