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番外編(おねぇさん視点)

マウント・ポジション

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 立ったまま向かい合って繋がる体位だと、どうしても体のバランスが取れないので、目の前の彼に思い切り縋り付かなきゃならない。それが彼のブームらしくて、最近1日1回は立って繋がっている。
 しかも、昼間。明るい所がお気に入り。
 今日は何を思ったのか、家の東側にあるウッドデッキの柱によりかかり、庭のハーブ園を見渡せる外で……合体してしまった。

「ううぅ、ふわふわっ、柔らかい、気持ちいい、吸い込まれる……」

 私の片足を抱えて挿入したリーシュは、実況中継と言う名の、恥ずかしい言葉攻めをする。
 思わず浅く入った肉棒をぎゅっと締め付けると、片腕で腰を掴まれ全身を緩やかに揺らされた。彼の肩に回した両腕に力が入る。

「……カオルさん、綺麗っ、大好き!」

 ちゅっとリップ音をさせて、キスを一つ。

「好き……、気持ちいいっ、んぁ、しまる……」

 またリップ音をさせながらキス。

 うっとりしながら彼が呟き、合間にちゅっちゅとキスを落とす。
 明るい日差しに透ける金髪がキラキラ眩しい。白い肌は、内側から光り輝き、頬と目元を桃色に染めた美青年は、太陽の下で見ると恐ろしく神々しい。

 眩しすぎて……目を瞑っても網膜に残像が浮かび上がる。比喩ではなく、本当に。
 清々しい風が過ぎざまに、歓声を上げる。比喩ではなく、本当に。

 メルヘン! こんなAVみたいなセックスしているのに!

 開放感溢れる外で、上はTシャツ、下半身裸なのは、まあ百歩譲っていいとしよう。愛し合う男女が盛り上がった結果のセックスが、時に滑稽な姿になってしまうのは、致し方ない。
 問題はこの体位。対面立位なんて、身長差があると奥の方まで入れるのが至難の業で、浅く繋がりながらシチュエーションによる興奮を楽しむものなんだけど、彼は貪欲に快楽の方を追求するので、けっこうしんどい。
 この体位を楽しむために、彼が導き出した答えは、彼の肉棒の特徴である瘤を使った、Gスポット特化の攻めである。

「ん、凄いっ……、絞られるっ」

 嬉しそうに実況している彼が、もっと私に絞られたいと腰を振る。
 密着するとおっぱいが彼の胸に潰されて形を変えた。
 Tシャツの隙間からその様子を覗き込んだ彼が、今度はおっぱいに語りかける。

「ふぅっ、これ、潰れて苦しい? 大丈夫? あ、汗落ちちゃう……、ふにふにして、んっ、乳首、こりこりして、かわいい……すき……おっぱい、かわいい」

 ブラは繋がる前に、するっと抜かれてウッドデッキのベンチの上に置いてあった。
 今度は私の乳首を刺激するように、上半身を揺らす。
 敏感になった乳首の先っぽがTシャツ越しに彼の胸に擦られむずがゆい。

「ああっ、中また締まった! きもちいい、もっと擦ってもいい? 強くしていい?」

 私も切なさが限界で、うっかり頷いてしまった。ゆったりした動きが次第にゆっさゆっさと大きくなっていく。
 私の方足を抱え直し、足を広げて少し腰を落とした彼が、ぐっと下から挿入を深める。

「ぁあんっ!」

 思わず大きな喘ぎが飛び出して、慌てて口を閉じる。
 それを見た彼が、もっと聴きたい。ってイケメンボイスで呟いて、なのに口を開いて私の唇を食べるみたいに塞いでしまう。
 舌で唇をつつかれ、ペロペロ舐められ、少しずつ閉じた口を開かされた所で……さっきより強めに腰を使われた。

