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Scene.06 Blue Moon

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 ――翌日の放課後・鰤虎学園屋上

「それで、おめおめとボクを引き渡したのか?」

 無が、ブリ男を睨みつける。

「はい。
 吟詩さんは、恐らく信用できる人でしょう」

「なぜそう思う?
 理由はあるのか?」

 無は、ブリ男に詰め寄った。

「それは……」

 ブリ男が、清空の方を見る。

「それは、私の兄だからか?」

 清空が、小さな声でそう言うとブリ男がうなずく。

「はい。
 あの黄金色の瞳を見てすぐにわかりました。
 吟詩さんは、金色一族の方だと……
 そして、名前を聞いたときわかったのです。
 吟詩さんの名前は有名でしたからね……」

「……でも、どうして教えてくれなかった?
 俺はあいつを護る義務がある」

「訓練させるのもその義務の一つですよ。
 正直、ボクさんを護るにはみなさん少し力不足です」

「俺らが名前のある怪人に負けるとでも言うのか?」

「勝てますか?
 誰かを護りつつ戦うのは大変ですよ?」

「そうだが……
 だったら俺らは何を目標に戦うんだ?」

「それは、ハタハタを倒し……
 そして、世界に平和をもたらすのです」

「そやな。
 ハタハタを倒さんことには、この世界はいずれ滅びる。
 そうならないためにも、ウチらは戦い続けなアカンな」

「そうだよ。
 ボクくんが、戻ってくるとき。
 ボクくんの居場所を作ってあげようよ」

 早良が、そう言って笑う。

「……くそ。
 ボクもボクだ!
 俺にひとことも言わずに去るなんて……」

「ボクさんは、最後まで『さよなら』と言いませんでした。
 そして、その言葉の代わりに言っていました。
 『いってきます』と……」

 ブリ男が、そう言って小さく息を吐いた。

「だったら、なおさらボクさんが戻ってくるのを待つしかなさそうですわね。
 その間に、私たちも強くなりましょう」

 勇気が、そう言うと無が暫く目を閉じる。
 そして、目を開いたとき言葉を放つ。

「わかった。
 俺がこの中で一番強くなってやる。
 そして、ボクが戦わずに済む世界を作る!」

「その意気です」

 無の言葉にブリ男は、そう答え安堵の笑みを浮かべた。
 そして、時は流れ1ヶ月が過ぎる。
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