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翌年1月

1月15日

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1月15日

結局、昨日は眠れませんでした。
朝の9時ごろ、由香さんから電話がかかってきました。
でも、気分じゃないので電話に出ませんでした。
今度は、南さんから電話がかかってきました。
でも、つらいので出ませんでした。
嫌な訳じゃありません。
出ても良かったのかも知れません。
でも、出たくなかったのです。
俺は、ゆっくりと枕に顔を埋めました。
今日は、何もしたくありません。
Haruさんとはるかさんが亡くなり……
尾上さんまでもが未遂だったけど自殺しました。
でも、いつ目を覚ますのか分かりません。
考えれば考えるほど答えが分からなくなります。
由香さんや南さんのことが嫌いになったわけじゃありません。
暫くすると、クラクションの音が何度も鳴りました。
なんだろう?俺はため息をついたあと、窓から顔を出しました。
するとそこには、車に乗った由香さんと南さんの顔が見えました。
そして、2人は俺に気づくと車を降り、玄関にあるインターフォンを鳴らしました。
居留守を使おうにも2人は、俺に気づいています。
俺はゆっくりとベットから降り、パジャマのまま外に出ました。
「猫さん、それパジャマ?」
由香さんが、そう言って笑う。
「うん、さっきまで眠っていてまだ眠いんです。
 だから、今日は遊べません」
「私も眠い」
由香さんは、そう言って目をこすりました。
「だったら寝たらいいじゃないですか!」
俺は、思わず大声を出してしまった。
由香さんに当たるなんて、最低ですね。
「そうする……」
由香さんは、冷たい声でそう言いました。
「じゃ……
 おやすみ」
この空気から逃げ出したかった。
なので、逃げるように玄関のドアを開けようとした時、由香さんが俺の体にしがみついてきました。
「一緒に寝よう」
目を真っ赤にさせた由香さんが、今にも泣きそうな顔で言った。
「由香、昨日から一睡も眠ってないんだ。
 安心させてくれる猫さんの所なら眠れると思って連れてきた」
南さんが、由香さんの頭を撫でながらそう言いました。
「お願い一緒にいて……」
由香さんは、俺の背中に顔をうずめてお願いをしました。
体が小刻みに揺れています。
泣いているのでしょう。
そっか、つらいのは俺だけではないんですね。
「私はこれから仕事だから、由香のこと頼んだよ!」
南さんは、そう言うと車に乗りました。
そして、そのまま去っていきました。
結局、俺は由香さんを自分の部屋の中に入れました。
少し大きなベッドなので2人くらいなら横になれる広さはあります。
「おやすみなさい」
俺がそう言うと、由香さんも小さな声で「おやすみ」と言いました。
そして、俺たちは手を繋いだまま眠りにつきました。
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