上 下
19 / 85
Scene03 コインロッカーと女の子

19 はじまるのは絶望か

しおりを挟む
女子高生が行方不明になった。
そのニュースはあまり報道されていない。
警察は、受験が嫌になり家出をしたと見ていた。

女子高生の名前は、源口 直美。
普通ならこのまま流れる案件だった。
それをなんとか食い下がり。
しがみついた老人がいた。
源口 清。
直美の祖父である。
大手通信会社MTTミンナの社長である。

「直美はやっと……やっと夢を持てたんだ。
 それなのにどうして警察は動いてくれない?」

清は、メディアを通じて報道協力を仰いだ。
しかし、報道陣も家出だろうと思っていた。

だからそんな騒ぎにはならない。
でも、警察は警察。
捜査しないわけにはいかない。

そして、それは大輔の元に向かった。

「大輔くん。
 そんなわけで調査しくよろ!」

将門がそういって大輔の方を見て笑う。

「どういうことですか?」

「これ調査資料」

大輔の質問を無視して将門が資料をりのあに渡す。

「あ。私も?」

「そうそう、聞き込みしてくてよ」

「かしこまりー」

りのあがそういってだらしなく敬礼をした。

「りのあちゃんは、聞き分けが良くておじさん大好きだよ」

将門の言葉にりのあは、苦笑いを浮かべた。

「セクハラ親父は無視してさ、今回は僕らも調査に関わるからよろしくね」

楽空がそういって笑う。

「そういうわけだ。
 捜査するぞ」

羅輝がそういうと大輔が戸惑う。

「……えっと全く空気が読めません」

「本は読むだけじゃダメだ。
 考えることも時には大事さ」

将門がそういって大輔の背中を軽く押した。

「え?」

「いってこい」

将門が笑顔でそういうと。
大輔は逆らわない。
逆らってもいいことはない。
そう思ったからだ。

「とりあず資料によると直美さんは、ひらかた中央公園で行方不明になった」

「どうして行方不明になったってわかるんですか?」

羅輝の言葉に大輔が尋ねる。

「スマートフォンがひらかた中央公園で見つかったのさ」

楽空がそういって小さく笑う。

「そう……なのですか」

「そういうこと、ひらかた中央公園に行くよ」

りのあがそういって大輔の背中を押して進んだ。

「しゅしゅっぽっぽしゅしゅっぽっぽ」

りのあが楽しそうに歌う。

「……?」

大輔が首を傾げる。

「新人くんも歌おう。
 しゅしゅっぽっぽしゅしゅっぽっぽ」

「歌いません」

「えー?歌おうよ」

「なんでそんなテンション高いんですか?」

「私、幼稚園の先生にもなりたかったんだー」

「答えになってないですよ」

「気にするな。
 行くぞ」

羅輝が歩き出す。
楽空も進む。

「しゅしゅっぽっぽしゅしゅっぽっぽ」

りのあが、大輔の背中を押す。
大輔は渋々進んだ。
そこに絶望の世界があるとは知らずに。

しおりを挟む

処理中です...