「ぁあっ、りぃっ、しゅ」
「んっ、もっと声、出してっ、いいよ……」

 一度口が開いてしまうと、再び閉じるのは難しい。
 こんな技まで自然と使いこなすとは……エロイケメンずるい。しかも、この動きが本当に曲者で、わざと体勢を不安定な状態にして、下腹に力が入るよう仕向けている。バランスを取るために、瘤のある肉棒を必死で掴んでいないとならないから、立って強制オナニーしているみたいな状態。
 繋がっている部分を軸にしないとならないから、彼が動くと私も一緒に動いてお互いにバランスを取り合う必要がある。
 性器を擦りつけ合うことで、バランスをとりつつ快楽を得るからイっても休めない。
 たぶん、イクまで3分持たない。
 前は私がリードしてセックスをしていたのに、今はどちらかと言うと彼に主導権が移っている場面が多い。
 いつの間にか主導権を握られていると言った方がいいのか。
 もちろん、相変わらず私の身体を気遣う彼は、今まで付き合ってきた男たちのように、マウントを取ろうとか、強引に善がらせてやろうなんて思惑、持ち合わせていない。
 純粋に、テクニックが違うのだ。
 身体を丁重に隅々まで調べ、何度も確認し、気持ちいいと感じる場所を繰り返し身体に覚えさせた動きの一つ一つが、今まで体験したどのセックスをも凌駕して、私から主導権を奪う。
 彼は気付いていない。
 もう私が教える事なんて何もないってこと。
 今も思春期の少年みたいな純粋さで、一途に求めている姿は、微笑ましく母性本能をくすぐる。彼の願いを叶えてあげたい。もっと与えたい。そう私に思わせる愛くるしさがある。
 なのに、気が付けば彼の愛撫に感じて身も世もなく喘いでイかされてるのは私の方。

 これは……もしかして、やばいのでは……。

 一度私に「潮」を吹かせた彼は、それに固執し毎回あの手この手で私をイかせる。
 徐々に自分の欲望や快楽をコントロールする術を学んだ彼は、私が何度も果てるまで射精を我慢して一回を終わらせようとしない。
 このままでは、また私ばかり連続で何度もイかされて、世にも恥ずかしい思いをするはめに……。

 喘ぐ私を抱きしめ、心地よいリズムで快楽を楽しむ彼が、的確な動きで欲望をコントロールする前に、何とかこの危機を脱しなくては……。

 その時、地面に接していた脚がぐらついて、体勢が崩れた。
 必死で彼にしがみついて立て直す。

 体を捩った時に気が付いた。微妙に傾いたこの姿勢なら、一番「気持ちいい」部分を外しておけるのではないか?
 再びゆらゆらと動き出した彼の肩にしがみつき、微妙にポイントを外しつつも先程と同じように声を出してみる。
 すると、彼がピタリと動くのを止めた。

「あれ? ……カオルさん。何かおかしい」
「え?」
「気持ちいいとこ、当たってないよね? ……今わざと外したでしょ」

 ぎくっと肩を強張らせる。
 それ以上追及する事もなく、彼は無邪気に腰を揺らした。
 ある一点で私の腰が揺れるのを目ざとく見つけられる。

「あ、ここだ」

 確かめるように私のいい所を、つんつん突いて、育った瘤をソコに擦り付ける。
 また「よいしょ」と片足を抱えなおされ、腰に回った腕でしっかり固定されてしまう。

「気持ちいい? 僕、見つけるの上手になった?」

 イケメンスマイルで聞かれて、私は悶えた。
 これはもう、ダメだ。
 私の気持ちいい場所を完全に把握されている。

「いっぱい、気持ちよくなろうね」

 日差しが眩しい。笑顔も眩しい。
 彼はどこまでも純粋無垢なまま、気持ちいいことを覚えてしまう。
 人間として……日本人として生まれた私と違い、セックスに一切の後ろめたさが無い。
 それ所か、セックスを純粋に愛する人と快楽を分かち合う、究極のコミュニケーションだと思っている。いや、それが正しいのかな?
 私の方が……おかしいの? え、そうなの? あれ?

 良く考えれば、私が主導権を握っていたことなんて一度もないのかもしれない。
 だって、彼のすること全て、私は最初から許して受け入れていたんだから。

 それでも何かと抵抗したくなるのは、もうただの習慣や照れ隠し。
 本当はいつだって、私もこのコミュニケーションを求めている。
 彼に溺れてしまうのが怖いのかもしれない。
 たぶん、私が知らない事を彼が知っているから。
 他にも誰かいるはずのこの世界で、なぜ誰にも会わないのかとか、彼が会わせたがらないのかとか。話してくれたら、もう少し素直になれるのかな。

 まあ、今は深く考えず……。

「え、カオルさんっ、うぁ、締めっすぎてる! でちゃうっ、でちゃうよっ」

 筋肉で解決しようか。








おしまい
 「フェアリー・シーズン~おねぇさんと美少年」
 読んでいただき、ありがとうございました。
 挿し絵→©️2019藤蜜
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