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Scene08 さよならの鐘の音

80 それでも人になりたくて⑦

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「チクタクチクタク。
 時計の針が鈴を鳴らすよ」

ロリがそう言って天上を眺める。

「あーあー、せっかく適合者を見つけてきてあげたのに。
 ボロボロじゃん」

「ディアブロとしては不服かい?」

月六がロリに尋ねる。

「まぁね。
 プレゲトンも取られたみたいだし……
 不服といえば不服だけど。
 取られたものは取り返せばいいだけ。
 むしろ燃えるはこんな状況」

「それはそれはありがたい」

青年がそう言って現れる。

「モトフミさま」

月六の目が細くなる。

「ユキはまだ目を覚まさないようだな」

「はい。クララが付きっきりで見ています」

「金平は行方不明。
 こうも突破されるのはあまりいい気がしないな」

「申し訳ありません」

モトフミは小さく笑う。

「気にするでない。
 我たちは人と違い罰を与えぬ。
 月六、主は金平の捜索に力を入れてくれ」

「……」

「なにか不服か?」

モトフミがハイジに尋ねる。

「そうじゃねぇ。
 薬物に免疫のあるユキが薬物で眠らされるなんて想像ができないだけだ」

「そうだな。
 それは言えてる」

モトフミは小さくうなずく。

「強力な能力者がいるのでしょう」

月六が言う。

「そうだな。
 ギフテッドかデモニックか。
 それか未知なる能力か……
 ゾクゾクするのぅ」

モトフミは嬉しそうに嬉しそうに笑った。

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