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翌年1月

1月16日

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1月16日

「おはよう猫さん」
俺は、由香さんの声で目を覚ましました。
時計の針を見ると10時30分。
「あれ、時計の針が戻ってる?」
「違うよ、日付が変わったの」
「本当に?」
「うん」
すると俺のお腹の音が鳴りました。
「お腹すいたね……」
由香さんが、小さく呟きました。
「何か食べる?」
俺がそう言うと、由香さんが嬉しそうな声で言いました。
「猫さんが作ってくれるの?」
由香さんの目が、キラキラ輝いています。
「食パンを焼くよ」
由香さんはガッカリとした声で言いました。
「……私が作るよ」
由香さんは、そう言って体を起こしました。
そして、俺の部屋を開けると……
母親が立っていました。
「猫!いつまで寝ているの?」
「あ……
 母さん」
「女の子が部屋にいるから黙っていたけど!
 そろそろ起きなさい!」
「あ、お母様、おはようございます」
「あらー
可愛い子ね!おはよう!」
母親は、満面の笑顔で挨拶をしました。
「貴方、新しい猫の彼女?」
「そうです」
由香さんは、ためらいなく答えました。
「不束な息子ですが息子をよろしくね!
 はい!これ、朝ごはん!」
母親は、そう言うと朝食の乗ったトレイを由香さんに渡しました。
そして、母親は去りました。
「わぁ~~私、猫さんの事、任されちゃったー」
由香さんは、照れ臭そうに笑いました。
「いいんですか?
 俺の彼女だなんて言ったりして完全に信じていますよ」
「一度会ったら友達で、一晩寝たら彼女さー。
 って歌あったじゃない?」
「なんか、違います……」
「朝ごはんを食べたらさ、尾上さんのお見舞い行かない?」
「そうですね。
 行きましょう」
俺達は朝食を済ませると、由香さんの車に乗り病院に行きました。
尾上さんは、今も眠っています。
母親は、はるかさんが亡くなったことを知っています。
そのことで落ち込んでいる俺をみて「新しい彼女が出来れば元気になる」と思っていたそうです。
そして由香さんの登場で、少し不自然になっていましたが、
由香さんを新しい彼女と思ったのか母親も少し元気が出たそうです。
俺は、色んな人に支えられているのだとに改めて思いました。
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