～マーメイド～

Scene08 デモニックになった日

97 飛び出してみよう現実へ

「この女性の名前は田村ゆかりさん。
　障害を持った子供が産まれる予定の妊婦さんだ」

十三のざっくりとしたグサッとくる言葉に紫は少し引いた。

「もう十三さんったらー」

ゆかりは少し顔を赤らめながら言った。

「守るって誰から？クズ男って？」

「杉山小十郎、私の旦那さん」

ゆかりがニッコリと微笑む。

「え？」

紫の脳裏に嫌な予感が走る。

無理やり性交を強要され望まぬ妊娠。
でも、少し不思議なことがある。

「どうして障害があるってわかるのですか？」

「検査でわかったよ」

「そうなの？」

十三の言葉に紫は首を傾げる。

「単眼症、おめめがひとつしかないの。
　余命は持って数週間」

「え？」

紫の頭の中が真っ白になる。

「今回の任務は、この子に産まれた意味を与えたいって、ゆかりさん直々に紫さんを指名したんだ」

「え？どうして私なんかを？」

「貴方なんかじゃない、紫ちゃんによ」

ゆかりのその言葉に何故か救われた気がした。

「予定日は？」

紫は雑談のつもりで軽く聞いてみた。

「今週末」

「え？」

紫の頭が真っ白になる。

「ってなわけで一週間護衛よろしく！」

ゆかりがニッコリと笑い敬礼した。