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Scene.07 顔のある月

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 無が、小さな箱に入れられる。
 無は死んだ。
 死んで葬儀を終え箱に入る。

 それは淡々と行われる。

 無の母親は、放心状態だった。
 父親も、放心状態。
 寿司屋も暫く店を閉めることになった。

「僕が、必ず敵を取るからね」

 ボクは、そう言って竹刀を持ち町裏に出る。

「そんな物騒なものを持ってどこに行くのです?
 日本では、竹刀も銃刀法違反になるのでしょう?
 ひとりで、どうするつもりですか?」

 ブリ男が、そう言って現れる。

「ひとりだからいいんだよ。
 ひとりだと怪人が現れやすくなる」

「……それは、困るなぁー」

 ハデスが、現れる。

「ハデス……さん?」

「アンタに死なれると世界は滅びるんやで?
 そんなんかなんやん」

 ハデスが、そう言って小さく笑みを浮かべボクの首元に手刀を浴びせる。

「あ……」

 ボクは、そのまま意識を失う。

「これで本当にええのん?」

「はい」

 ハデスの言葉にブリ男がうなずく。

「ボクあとで怒らへんか?
 ボクとは、異世界でもよくしてもらってるから、嫌われ役をするのはいややねんで?」

「わかってます。
 でも、貴方も魔の名を持つ種族。
 本来ならハタハタと戦うこともあまり歓迎されないはずです」

「……せやけど」

「僕も、これからハタハタのいる世界に向かいます。
 早良さんたちは、すでに向かいました。
 ハデスさん、貴方のくれた位置情報が鍵となりました」

「せやったらウチも……」

「貴方には、ボクくんの監視と警護をお願いします」

「……わかった。
 この世界の平和はあんたらに任せる」

「はい」

 ブリ男が、小さく笑う。
 そして、黒い漆黒の翼を広げる。

「では、次会うときは平和な世界で……」

 ブリ男は、そう言って翼を広げ空高く飛び上がり姿を消す。

「ホンマ、アイツも変わらんなぁ。
 どこの世界に行ってもブリ男はブレない。
 いいヤツや……」

 ハデスが、そう言ってボクを背負い姿を消した。
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