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翌年1月
1月30日
しおりを挟む1月30日
今日は、ずっと雨でした。
特にする事はなく、一日ぼーっと過ごそうと思っていたら……
20時過ぎた頃、俺の携帯が鳴りました。
由香さんからです。
「猫さん……」
その声は、消え入りそうな声でした。
「由香さん!
突然、店を辞めたって聞いたけど何があったの?
連絡も取れなかったから皆心配してるよ?」
「あ、うん……
店はね、ちょっとした事情で辞めたんだ」
「そっか……」
「あ、あれ?
それで、納得しちゃう?」
由香さんは、戸惑いの声で言いました。
「うん?」
「ううん、なんでもない」
「今、どこ?」
「今ね、枚方市駅に居るよ」
「今すぐ会えないかな?」
「うん。
私も、会えないかと思って電話したんだ」
「よかった。
じゃ、今からいつものマクドに行くね」
「うん」
俺は、そこで電話を切りました。
そして、バスで向かう事15分……
由香さんは、そこに居ました。
「由香さん」
「あ、猫さん」
俺は、由香さんが座っている席の前に座りました。
そして、言葉を続けました。
「ごめんね。
突然いなくなって……
私、全て分かったの……」
「分かったって何が?」
「Haruさんの死、はるかさんとルーちゃんの自殺についても……」
「え?」
俺の頭の中が混乱しています。
「だから、全てが分かっちゃったの。
今はまだ言えないけど……
たぶん、そう……」
由香さんは、周りを見渡すと言葉を続けました。
「とりあえず、場所を変えよう?」
由香さんは、そう言って俺の体を抱きしめました。
そして、耳元で囁きました。
「由香さん、どうしたの?」
「出来ればラブホが良い」
「え?」
「エッチはしなくてもいいからさ。
一緒に来て」
「……うん」
俺は、由香さんと手を繋ぎ歩きました。
そして向かった先は、チャペルココナッツ。
枚方市駅の少し近くにあるラブホテルです。
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