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ということで、なかったことにしようか【花子先生】
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「花子先生、おはよう」
……うわ、イケメンだ。
覚悟を決めて振り向いたら、キラキラのイケメン尚太くんがいた。
眼鏡をかけなくても引き締まった毛穴まで見える位置にある顔。つまり……私の毛穴も見られてる。
……死んだ。いや、覚悟を決めたんだけど、あまりにも尚太くんのお肌が綺麗で、愕然とした。形の良い輪郭に彫りの深い顔立ち。鼻筋も通ってて唇はやや薄目だけど口角がくいっと上がって愛嬌がある。睫毛もバサバサ、くっきり二重の甘い垂れ目。太い眉毛もちょっと垂れてて、ゴールデンレトリバーっぽい。つまりスッピンでも可愛い。
一方私はたぶん、目が腫れぼったいし顔がちょっと突っ張ってる。おそらく化粧は剥げて、眉毛も行方不明……どんな恐ろしい顔になってるか、想像もつかない。
ごめん、尚太くん。大事な童貞を奪ったのがこんなんで。トラウマにならなきゃいいけど。
「朝ご飯食べませんか? あ、お風呂も準備しておきます」
キラキラの笑顔で新妻みたいなことを言う尚太くん。あれ? 私の顔、見えてないのかな?
逆光だから? いや、開いた襖からの入ってくる光が強いからそんなはずない。
呆然と眺める私と見つめあっていた尚太くんの頬が、だんだん赤くなってくる。そのままじーっと見ていると、尚太くんがするっと視線を落とした。
「寝起きの花子先生……可愛い」
「……は?」
幻聴……? え、なに。何いってるの尚太くん、アタマ大丈夫?
「俺、ご飯温めてきます」
身体を起こした尚太くんの動きで、中に入りっぱなしだった逸物がズルっと外に出た。手早くゴムを外してくるっとゴムの口を縛りティッシュで拭く一連の動作がやたら手慣れてる。
本当に、童貞だったの? 慣れすぎじゃない?
「あ、花子先生の旅行鞄は、そこに置いておきました。あと、とりあえずタオル持ってきますね」
ささっと下着とズボンを穿いた尚太くんが、襖の向こうに消えていく。
ものの1分もしないうちに戻って、湯気の上る温かいタオルを2枚手渡される。
「これで顔と身体を拭いてください」
お礼を言って受け取ると「俺が拭きたいけど、昨日の片付けもあるから、ごめんなさい」と言って尚太くんは、また居間に戻った。
言われた通り身体をタオルでささっと拭いて、さっぱりしてからショーツとジーンズを穿き居間に行くと、美味しそうな匂いが漂っていた。
「海苔のお味噌汁作りました」
エプロンを着けてキッチンに立った尚太くんの姿は、イケメン俳優がしている料理番組みたいだった。
カウンターテーブルの上にトンと置かれたトレイ。出されたメニューは、昨夜の残り物のお新香盛合わせ。赤貝のサラダ。キャベツの千切りとベーコンエッグ。海苔の味噌汁と炊きたてご飯。
並んで席に座って「いただきます」と食べ始める。
「あ、お味噌汁……美味しい」
「良かった。義母さんに教えてもらったんだ。あ、はい。お醤油」
「ありがとう」
久しぶりにちゃんとした朝ご飯だ。やっぱり赤味噌のお味噌汁はいいなー。炊きたてご飯にお味噌汁って最高の贅沢。
「はい、先生。お茶どうぞ。熱いので気を付けてください」
「はい、ありがとう」
はぁ……食後の煎茶。落ち着く。
って、おい。なに和んでるんだ私は。なに食後のお茶飲んでホッコリしてるんだよ。
「お風呂の準備できましたよ」
「ありがとう。入ってくるね」
うわ、至れり尽くせり。こんなに良く動く男の子って初めて見た。前の彼氏はご飯も作れない、掃除もしない、お風呂なんか、もちろん沸かしてくれない。一度座ったら動かない人だったから、フットワークの軽い尚太くんを見てると、どう対応していいのかわからなくなる。
浴室はヒーターで温まっていて、新品のボディタオルも用意されていた。
あ、このボディタオル……家で使ってるのと同じメーカーだ。良かった。硬いナイロンタオルだと肌が荒れちゃうから、綿のタオルじゃないと嫌なんだよね。シャンプーも普段使っているのと同じだ。やっぱり親子で好みが似るって本当なんだ。
いつもより念入りに体を洗ってから、湯船に浸かると、強張った体も心もぼぐれていく。
「はー……気持ちいい」
日本人に生まれてよかった。極楽、極楽。尚太くんに感謝!
……って、あれ。なんかこれ、このまま付き合うパターンじゃないの?
まさか、そんな……。いやいや、尚太くん、君あまりにもチョロ過ぎない? そんな可愛い顔して、その場の勢いでセックスした女といちいち付き合ってたら、いつか騙されて痛い目見るよ?
それに、私は明日の新幹線で家に帰るから、申し訳ないけどこの関係は、今この時だけってことで。正直、尚太くんは可愛いし、イケメンだし、気が利くし……まあ、はっきり言ってすごく好みなんだけど。
ただ7歳年下……うーん。私が30歳の時、尚太くんが23歳……あ、ありえない。
私は30歳までに結婚したいなーとか、思ってるんだよね。子供も早めに欲しい。今度こそ、もうちょっと結婚を意識できる人と付き合いたい。
「ということで……尚太くん。なかったことにしようか」
「……え?」
→→→次回、最終回!! 花子先生視点でしめくくり!
