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IF~私じゃない人を愛する人を愛した私の話

伸二さん……
貴方が居なくなって、二週間過ぎました……

私と悠夕は、元気にしています。

深雪さんの事、私、実は知っていました。

あの時、助けて貰った時、もう一度お礼が言いたくて、貴方の後を追いました。

そこで、私の目に入って来たのは、血まみれで横たわる深雪さん。

そして、泣き叫ぶ伸二さん……

私のせいですよね?

私を助けたばかりに、深雪さんとの待ち合わせに遅れて……
そして、助けれなかった……

だから、決めたんです。
責任をはたさなきゃって……

貴方に、近付く為に、必死で勉強したんですよ?

薬学部に入り、同じ職場を探し……

そして、貴方と再会できた……

これは、運命だと感じました。

そして、これは償いなんだって思いました。

だから、貴方の為なら何でもした。

本当は、男の人が嫌いだった。
だけど、貴方に近付き、会話をした。

本当は、怖かった。

だけど、いっばい頑張ったんだよ?

エッチな事だって、自分から進んでやったのだって、貴方の為。

男の人って、こう言うのが好きなんだよね?

貴方と初めてした時、処女じゃなくて、ごめんって、心の中でなんども謝った。

私の処女は、レイプで奪われた……

だから、男の人が嫌いになった……

でも、貴方には償わなきゃいけない事が多すぎた……

だから、セックスなんて嫌いだ……

でもね。
だんだん気持ち良くなってきたの……

私、淫乱なのかな?

貴方の子供が、出来た時。
なぜかは、わかんないけど、嬉しかった……

悠夕が出来た時、初めて気付いた。

貴方の事が、好きだって事に……

だから、過去に戻る薬が出来た時。

貴方は、過去に戻るって言った時……
本当は嫌だった。

嫌で嫌で溜まらなかった……

それと同時に、深雪さんの事を未だに引きずる貴方を見るのも辛かった。

だから、協力したの。
貴方の苦しむ姿を見たくないから……

そして、薬が完成してしまった。

出来た薬をためらわず飲んだ貴方の姿を見て……

私は、深雪さんに嫉妬した。

嫌な女だとつくづく思うよ。

貴方が居なくなってから、もうずいぶん時間が立った気がします……

貴方には、もう出会えないのですか?

悠夕は、元気に泣いて居ますよ……

今、ミルクあげるね。

悠夕が泣く度に……
悠夕が笑う度に……

貴方に会いたくなる。
でも、会えない。

それならいっそう……
貴方に出会わなければ良かった……

だから私は、薬の開発をさらに続けた。

過去に戻る薬があるのなら、タイムマシンのような薬だって出来るはずだ……

私は、とり憑かれたように、研究した。

するとある日。
私は、私に出会った。

私は、私にこう言った。
「後悔するわよ?」

そう言って、薬の成分表を私に渡してくれた。

そして、私の前から私が消えた。

私は、その成分表を元に薬を作った。

私は、悠夕にミルクを飲ませると、さよならのキスをした。

「ごめんね。ママを許して……」

私は、黒いコートを着て、あの時の男と全く同じ姿になり、薬を一気に飲み干した。

眠たくなる感覚。
私は、目を閉じ、次に開けた時……

私は、見慣れた研究室に居た。

そこに、悠夕は居ない。
過去に来たんだ……

私は、直感でわかった。
私は、すぐにあの公園に向かった。

私を殺す為に……

公園に向かうと、そこには私が立っていた。
いつもより早く誰よりも早く学校に行く為に……
久しぶりに勇気を出して出た外の空気は新鮮で、美味しかった事を覚えている。

私は、私の名前を呼んだ。

「春雨銘」

私は振り返る。
そして、私は振り返った私のわき腹にナイフを刺した。

「え?」

「ごめんなさい。
 こうする事が、あなた(私)の幸せなの」

私は、そう言うとナイフを引き抜いた。

「痛い……どうして??」

私は私の目を見つめながら言う。
その目は驚いていた。
そりゃどうだろう。
歳を取った私がそこにいるのだから……

私は、走った。
どうしたらいいかわからなかった。
とりあえず、研究室に戻ろう。

私は研究室に戻った。
私は、黒いコートを脱ぎ鏡の前に立った。
手が真っ赤だ。

私の手は私の血で、真っ赤に染まっていた。

意識が遠のく。

鏡の前の私が消えていく……

「そりゃそうだよね。
 私は、私を殺したのだから……
 今の私は居なくなる……」

私は、ため息を一息つき目を閉じた。

私が次に目を開けたとき。
悠多のぐずる声が聞こえる。

私、生きている?

私が、手を自分の手を見たとき。
手は真っ赤に染まっていた。

そして、懐かしい匂いと共に愛しい人が目の前に現れた。

私は、その人の体を抱きしめる。

「帰ってこないと思っていた。」

帰ってきたの?
どうして……
じゃ、私がやった事は無意味だったの?

その人は、何も無かった事のように言う。

「ただいま」

涙が零れる。
愛した人が、帰ってきた嬉しさと……
自分を殺してしまった罪悪感。
もう、この人を失いたくない。

「もう、どこにもいかないで……」

すると、その人は私の頭を撫でてこう言ってくれた。

「ああ、どこにも行かない…… 
 だから、これからも、ずっと一緒に居てもいいかな?」 

答えなんてもう決まっている……

「ずっと、一緒に居てください。」

私は、力強くその人を抱きしめた。

「伸二さん。
 愛しています。」

初めて言ったかも知れない。

『好き』は、言った事はあるけれど……
「愛している」とは言った事がないと思う。

すると、伸二さんは、苦笑いをしてこう言った。

「ありがとう。
 なんか照れるね。」

私は、伸二さんにべったりとくっついた。

「今日はいつもより仲がいいね」

加藤君が、意地悪な顔をして言った。

「いつも仲がいいですよー
 ねー伸二さん♪」

伸二さんは、軽く頷いてくれた。
その伸二さんの顔はどこか大人っぽく感じた。

次の日、私は薬の成分表を作った。
そして、過去に戻ったら、その子にこう言うんだ。

「後悔するわよ?」

って……
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