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翌年1月

1月1日

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1月1日

新年ですね。
あけましておめでとうございます。
でも、めでたい気分にはなれませんでした。
公園で静かに空を見上げていました。
すると、由香さんから電話が掛ってきました。
「猫さん、初詣に行こうか?」
「え?」
「八幡さんに行こう!」
「八幡さん?」
「京都の石清水八幡宮って神社だよ。
 猫さん知らない?」
「知ってるけど……」
「私が、車を出すから!
 猫さんの家って枚方だよね?」
「はい」
「了解。今すぐ枚方市駅に来てよ」
「え?」
「絶対来てね!
 来なかったら今度会った時に罰ゲームだからね!」
由香さんは、ケラケラ笑いながら電話を切りました。
この人、はるかさんより強引です。
そんな強引な女性に弱い自分が情けなくて泣けてきました。
枚方市駅に行くと、俺の名前を呼ぶ声が聞こえました。
声のする方を見ると、由香さんが俺の方を見て手を振っていました。
「猫さん!こっち!こっち!」
「由香さん、こんばんは」
俺は、駆け足で由香さんの方に駆け寄りました。
「こんばんは。
猫さん、今年は初詣に行った?」
「行ってないです」
「なら、よかった」
由香さんはそう言うと俺の手を引っ張り、車の方まで案内してくれました。
「これ、由香さんの車ですか?」
「うん!そうだよ!」
「マイカーだなんて、凄いですね」
「軽だけどね」
由香さんは、そう言って車を走らせました。
それから30分程で石清水八幡宮に到着しました。
そして、軽く参拝しておみくじに挑戦です。
結果は、『平』
由香さん曰く、凶の一個上だそうです。
なんか微妙な気分ですが、凶じゃなくてよかったと思います。
由香さんは、俺の歩幅に合わせてゆっくりと歩いてくれました。
「あの……
 由香さんは嫌じゃないんですか?」
「ん?なにが……?」
「俺のこと気持ち悪くないですか?」
俺は、何を聞いているのでしょう。
でも、俺のことを気持ち悪く思う人も多いです。
だから怖いんです。
由香さんが、無理して俺につきあっているんじゃないかと……
「全然大丈夫だよ?」
「そうですか……」
「ん?
どうかした?」
「いえ、なんでもありません」
俺は、苦笑いを浮かべて首を横に振りました。
「んー」
由香さんは、首を傾げて少し考えた後「帰ろうか?」と言いました。
俺は、静かに頷きました。
心の中は、空っぽ。
はるかさん、どうして自殺なんかしちゃったんですか?
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