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翌年1月

1月14日

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1月14日

今日の朝、由香さんから携帯に電話があり、目が覚めました。
「ルーちゃんが自殺した」
その声は、震えていました。
「え?」
俺は耳を疑いました。
「だから、ルーちゃんが自殺したの!」
「……え?」
俺の頭の中が真っ白になりました。
もう、由香さんが何を言っているのかがわからない。
「今、病院に向かってるの。
猫さんも来て……」
「……わかりました
 どこの病院ですか?」
「枚方の○×病院」
俺は、服を着替えて玄関を出ようとした時、南さんから携帯に電話がありました。
「猫さん!
 尾上さんが自殺したって知ってる?」
「はい」
「今どこにいる?」
「家です、今から尾上さんがいる病院に向かう所です」
「わかった!
今、仕事を終えた所で、私も今から病院に向かう所なんだ。
 枚方市駅付近に車を持ってくるから一緒に行こう!」
「わかりました!」
俺は、電話を切るとすぐに家を出て枚方市駅に向かいました。
枚方市駅に着くと車のクラクションが、小さく鳴りました。
振り返ると、南さんが車の運転席に座っていました。
俺は、すぐに南さんの車の方に走りました。
「さぁ、早く病院に向かおう」
南さんはそう言うと、車を走らせて○×病院に向かいました。
病院に着くと、由香さんが待合室で今にも泣きそうな顔で座っていました。
「由香さん……」
由香さんは、俺を見つけると涙をボロボロ零しました。
そして、俺の胸に飛び込んできました。
「ルーちゃんが……
 ルーちゃんが……」
俺は、ただ由香さんを抱きしめてあげることしか出来ませんでした。
「尾上さんは?」
由香さんが落ち着いた頃を見計らって、南さんが由香さんに尋ねました。
「今は、昏睡状態なの……
 私が、ルーちゃんの家に遊びに行ったらいなくて、駐車場の車で練炭自殺してたの……」
「そうか。辛かったな」
南さんはそう言って、由香さんの頭を撫でました。
そして、見慣れた男が1人俺に近づいてきました。
杉山です。
そして一言、
「お前が全て悪いんだ!」
杉山が大きな声で怒鳴るとその場を去りました。
「なんなんだアイツ……」
南さんが、杉山の背中を睨みました。
由香さんは、冷たい目で杉山の背中を見ていました。
「猫さん、ルーちゃんとなんかあった?」
由香さんが、俺に尋ねました
「特には……」
「本当に?なにか約束事とかしてない?」
「約束ならしました。
今日、一緒に夜景を見に行くことになっていたんです。」
「そうなの?」
「はい。
綺麗な夜景が見られるところがあるらしくて、今日はそこに連れて行ってもらう予定でした」
「そうか……」
南さんはそう言うと、肩を落として椅子に座りました。
「尾上さんには会えないの?」
由香さんが、涙を流しながら答えました。
「今は、家族以外面会謝絶だって……
「命の方は大丈夫なのか?」
南さんがそう言うと、由香さんは頷き答えました。
「うん。
 命には別状はないって……」
「そっか。
 とりあえずは、安心したよ」
すると、【きゅるるる】と音が響いた。
「ごめんなさい。
 私のお腹の音だよ……」
南さんはクスリと笑った後、腕時計を確認しました。
「うわ、もう12時を過ぎているじゃないか!
 2人とも朝は?」
俺達は首を横に振りました。
「じゃ、近くのマクドに行こう」
「うん。
 でも……」
由香さんは椅子に座ったまま俺の体をピッタリとくっつけました。
「どうした、由香?」
南さんが心配そうな声で尋ねました。
「怖いから猫さんにへばりついていても良い?」
由香さんは涙声でそう言うと俺の手を握り締めました。
「うん?」
「構わないから車に向かうぞ!」
そして俺達は病院の駐車場に向かい、すぐに車を発進させました。
そして、マクドで食事を食べたあとすぐに解散しました。
その後も、結局尾上さんの事で頭がいっぱいで他の事に集中できませんでした。
自殺するつもりなら、約束なんてしないはずです。
なにかあったのでしょうか?
俺には、何もわかりません。
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