不老に剣士

はらぺこおねこ。

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Scene09 滅びのとき

211 人を殴っていいのは殴られる覚悟のあるやつのみ

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僕の目の前にいるのは悪いやつ。
だから殺さない程度に殴っていた。
それだけでみんな大喜び。
だから殴っていた。
だから倒していた。

殴っていいのは殴られる覚悟のあるやつのみ。

誰かが言った。

でもそのとおりだと思っていた。

最初は怖かった。
でもそのうちそういう恐怖に慣れていき。
平気で殴れるようになった。

街の悪を殴る程度だった。

悪はだんだん大きくなり。
それを倒すたびに僕はヒーローになった。

いつもの悪はいつものように悪さをしている。

でもある時、見てしまった。

そいつが泣いているところを……

「なんで俺は負けなければみんなを笑顔にできないのだろう」

ハッとした。
心を打たれた。

僕はそいつを倒すことでみんなを笑顔にし。
そいつは僕に倒されることでみんなを笑顔にしていた。

好きで悪いことをしていた訳じゃない。

そして僕は気づいた。
そいつがその気になれば僕らなんて殺せるってことを……
でもそれをしなかった。

そいつは本当はいいやつだったってことを知った。

それに気づいとき。
僕は笑うことを忘れた。

眼の前に溢れ出る恐怖の象徴。
絶望しかない未来。

そんな世界を打ち壊す僕の力。
どんな悪も悪である限り一撃で倒せる。
それが僕の能力。
それが僕の力。

どんなに倒しても溢れ出る。
どんなに倒しても満たせれない。
どんなに倒しても救われない。
どんなに倒しても悪は減らない。

気づけばそいつはいなくなった。

風の噂によると医者になったらしい。

僕はなんだ?
僕は何になった?

なにもない。

ただ悪いやつが現れてそいつを倒すだけ。
ただ悪やつが出てこなければただいるだけ。

世界が絶望に包まれようとしたとき。
僕は逃げた。

逃げた先が闇の箱。

そこにはただの闇。
でも闇が心地よかった。

闇の中に入ってどれくらいだっただろう。
光が現れた。
その光は暖かく心地よく。
そして地面が現れた。
足に地面が付いた。

すると何故か勇気が溢れた。

いつの日か僕は思い出した。

愛と勇気を。

僕の友達を。
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