……うわ、イケメンだ。
覚悟を決めて振り向いたら、キラキラのイケメン尚太くんがいた。
眼鏡をかけなくても引き締まった毛穴まで見える位置にある顔。つまり……私の毛穴も見られてる。
……死んだ。いや、覚悟を決めたんだけど、あまりにも尚太くんのお肌が綺麗で、愕然とした。形の良い輪郭に彫りの深い顔立ち。鼻筋も通ってて唇はやや薄目だけど口角がくいっと上がって愛嬌がある。睫毛もバサバサ、くっきり二重の甘い垂れ目。太い眉毛もちょっと垂れてて、ゴールデンレトリバーっぽい。つまりスッピンでも可愛い。
一方私はたぶん、目が腫れぼったいし顔がちょっと突っ張ってる。おそらく化粧は剥げて、眉毛も行方不明……どんな恐ろしい顔になってるか、想像もつかない。
ごめん、尚太くん。大事な童貞を奪ったのがこんなんで。トラウマにならなきゃいいけど。
「朝ご飯食べませんか? あ、お風呂も準備しておきます」
キラキラの笑顔で新妻みたいなことを言う尚太くん。あれ? 私の顔、見えてないのかな?
逆光だから? いや、開いた襖からの入ってくる光が強いからそんなはずない。
呆然と眺める私と見つめあっていた尚太くんの頬が、だんだん赤くなってくる。そのままじーっと見ていると、尚太くんがするっと視線を落とした。
「寝起きの花子先生……可愛い」
「……は?」
幻聴……? え、なに。何いってるの尚太くん、アタマ大丈夫?
「俺、ご飯温めてきます」
身体を起こした尚太くんの動きで、中に入りっぱなしだった逸物がズルっと外に出た。手早くゴムを外してくるっとゴムの口を縛りティッシュで拭く一連の動作がやたら手慣れてる。
本当に、童貞だったの? 慣れすぎじゃない?
「あ、花子先生の旅行鞄は、そこに置いておきました。あと、とりあえずタオル持ってきますね」
ささっと下着とズボンを穿いた尚太くんが、襖の向こうに消えていく。
ものの1分もしないうちに戻って、湯気の上る温かいタオルを2枚手渡される。
「これで顔と身体を拭いてください」
お礼を言って受け取ると「俺が拭きたいけど、昨日の片付けもあるから、ごめんなさい」と言って尚太くんは、また居間に戻った。
言われた通り身体をタオルでささっと拭いて、さっぱりしてからショーツとジーンズを穿き居間に行くと、美味しそうな匂いが漂っていた。
「海苔のお味噌汁作りました」
エプロンを着けてキッチンに立った尚太くんの姿は、イケメン俳優がしている料理番組みたいだった。
カウンターテーブルの上にトンと置かれたトレイ。出されたメニューは、昨夜の残り物のお新香盛合わせ。赤貝のサラダ。キャベツの千切りとベーコンエッグ。海苔の味噌汁と炊きたてご飯。
並んで席に座って「いただきます」と食べ始める。
「あ、お味噌汁……美味しい」
「良かった。義母さんに教えてもらったんだ。あ、はい。お醤油」
「ありがとう」
久しぶりにちゃんとした朝ご飯だ。やっぱり赤味噌のお味噌汁はいいなー。炊きたてご飯にお味噌汁って最高の贅沢。
「はい、先生。お茶どうぞ。熱いので気を付けてください」
「はい、ありがとう」
はぁ……食後の煎茶。落ち着く。
って、おい。なに和んでるんだ私は。なに食後のお茶飲んでホッコリしてるんだよ。
「お風呂の準備できましたよ」
「ありがとう。入ってくるね」
うわ、至れり尽くせり。こんなに良く動く男の子って初めて見た。前の彼氏はご飯も作れない、掃除もしない、お風呂なんか、もちろん沸かしてくれない。一度座ったら動かない人だったから、フットワークの軽い尚太くんを見てると、どう対応していいのかわからなくなる。
浴室はヒーターで温まっていて、新品のボディタオルも用意されていた。
あ、このボディタオル……家で使ってるのと同じメーカーだ。良かった。硬いナイロンタオルだと肌が荒れちゃうから、綿のタオルじゃないと嫌なんだよね。シャンプーも普段使っているのと同じだ。やっぱり親子で好みが似るって本当なんだ。
いつもより念入りに体を洗ってから、湯船に浸かると、強張った体も心もぼぐれていく。
「はー……気持ちいい」
日本人に生まれてよかった。極楽、極楽。尚太くんに感謝!
……って、あれ。なんかこれ、このまま付き合うパターンじゃないの?
まさか、そんな……。いやいや、尚太くん、君あまりにもチョロ過ぎない? そんな可愛い顔して、その場の勢いでセックスした女といちいち付き合ってたら、いつか騙されて痛い目見るよ?
それに、私は明日の新幹線で家に帰るから、申し訳ないけどこの関係は、今この時だけってことで。正直、尚太くんは可愛いし、イケメンだし、気が利くし……まあ、はっきり言ってすごく好みなんだけど。
ただ7歳年下……うーん。私が30歳の時、尚太くんが23歳……あ、ありえない。
私は30歳までに結婚したいなーとか、思ってるんだよね。子供も早めに欲しい。今度こそ、もうちょっと結婚を意識できる人と付き合いたい。
「ということで……尚太くん。なかったことにしようか」
「……え?」
→→→次回、最終回!! 花子先生視点でしめくくり!
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