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Scene.06 Blue Moon

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「平和を愛した王子は。
 何も知らずにいた。
 幼いふたりのバースディ。
 運命が動く……」

 男の謡声がブリ男の耳に入る。

「誰ですか?」

「僕かい?」

 ブリ男が、その男のほうを見る。
 男はピエロの仮面をつけていた。
 ピエロの仮面にギター。

「そうです」

「僕の名前は、吟詩。
 どこにでも吟遊詩人さ……」

 ブリ男は、吟詩を目を細めてみる。

「吟遊詩人なんて、この日本では滅多にいないと思うのですが……
 貴方は何者なのですか?」

「一握りの希望ってやつさ?」

「一握りの希望?」

 ブリ男が首を傾げる。

「そう、まぁパンドラといえば聞いたことがあるんじゃないかな?」

「厄災の箱……ですか?」

 ブリ男がそういうと吟詩が笑う。

「ホント、日本語って表現が自由だよね。
 パンドラの箱は厄災の箱じゃないさ……
 厄災なんて箱を開ける前からあっただろう?」

「それはそうですが……」

「パンドラの箱の中には希望だけが残された。
 つまりこの世には希望がないはずです。
 なのにあるのは何故か……
 それは、パンドラの箱には希望さえも逃げ出したらさ」

「では、貴方の言う一握りの希望というのは?」

「希望と言っても色いろあるだろう?
 この世に存在する希望の欠片……
 僕は、それを保護することを命じられてここにいるのさ」

 吟詩は、そう言うと再び先ほどの歌を歌い始める。

「貴方の目的はなんなのですか?」

「僕は、ボクさんを護る大四勢力さ」

「大四勢力?」

「ブリタニア、ハタハタ、勇者、そして僕たちパンドラ。
 この戦いは、この4つの勢力によって戦うことになるだろう。
 と言ってもハタハタ以外の3つ勢力の敵は共通しているけどね」

「では、改めて聞きます。
 あなた方、パンドラの目的はなんなのですか?」

「君たちに残された選択肢は3つ。
 1つは、黄昏ボクを僕たちに渡す。
 2つは、抵抗して死ぬか」

「3つめは?」

「僕たちに協力しボクさん自身を強くする。
 まぁ、上のお偉い方が、ついでに他のブリキュアたちや君たちも強くしてやってもいいって言っているのさ」

「ボクくんを強くさせる?
 そんなことが可能なのですか?」

「パンドラに不可能はないのさ」

 吟詩は、そう言って歌を続ける。
 
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