白い塔の聖女

藤の蜜

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仕方ない、なんて思ってない

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 僕は『勇者』として、真面目に訓練をうけてるから、普通の十歳よりずっと体力がある。魔物だってスライムや小さなホーンラビットくらいなら倒せる。でも、何もない階段をずっと上り続けるのは、つまらない。代わり映えしない、白い壁に囲まれた階段を、グルグルグルグル回りながら登るのは、必要以上に体力を使う。

 ようやくたどり着いた最上階に、着替きがえが入った袋と野菜スープの鍋を置いて地上に戻り、残りの水と食料が入った袋を背負って、また塔を上る。

 ──ああ、もういやだ。めんどくさい。

 賢者のやつが「忙しい忙しい」って仕事を押し付けるから、最初は二人で交代だった当番が、今ではすっかり僕の仕事。

 賢者は僕より四つ年上で、ひょろりとした長身の優男やさおとこ。見た目通り体力がまったくない。王宮で『聖女』の言葉が通じる魔法の研究。とやらをしていて忙しいからとかなんとか。

 仕方ない。なんて僕は思ってないけど、周りの大人たちは、そう思っていないみたいで、結局損な役目は全部僕に回ってくる。本当に嫌になる。

 せめて『聖女』がもっと大人しくて、普通に話が通じて、あばれない人なら良かったのに。塔に閉じ込められているのは可哀想だけど、僕には、どうすることも出来ない。いくら将来の『勇者』だと言っても、まだ子供だから『発言権』だって無い。大人は、僕の意見なんか聞いてくれない。
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