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Scene.05 謳うもの

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 大きな家の大きな部屋。
 ブリ男は椅子に座った途端、目の前のコップにビールが注がれた。

「これは、なんですか?」

 ブリ男が、尋ねると早良の父親がとびっきりの笑顔で答える。

「ビールだよ」

「……えっと」

 ブリ男が返答に困る。

「お父さん!
 鰤谷くん、未成年だよ!」

 早良がそう言うと父親がドヤ顔で答える。

「大丈夫。
 ノンアルコールビールだからね」

 すると早良が、ため息混じりに言葉を放つ。

「ノンアルコールでも未成年に進めたらダメなんだよ」

「知ってるよ。
 でも、飲んでも法律違反にはならないよ」

 父親が、そう言うと早良の母親が現れる。

「あら?お酒の相手なら私がしますよ」

 顔は笑っているがオーラは怒っていた。

「はは、冗談だよ」

 父親が、そう言って笑ってごまかした。

「鰤谷くんごめんね。
 お父さんが悪ふざけしちゃって」

 早良が、申し訳無さそうに謝る。

「いえ、こういう団らんも楽しいものですよ」

 それを聞いた早良の父親がブリ男に尋ねる。

「そう言えば、君はご両親にウチでご飯を食べることを伝えているのかい?」

「あ、僕ひとり暮らしなんです」

「え?そうなの?」

 早良の母親が、そう言ってブリ男の前にご飯を置いた。

「ありがとうございます。
 両親と食事なんて久しく食べてませんね」

「そっか苦労しているんだね。
 ウチで良ければ、いつでも遊びにおいで」

 早良の父親がそう言って優しく笑う。

「ありがとうございます」

 ブリ男が、丁寧にお礼を言うと早良の母親がニッコリと微笑む。

「さぁ、堅い話はそこまでにしてご飯にしましょう」

 そして、用意されたのは一口カツだった。
 ブリ男は、それを口に運び。

「美味しいです」

 と照れ笑いを浮かべた。
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