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翌年1月

1月5日

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1月5日

今日も、由香さんに呼び出されました。
待ち合わせの場所にいたのは、由香さんでした。
「猫さん発見!
 これよりハグを開始する!」
由香さんは、そう言って俺の体を抱きしめてきました。
なんとなく今までのことで仕返しがしたかったので、俺の方からも由香さんの体を抱きしめてみました。
「え?え?え?
 今日の猫さん大胆?」
「今日は、離しませんよ……」
「えっと、どういう事かな?」
「今日は別の人とバトンタッチとかないですよね?」
「う、うん。
 ないよ?」
「そっか。
 ならいいです」
俺は、ゆっくりと由香さんを抱きしめる手を放しました。
でも、由香さんは俺から離れようとしませんでした。
「胸がドキドキしてるねー
 楽しい!」
「俺は楽しくないです。
 そろそろ離れて下さい。周りの視線が痛いです」
「つまんなーい」
由香さんは、そう言うと口を尖らせました。
「今日はね、私の家で、手巻き寿司パーティーをしまーす」
「南さんや尾上さんもパーティーに参加するのですか……?」
「ううん。
 私と猫さんの二人だよー」
「そ、そうですか……」
由香さん、それってパーティーと言うのですか?
「じゃ、私の家に出発だー」
由香さんは俺の手を引っ張り、車の中へ入れました。
そして、そのまま由香さんのマンションへ行きました。
ドキドキしました。
部屋は綺麗で、ぬいぐるみがいっぱいありました。
女の子っぽい部屋だなって思いました。
「下着とかは、隠してあるから探しても無駄だよー」
「探したりなんてしませんよ……」
「そう?
 じゃ、手巻き寿司を作ろう!」
由香さんはそう言うと、手巻き寿司セットを広げました。
「由香さんが、酢飯を作ったんですか?」
「うん!」
「由香さんが、料理する姿ってイメージできないです」
俺がそう言うと由香さんは、苦笑いを浮かべました。
「えー。
 私の趣味は、料理だよー」
そう言って海苔に酢飯を乗せてその上にマグロとカニカマと順に乗せると、綺麗な形の手巻き寿司が出来上がりました。
「綺麗に作れますね」
そう言って由香さんをまねて手巻き寿司を作ってみましたが、上手く巻けませんでした。
「猫さん、ご飯の量が多いんだよ。
 ご飯の量を少なくして平べったく乗せると綺麗になるよ。
 あと具も多いね」
由香さんは、そう言って俺の分の手巻き寿司も作ってくれました。
「手巻き寿司って、奥が深いんだね」
「んっとねー。
 手巻き寿司は、見た目の美しさに囚われず好きな分量で食べるのが良いと思うなー」
「そうですね」
俺は、頷くと次の手巻き寿司を作りました。
「1人でご飯食べるより誰かとご飯を食べる方が美味しいね」
「いつも1人なんですか?」
「昼は南さんたちと食べてるけど、夜は1人かな……」
「ちょっと意外です。
 由香さんってモテそうなイメージがあるのですが……」
「モテないよー。
 彼氏いない歴2年だよ」
由香さんは、そう言って笑いました。
「俺なんて年齢イコール彼女いない歴です」
自分で言ってちょっと寂しくなりました。
「気にしなくていいと思うよー。
 猫さんなら、その気になればすぐに出来ると思うし」
「そうですか?」
「その気にならなければ、出来るものも出来なくなるよー」
「そんなものですか?」
「うんうん」
由香さんはそう言って、手巻き寿司を頬張りました。
俺も手巻き寿司を頬張りました。
「マグロ美味しいですね」
俺が、そう言うと由香さんは言いました。
「んっと、それ大トロだよー」
「え?これ大トロなんですか?」
「うん!」
「味のわからない俺でごめんなさい……」
「気にしなくていいよー。
 美味しければそれでいいしー」
由香さんはそう言って、優しく微笑みました。
久しぶりに食べた手巻き寿司、美味しかったです。
それに楽しかったです。
部屋の中だったので、杉山の視線を感じなくてすみましたしね。
帰りは、車で俺の家まで送ってくれました。
俺の家の前で、由香さんは言いました。
「場所、わかったよね?」
「え?」
「私のマンションの場所」
「あ、はい。
 意外と俺の家の近くですよね」
「うんうん」
「じゃー
 いつでも遊びに来てね♪」
由香さんはそう言うとニッコリ笑い、俺に手を振ると車を発進させました。
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