上 下
5 / 5
01 そして人間へ

05

しおりを挟む
「そうかい。残念だよ」

ボクが小さく言った。

「なにが残念なんだ?お前はモブだろ?
 モブの分際で主役さまに楯突くのか?」

ジルがそう言ってボクを睨む。

「主役さま?」

ボクが首を傾げる。
しかし、すぐにその情報が入ってくる。

通称主役級。
それは物語の主人公のように強くなる可能性を秘めた存在。
主役級は、魔王を倒す存在とも言われ神すらも傷つけれる力を持っている。
彼らは何事においても優先されている。
それ故、ジルのような存在が産まれる。

「わかるよな?
 モブは経験値になるか命乞いするしかない。
 だから乞えよ!そのすぐに消し飛ぶ命を奪わないでくださいって!」

ジルは、ボクの方に刀を向ける。

「乞わないよ」

ボクが答える。

「ああん?じゃ、死ぬか?」

「死なせないよ」

亜金が剣を抜く。

「やるってか?俺は誰かを傷つければ傷つけるほど強くなれるギフテッドだぜ?
 お前のなんでも武器にするデモニックとは違うんだぞ?」

「……どっちでもいいよ。
 傷つけれなければ強くなれないんだろう?
 そんなの雑魚も同然じゃん」

「亜金、相変わらず辛口だな」

清空が苦笑いを浮かべる。

「いうじゃねぇか。
 テメェら出番だぜ?」

ジルがそういって空間を歪ませる。
すると数十人の傭兵を召喚させた。

「やっとかジル」

ピアスに箒頭の少年がそういった。

「さぁ、あたしは誰を殺ればいいんだい?」

黒髪に美しい肌を持った少女が笑う。

「ジャキ、ベル!
 亜金以外のふたりを殺っていいぞ!
 亜金は俺が殺す!他の奴らは村人捕まえろ!
 全員俺の経験値に変える!」

ジルがそう指示を出すと傭兵たちはうなずいた。

「つっても、そこの雑魚は楽勝だが。
 清空は強いんじゃね?ファルシオンだろ?一応」

ジャキがそういうとベルが笑う。

「力比べと行こうじゃないか!私は清空を殺すよ」

ベルは鞭を召喚すると清空の身体に向けて伸ばした。
清空はその鞭を器用に避けるとベルの腹部に一撃浴びせた。

「お前に私は殺せんよ」

「じゃ、俺が殺してやんよ」

ジャキが清空の頭に銃口を当てた。

「ジャキか、お前はなかなか隅に置けん男だった」

「なんで過去形なんだよ?」

「さぁ?」

「そっか、じゃ死――」

ジャキがそこまでいいかけたとき清空が身体を回転させジャキの頭に一撃蹴りを浴びせた。

「そうやって雑談するところがダメなんだ」

清空が笑う。
ジャキが殺気を込めた目で清空を睨む。
そして笑う。

「だったらこうする」

ジャキはボクの方に銃口を向ける。
そして問答無用で銃弾を放った。

「あ、しまった」

清空が慌てる。
ボクにはなにが起きたかわからない。
わからないまま。
銃弾に当たる。

「死んだ」

ボクは思わず声が出た。

「お前に恨みはないが残念だったな」

ジャキが笑う。

「ってあれ?死んでない?」

ボクの身体が光っている。

「即時転生か?まさか……?」

清空が驚く。
ジャキは舌打ちをした。

「テメェも主役級ってか?
 ふざけるなよ!」

「だったら今のうちに殺してしまえばいいってことだよ」

ベルがそういってボクの方に鞭を伸ばした。

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

ゼロからはじまる冒険~異世界の果てからこんにちは

はらぺこおねこ。
ファンタジー
時の女神の祝福を受け。 全てのステータスが1000倍になる男。 名前はイチ。 しかし欠点があった。 イチの全てのステータスレベルが0だったのだ。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

Heroic〜龍の力を宿す者〜

Ruto
ファンタジー
少年は絶望と言う名の闇の中で希望と言う名の光を見た 光に魅せられた少年は手を伸ばす 大切な人を守るため、己が信念を貫くため、彼は力を手に入れる 友と競い、敵と戦い、遠い目標を目指し歩く 果たしてその進む道は 王道か、覇道か、修羅道か その身に宿した龍の力と圧倒的な才は、彼に何を成させるのか ここに綴られるは、とある英雄の軌跡 <旧タイトル:冒険者に助けられた少年は、やがて英雄になる> <この作品は「小説家になろう」にも掲載しています>

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

花ひらく妃たち

蒼真まこ
ファンタジー
たった一夜の出来事が、春蘭の人生を大きく変えてしまった──。 亮国の後宮で宮女として働く春蘭は、故郷に将来を誓った恋人がいた。しかし春蘭はある日、皇帝陛下に見初められてしまう。皇帝の命令には何人も逆らうことはできない。泣く泣く皇帝の妃のひとりになった春蘭であったが、数々の苦難が彼女を待ちうけていた。 「私たち女はね、置かれた場所で咲くしかないの。咲きほこるか、枯れ落ちるは貴女次第よ。朽ちていくのをただ待つだけの人生でいいの?」  皇后の忠告に、春蘭の才能が開花していく。 様々な思惑が絡み合う、きらびやかな後宮で花として生きた女の人生を短編で描く中華後宮物語。 一万字以下の短編です。

処理中です...