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03 lemon

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 僕はいつものように接客。
 するとアーム・ロングの手袋をした少女が店に現れる。

「いらっしゃいませ」

 夢叶さんが接客をする。

「あ……」

 その少女と僕は目が合う。
 僕は思わず目をそらそうとした。
 でも、少女の真っ直ぐなその目に僕は逆らえない。

「七尾さん、こんにちは」

 僕はとりあえず挨拶をしてみた。

「こんにちは、えっと……」

 七尾さんは困っている。
 多分、僕の名前がわからないからだろう。

「小間綾人だよ」

「ごめんなさい。
 まだ名前を覚えれなくて……」

「気にしなくていいよ。
 ほぼほぼ初めましてだもんね。
 朝はごめんね。
 下の名前で呼んじゃって」

「いえ、気にしなくていいです。
 下の名前で呼ばれるの滅多にないので嬉しかったです」

「そうなの?」

 僕は瞬間に思った。
 この子はいい子だ。
 そしてとっても優しい。

「はい」

 七尾さんが小さく笑う。
 僕はこの顔に癒やされている。
 もしかしてこれは恋なのだろうか?
 なんか懐かしく。
 なんか暖かく。
 なんか甘く。
 そしてすっぱい。

 これはまるで甘いレモネードを飲んだときの気分。

 はつ恋はレモンの味とはよく言ったものだ。
 僕はきっとこの子に一目惚れしているのだろう。

「じゃ、また海月姫さんって呼んでもいい?」

「いいですよ。
 その代わり私も綾人さんって呼びますよ?」

「うん」

 僕はなんか嬉しくなった。
 店のラジオから音楽が流れる。

「今から流れるのは米津玄師さんが2018年代にリリースした歌【Lemon】です」

 リスナーがその言葉を放ったとき。
 僕の意識が遠くなる。
 あ、この歌。
 僕は知っている。

 2018年。

 僕が死んだ年だ。
 だから知っていてもおかしくない。

 歌が流れる。

 頭が痛い。

 そうだこの歌は。
 そうこの歌は……

 僕が死んだとき外から流れていた歌だ。

 はっきりと聞こえたわけじゃない。
 なんとなく覚えている。
 そんな感じだ。

 僕の体が震える。

「あ。あ。あ。あ。」

「綾人くん?大丈夫かい?」

 十三さんが駆け寄ってくれる。
 でも、怖い。
 震える。
 死ぬのかな?そんな恐怖が脳裏をよぎった。
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