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Scene08 さよならの鐘の音

74 それでも人になりたくて①

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ユキが小さく笑う。

亜金が小さく震える。

「怖い?」

ユキがそう言って亜金の頭を撫でる。

「少し」

「大丈夫、全てお姉さんに任せなさい」

ユキはそう言って亜金の耳元でささやく。
亜金の顔が赤くなる。

「いいんですか?」

「大丈夫よ、これができたら私たちは更に仲良くなるわ」

ユキがそう言って亜金の手をに握る。
そしてそっとその手を下におろし。

くるりとたこ焼きをひっくり返す。

「……」

それを東が遠い目で見る。

「どうした?たこ焼きは嫌いか?」

ハイジがそう言って東に尋ねる。

「たこ焼きは好きです。
 でも状況がよくわかんなくて……」

「まーまー、そんなこと言わずに貴方もアツアツのたこ焼きを食べない?」

ユキが小さく笑う。

「えっと……」

「えっちになる薬は入ってないから大丈夫よ」

ユキがそういってクスクス笑う。

「そっちの心配はしてないですけど……
 いやちょっと心配してますけど……」

「大丈夫。東ちゃんと亜金くんは私のお気に入りになったわ。
 無理矢理なんかしない。
 だから敬語はやめてね」

ユキは優しく笑う。

「えっと……詩空くんは怖くないの?」

「人に触れることが?」

「えっと……」

亜金の答えに東は戸惑う。
それを見たハイジがいう。

「まぁ、細かいことは気にするな。
 今日はレッツたこ焼きパーティーだ!」

「おー!」

そう言ってひとりの美少女が手を上に上げる。

「クララ来たのね」

ユキが小さく笑う。

「クララも来ちゃった」

「あなたはクララさんというのですか?」

東が恐る恐る言った。

「うん!私クララっていうの貴方は東ちゃんだよね。
 そして君が亜金くん」

クララはそういってふたりの顔を交互に見る。

「うん」

亜金がうなずく。
クララがニッコリと笑ってこういった。

「私12歳だよ。
 だから敬語はやめてね」

亜金と東は小さくうなずいた。
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