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12月
12月4日
しおりを挟む12月4日
用も無いのに枚方をぶらぶら……
すると今、一番会いたくない人に会いました。
知らない顔をして通り過ぎようとすると声をかけられました。
はるかさんです。
「どうして無視するの?」
「無視なんてしていませんよ」
「メールもくれないしさ。
どうして?」
「どんなメールを送ればいいかわからなかったので……」
「普通のメールでいいの」
「その普通がわかりません……」
「昨日の晩御飯は何食べた?」
「白身の魚を焼きました」
「美味しかった?」
「はい」
「じゃ、そう言うメールを送ってくれたらいいの」
「え?」
「『今日、白身の魚を食べたよー』とかさ……
他の子はどうか知らないけど……
私は、それだけでも十分嬉しいから……」
はるかさんは、そう言うとニッコリと笑いました。
そして、言葉を続けました。
「今日は、面接?」
「違います」
「まだ、決まらないの?」
「はい」
「早く決まるといいね」
「はい」
はるかさんは、ゆっくりと俺の手を握りました。
「答え出た?」
はるかさんが、何を言いたいのかが、わかりました。
だけど、俺は何も言えませんでした。
答えは出ているはずなのに……
「猫さん、やっぱ優しいね」
はるかさんは、そう言うと俺の体を抱きしめました。
周りの視線が冷たかったですが、はるかさんの体は暖かかったです。
はるかさんは、俺の耳元で呟きました。
「迷うって事は、まだ可能性があるんだよね……?」
「すみません。
俺、仕事もまだ決まっていないのに……
付き合うとか付き合わないとか考えれないんです……」
「そんなの関係ないよ。
私の気持ちは、変わらないから……
次に会う時までには答えを出してね」
はるかさんは、そう言うと俺から離れました。
「って、猫さん顔が真っ赤だよ?」
そう言った、はるかさんの顔も少し赤かったです。
「すみません……」
「謝らなくて良いよ
猫さんは、私にとって特別な人だから……」
はるかさんは、小さく笑うと「またね」と言って手を振りました。
俺は、ニッコリと笑うはるかさんに手を振る事しか出来ませんでした。
情けないですよね。
でも、答え出さなくちゃ。
俺の中にいるもう1人の俺が騒ぐその前に……
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