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Scene.03 清らかな空

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 ――数日後の朝、鰤虎学園の屋上


 清空は、学園内屋上にて音楽に合わせてタップを踏む。
 軽やかにリズミカルにそして華麗に美しく。
 リズムが終われば足を止めお辞儀をする。

「終幕」

 清空がそう言うと拍手が響く。

「綺麗なダンスですね」

 ブリ男だった。

「ブリ男……
 いつからそこに居た?」

「音楽が流れ始める前からいました」

「え?」

「実は、昨日の夜はここで空を眺めて眠っていたんですよ」

「ブリ男、家に帰っていないのか?」

「帰ってもひとりですからね。
 寂しい夜は、星を見るに限ります」

「そ、そうか……」

 清空は、苦笑いを浮かべる。

「今日は、早良さんは一緒じゃないんですか?」

「ああ。
 早良は、サーラとして疲れているからな……
 あの性格だ、家の人への言い訳も大変だろうからな……
 ギリギリまで寝かしてやりたい」

「そうですか。
 まだ打ち明けてないのですか?」

 ブリ男が、そう尋ねると清空は険しい顔をした。

「ああ……
 打ち明ける機会を失っているところだ……」

「そうですか。
 そうですよね……」

 ブリ男が、そう言って空を見上げる。
 すると空に何かが浮いている。

「あれは、なんだ?」

「鳥でも飛行機でもありませんね」

「じゃ、なんだ?」

 清空がそう言うとグラウンドにそれが舞い降りる。
 舞い降りてきたのは羽ハッター。
 大空を自由に舞い、弓を自在に操るハッターだ。
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