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Scene.04 勇気の鈴が鳴るとき

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 怪人が、火を吹く。
 勇気は、その火を後退して避けた。
 
「うぬぬぬぬ。
 ちょこまかと、うっとうしい奴め!」

 怪人が、地団駄を踏む。

「貴方も火を吹き出すのですわね」

「我の炎は、赤ハッターの比じゃないぞ!
 燃えつきろ!女が!」

 怪人が大きく息を吸い込み。
 そして、炎を吐いた。
 勇気は、その炎さえも避けた。

「なんどやっても効きませんことよ!」

 勇気は、そう言って足元に何かをぶつける。
 そこにいたのは小学生くらいの子どもだった。
怯えて腰を抜かしている。
 
「ほう、お前が焼かれないのならその子どもを焼いてしまおうか!」

 怪人は、そう言って笑う。

「ちょっと卑怯ですわよ!」

「何を言っている?
 お前は、正義の味方とでも勝負をしているつもりか?
 我は、ハタハタ軍悪魔の兵士だ!」

 勇気が一歩下がる。
 すると再び足元に何かがぶつかる。

「これは……
 油?」

 勇気が小さな声でそう言うと子どもが涙を流しながら答える。

「お母さんが買って来なさいって……
 重いけど、これひとつだけなら買えるだろうって……」

「そう……ですの……」

 勇気が、そう言うとあることを思いつく。

「さぁ、2人揃って丸焼けになるがいい!」

 勇気は油の入った容器を持ち上げる。
 怪人は、大きく息を吸い込む。

「これで、貴方は終わりですわ……」

 勇気は、それを持って素早く怪人の懐に回りこむ。

「そんなに丸焼けになりたいのならお前から!」

 怪人が、そう言ったとき勇気は油の容器を怪人の口の中にねじ込んだ。
 そして、大きく後退する。
 怪人の出しかけた火は収まらず油に引火。
 そして、そのまま怪人の口が炎で燃え上がる。

「ジ・エンドですわ」

 怪人は、無言でそのまま息絶える。

「もう大丈夫ですわよ!」

 勇気が振り返るとそこには、誰もいなかった。
 その代わり手を叩く男の姿があった。
 ブリ男だ。
 ブリ男は、嬉しそうに手を叩いていた。

「お見事……
 生身の人間が怪人を倒すところなんてはじめて見ましたよ」

「貴方はどなたですの?」

 勇気が、警戒に満ちた目でブリ男の方を睨む。

「なんだかんだと聞かれたら?
 答えてあげるが世の情け、世界の破滅をふせぐため世界の平和を守るため愛と真実の悪を貫く。
 魔界の果てからこんばんは。
 私、魔界ブリタニ王国営業部平社員のブリ男と申します」

 そう言ってブリ男は笑顔で答えた。
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