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Scene01 ニートですがなにか?

09 生きている

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サイレンが鳴り響く。
救急車の音。
パトカーの音。
混じって混じって混じり合った音。
その音は女には響いて聞こえる。
聞こえる。聴こえる。
生きているから……

男は女を衰弱死させようと思っていた。

だけど女の運がいいのか。
それとも男の運が悪いのか。

女は助かったのか助かっていないのか。

女にはなにもわからない。

なにもわからない。

わからないまま。
空を見上げる。

場所は人気ひとけのない山の中。

たまたま通りかかった登山客の通報で見つかった。
大輔とりのあは、すぐに現場に向かった。

「あー」

女は大輔を見て笑った。

「あははははははは」

「……え?」

大将は戸惑う。

「死にたくない死にたくない死にたくない」

女がそういって大輔に向かって走ってきた。

トスン。

女が大輔の体を拳で殴った。

「え?なに?」

「死にたくない死にたくない死にたくない」

ポスン。ポスン。ポスン。

何度も何度も殴った。

「えー痛い痛いって」

「死にたくない」

女がまっすぐと大輔の方を見た。

「大丈夫」

「あー?」

女が首を傾げる。

「死なないよ」

「死ない?」

「うん、死なない」

「あははははははははー」

女は笑った。

可笑しくないのに笑った。

ただ女の笑い声だけがその場に響いた。

「僕ついていってもいい?」

大輔がりのあに尋ねる。

「君がいても変わらないよ?」

「それでもいいよ」

「そっか」

りのあは、優しく微笑んだ。

「え?」

「行って来い大輔!」

「ありがとう」

大輔は優しく笑う。
小さく優しく暖かい笑みだ。
大輔の中に何かが産まれる気がした。
だけど、何かが邪魔をする。

 バケモノ

その言葉が心をえぐる。
でも、大輔は笑顔を続けた。
それがこの女の心を救う気がしたから。

女の身元はわからない。
身元を証明するものがなかったからだ。

「……さてと。
 私はどうしようかな?」

りのあは、そういって周りを見た。
捜査員が情報を集めている。
今、りのあができることはなにもない。

「私は署にもどろうかな」

りのあはそうつぶやいたあとパトカーに乗った。

警察官の男の運転手に運転を任せて……

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