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翌年1月
1月2日
しおりを挟む1月2日
今日も、由香さんから電話が掛ってきました。
「今日も出て来ない?」
「凶は出なくて良かった」
「え?何を言ってるのかな?」
「気にしないでください」
「そっか、ちょっと猫さんにお話したい事があるんだー。
枚方市駅の方まで出てきてよ。
私は、昨日と同じ場所にいるからね!」
電話はそこで切れました。
俺はそのまま準備をして、昨日と同じ場所へ向かいました。
駅に着くと、由香さんが手を振って俺の元へ駆け寄ってきました。
「猫さん発見♪」
由香さんは、そう言って俺の手を握り締めました。
「由香さん、こんにちは」
「こんにちは、猫さん。
それでね、今日はルーちゃんが猫さんにお話があるんだって♪」
「ルーちゃん?」
「あ、尾上さんだよー
じゃ、私はこれで帰るから、ルーちゃんあとよろしくー」
由香さんはそう言って手を振ったあと、駆け足でその場から離れました。
「あの、猫さん……」
尾上さんが由香さんと入れ替わるように現われました。
「あ、はい」
尾上さんは俺が返事をするのを確かめた後にゆっくりとした口調で話しました。
「今日は、お話があります」
「なんでしょう?」
「はるかさんの事です……」
「はるかさん?」
「Haruさんとはるかさん、ストーカーされていたそうです」
「え?俺、それ知らない……」
「はい。
猫さんには、絶対に言わないように言われてましたから……」
「そっか……」
「そして、そのことをある刑事さんに相談したそうです。
その刑事さんの名前が、杉山です」
「杉山……?」
「はい、猫さんとはるかさんを取り調べていた人がそうだと思います」
「……うん」
「そして、まだ猫さんは疑われてます」
「え?」
「気づきませんか?
あの人、ずっと貴方を監視しています」
俺は、尾上さんが指を指す方を見ると、そこには杉山の姿がありました。
俺に見つかったことに気づいたのにも関わらず、杉山は隠れようともしません。
俺は、視線を尾上さんに移しました。
「気づきませんでした」
尾上さんは、俺の目を見て静かに言いました。
「はるかさんは、Haruさんを殺したりしません。
猫さんは、人を殺せる強さを持っていません」
「……うん」
「犯人は別にいます」
尾上さんの一言が、胸の中にある何かを刺激しました。
でも、1つ気になることがありました。
殺人事件の担当をしていた杉山が、どうしてストーカーの相談を受けているのでしょうか……?
部署は違いますよね?
殺人事件を扱っている部署は刑事課。
ストーカーなどを扱っているのは生活安全課だったと思います。
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