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12月31日

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12月31日

大晦日ですね。
今日はもう外には出ず、家の中でまったりしたいです。
紅白歌合戦とか見ながらネットゲームでもしようかと思っていました。
最近、由香さんに振り回されている気がします。
はるかさんは、どうして俺のことを由香さんに任せたのでしょうか……?
もしかして、ずっと前から自殺することを考えていたのでしょうか?
そうだとしたら、俺ははるかさんにとってどういう存在だったのでしょうか……
明日は、新年。
新しい年。
気持ちを切り替えなくちゃ……
そう思えば思うほど気持ちが暗くなります。
その時、俺の携帯が鳴りました。
由香さんからでした。
でも、電話に出る気分にはなれませんでした。
すると今度は、由香さんからメールが来ました。
「会いたい」
たった一言だけ書かれていました。
無視しようと思いましたが、心がチクチクと痛みます。
なので、一度深呼吸。
そして、メールを返しました。
「では、今から枚方市駅の近くのマクドに向かいます」
するとすぐに返事がきました。
「分かった」
そして、俺はマクドに向かいました。
すると由香さんは、既にいつもの席で待っていました。
俺を見た由香さんは、一瞬悲しそうな表情をした後、明るい笑顔で俺の名前を呼びました。
「猫さん!
 早くこっちおいでー」
声は元気ですね。
先ほどの悲しそうな表情は気になりますが、触れないようにしました。
「由香さん、おはようございます」
「猫さんおはよー」
「話ってなんですか?」
「話って?」
由香さんは、首を傾げます。
「え?メールで……」
「私は、『会いたい』ってメールしたけど『話したい』とは言っていないよー」
俺の中の何かが壊れそうになりましたが、我慢です。
「そうですか!」
でも、声は少しきつめに言ってしまいました。
「猫さん、怒ってる?」
「怒ってません!」
思わず怒鳴ってしまいました。
ドラマとかだとケンカになるパターンですよね。
でも、ケンカになりませんでした。
「猫さん」
「な、なんでしょう」
「怒ってる猫さんもかわいい」
「え?」
「顔は、おっさんなのにね、感情が可愛い」
「俺、おっさんですか?」
自分では、おっさんだと思っていましたが改めて言われるとショックですね。
「うん!童顔のおっさん!」
「それって、どっちですか?」
「うーん」
由香さんは悩んだ後、答えを出しました。
「おっさん!」
やっぱりおっさんですか……
「ショックです」
俺がそう言うと由香さんが、笑いながら言いました。
「私は好きだよ?」
「え?」
俺の鼓動が早くなります。
好き?それって俺のことでしょうか?
「おっさん好きだよー」
「そ、そうですか……」
俺のことじゃなかったんですね。
一瞬何かを期待しました。
「もしかして、自分のことだと思った?」
由香さんの声が嬉しそうです。
「そんなことありませんよ」
「ふーん。
 猫さんを見ているとね、お兄ちゃんを思い出すんだー」
「お兄さんが、いるのですか?」
「死んじゃったけどね」
由香さんの声のトーンが低くなりました。
「聞いちゃいけないことを聞きましたね。
 すみません」
「気にしなくていいよー
 私の家族みんな死んじゃっているんだー」
「え?」
「悪い人に殺されちゃったの」
俺は、由香さんにどんな言葉を掛けたらいいかわかりませんでした。
「そうですか……」
俺は、この言葉しか浮かびませんでした。
「お兄ちゃんもね、猫さんみたいに話下手だったの」
「うん」
「それでね、良い歳して彼女もいないし。
 女っ気なし、その点は猫さんとは違うけど……」
「俺も女っ気ないですよ?」
「うーん。
 猫さんは、はるかさんがいたじゃん。
 私もいるしさー、Haruさんもいたし……
 だから、全くなしって訳じゃないじゃん?」
「でも、最近になってからですよ。
 それまで、女友達と言えば中学の時の同級生しかいませんでしたから」
「そっかー。
 じゃ、モテ期なのかもしれないね」
「モテ期ではないと思います。
 恋愛感情を抱かれてるかはわかりませんし」
「ここは、モテ期にしておこうよ」
由香さんが、苦笑いを浮かべました。
「そうですね」
俺も苦笑いで返しました。
「ちょっと元気出た?」
「え?」
「猫さんの事は、はるかさんに頼まれたって話を前にしたよね?」
「うん」
「私頑張るから!
 猫さんが、1日でも早く元気になるように」
由香さんが、笑顔で言いました。
「もしかして、俺をここに呼びだした理由って……」
「それは、内緒!」
由香さんが、唇に手を当てて言いました。
俺、もう少し元気を出すようにします。
俺よりも歳下の女の子が、こんなに頑張っているのですから……
そして、その後暫く雑談して別れました。
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