みんなのサスペンス～ちょっぴり残酷な物語

Scene06 人として

58 呪縛

大輔は人生初の境地に立たされていた。
りのあの部屋にひとりぽつんと残された。

りのあはシャワーを浴びている。
自分もこのあと借りるのだろうか？

そのあと自分は経験するのだろうか？
コンドーム？そんなの常備していない。

「あがったよー」

りのあが、バスローブ姿で現れる。
大輔の鼓動が早くなる。

「次入ってね」

りのあは優しく微笑む。
そして声が聞こえる。

「何期待しているの？」

呪縛の声だ。

大輔は無視することにした。

「愛されると思っているのか？
　セックスできると思うのか？化け物のお前が？」

大輔は脱衣所で服を脱ぐ。

「期待するな期待するな」

大輔はふと鏡を見た。
鏡を見てしまった。

「ほら？な？化け物だろ？」

鏡に映る自分と目が合う。

「そうだな……」

大輔はため息を付いた。

きっとこの先何も起きない。
何もできない。
何かをすればおそらくそれはレイプに近い。

自分は呪われている。
自分は嫌われている。
自分は産まれるという罪を犯した。

だから最悪。
だから最弱。

誰も守れない。
誰も救えない。

大輔は冷たいシャワーを浴びる。

軽く身体を洗う。
髪も洗う。

そしてりのあがいる部屋の扉を開ける。

「早いねー」

りのあが大輔の身体を抱きしめる。

「あ……」

大輔は震えている。

「ん？身体冷たいね。
　大丈夫？」

「……うん」

「本当に？」

りのあが大輔の額に手を当てる。

「って、熱あるじゃん！」

「大丈夫……」

大輔はそのまま倒れた。