上 下
32 / 94
12月

12月6日

しおりを挟む
12月6日

14時頃。
俺は、何気なくマクドに向かいました
なんとなく会える気がしたのです。
それは、予感でもなく予想でもありません。
行けば会える。
そう確信していたから……
俺は今日、答えを出そうと思います。
マクドの2階……
視界を広く見渡しました。
するとつまらなそうにフライドポテトをつまんでいる女性を見つけました。
「こんにちは」
今思えば、この女性に自分から声をかけたのは初めてかも知れません。
目元を赤くはらしたその女性は、俺を見て驚いた様子で返事をしました。
「こ、こんにちは」
「目が真っ赤ですね。
 兎さんみたいです」
「……うん」
「どうしたんですか?」
「猫さんのせいだよ」
「俺のせい?」
俺は、首を傾げました。
「早く答えを出してくれないから……」
俺は、深く深呼吸をして言葉をゆっくりと吐きました。
「今日、その答えを出しに来ました」
「え?」
はるかさんは、目を丸くさせていました。
「その前に、俺の話を聞いてもらえませんか?」
「うん……」
そう頷く、はるかさんの表情は不安そうでした。
俺は、はるかさんに自分が背負っている全ての事を話しました。
自分の病気の事。
子供が出来ない事。
自分の寿命が決して長くない事。
小さなころに受けた性的な悪戯の事。
そして、こうしたことが原因でもう1人の自分が、産まれてしまった事。
そして、最後に俺はこう言いました。
「こんな俺で良ければ付き合って下さい」
そしたら、はるかさんは涙を流してこう言いました。
「猫さんってずるいね……」
「答えは、すぐに出さなくて良いです」
俺がそう言うとはるかさんは、その場を去りました。
俺が今までにこの話をした人は2人しかいない。
その2人ともこの話をした途端、距離を置くようになりました。
そう、それが普通なんです。
確かに俺は、はるかさんの周りにはいなかったタイプの人間だと思います。
恐らく、はるかさんが俺に抱いた感情……
それは、『好き』とは違うんです。
俺は、それに振り回されるのが嫌なだけです。
もう、会えなくなっても構いません。
伝えたい事は全て伝えました。
それで去られるのなら仕方がありません。
だって、それが普通なのですから……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

闇を継ぐ者

露刃
ミステリー
切り裂きジャックの事件から二年。 事件について調べている青年と、突然出てきた事実。

レトロな事件簿

八雲 銀次郎
ミステリー
昼は『珈琲喫茶れとろ』と夜は『洋酒場レトロ』の2つの顔を持つ店で、バイトをする事になった、主人公・香織。 その店で起こる事件を、店主・古川マスターと九条さん等と、挑む。 公開予定時間:毎週火・木曜日朝9:00 本職都合のため、予定が急遽変更されたり、休載する場合もあります。 同時期連載中の『探偵注文所』と世界観を共有しています。

日記のキメラ

オケボノハンナ
ミステリー
日記体小説。登場人物たちの日記を小説として読んでいくような構成となっている。最初は単調な毎日が続くが、だんだんとそれぞれの視点が混ざっていく。 日記は行動としてみれば、ただの1日の「記録」ですが、人によっては自身の感情を整理するために必要な「プロセス」だったり、何か忘れたくない想いを形として残すための方法だったりします。今回の作品では、「日記」というプロセスが、「記録」という存在から、メモ、証拠など、どんどん形を、それが持つ「意味」を変えていきます。 登場人物たちの思考が、文章が、視点が、文字が、ごちゃごちゃに構成されている「キメラ」。物語が進むにつれて、「日記」というひとつの媒体に、さまざまな「意味」が重なり、複合され、成り上がった「キメラ」。2つの意図を込めて、「日記のキメラ」というタイトルをつけました。 最初の計画では、ただ小説の紙片を混ぜ、それを記録するというものでした。しかし、第3章を制作している際、実際に手作業で文章を切り貼りしたことで、第4章のストーリーを思いつき、こうして執筆するにあたりました。第3章までを、文字がもたらす「体験」として受け手に楽しんでもらうだけでなく、この物語の構造を作品として意味があるものにしたい、と思い、叙述トリックを扱った小説作品として完成させました。新鮮な「読む感覚」と、少し奇妙ながら物悲しい読後感を楽しんでいただけたのなら、本当に嬉しいです。

失った記憶が戻り、失ってからの記憶を失った私の話

本見りん
ミステリー
交通事故に遭った沙良が目を覚ますと、そこには婚約者の拓人が居た。 一年前の交通事故で沙良は記憶を失い、今は彼と結婚しているという。 しかし今の沙良にはこの一年の記憶がない。 そして、彼女が記憶を失う交通事故の前に見たものは……。 『○曜○イド劇場』風、ミステリーとサスペンスです。 最後のやり取りはお約束の断崖絶壁の海に行きたかったのですが、海の公園辺りになっています。

皇帝陛下は身ごもった寵姫を再愛する

真木
恋愛
燐砂宮が雪景色に覆われる頃、佳南は紫貴帝の御子を身ごもった。子の未来に不安を抱く佳南だったが、皇帝の溺愛は日に日に増して……。※「燐砂宮の秘めごと」のエピローグですが、単体でも読めます。

隠された意味

沼津平成
ミステリー
その意味を知ると、こわくなる。日常生活と精神に危害を及ぼすかもしれないし及ぼさないかもしれないショートミステリ集

「光の天使」 光と影のシンフォニー

夢織人
ミステリー
第1章~第2章 アシュラとミトラが転生した存在である、プリンス・チャーミングとジュンスの物語。 第3章 休職中の「アトランティス四神戦士」英雄ルシファーと美形戦士ヨハネ、謎の下宿人セザール、密命により動く戦士ミカエル、行方不明の戦士アシュラの物語。 第4章 惑星アトランティスと惑星シャンバラの物語。

或ル古物商ノ話

すいせーむし
ミステリー
古物店"No admittanc"。 そこで手にしたモノにより、人々の生活は狂っていく。

処理中です...