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Scene08 さよならの鐘の音

78 それでも人になりたくて⑤

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「バッファーとデバッファーの違いもわからないお子様では僕には勝てないよ」

桃季はため息を吐く。

「なにを言ってるの??
 バッファーとデバッファーは紙一重だよ。
 でも僕はバッファーよりデバッファーの向いているんだよ。
 両方できるんだよ。
 君も弱くなっているんだよ?気づいてない?ああ、馬鹿だからね。
 仕方がないか」

金平はケラケラ笑う。

「いやー、愚かってこのことですねぇ」

再び男が現れる。

「なに?さっきからおじさん誰?」

「よくぞ聴いてくれました。
 あっしの名前は源 義経。
 おっと勘違いしないでくださいね。
 歴史の教科書に出てくる人とは別人ですから!」

「知らない人だね」

「そうですか。
 無学というか8歳だから仕方ありませんね」

「おじさんはなに?死にに来たの?」

「誰も死にませんよ。
 あっしはスマートな人間なのでね」

「スマート?馬鹿なの?」

「先生!100人。ぶっ飛ばし完了しました」

女子高生がそう言って現れる。

「真美さん流石っす」

「なに?次々と……」

金平はそこまで言った時気づいた。
周りの大人達がいないことに。

「あれ?なんで僕はひとりなの?
 白銀さんは?」

「さぁ、どこでしょうね」

義経が小さく笑う。

「え?え?どういうこと?
 おじさんの姿が見えないよ?」

「暗闇の世界へようこそ。
 そしてさよなら」

義経がそう言ってスマートフォンの電源を消した。

「それが貴方の能力ですか?」

白銀がそう言って鋭い笑みを浮かべる。

「スマートフォンにモノを自在に収納する能力ですよ。
 スマートでしょ?」

義経がそういうと白銀が指先から糸を出す。

「その手には乗らないよ」

その糸を桃季が弾く。

「3対1なら勝てるだろうと思います?」

白銀は余裕だった。
勝てると思っていた。

ストン。

音が響く。

でも痛みはない。

でも意識が遠のく。

「君はおやすみ」

男の子の声は白銀には届かない。

「十三さん。亜金くんの居場所はわかりましたか?」

「うん。たこ焼き作ってた」

「たこ焼き?」

「うん、楽しそうだった」

「そうですか……」

義経は困った顔をした。
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