マーメイド

04 赤ちゃんの十戒

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　　ママは、気付いてくれない。
　　もしかしたら、知っているのかもしれない。
　　もしかしたら、知らないふりをしているのかもしれない。

　理香は、そんなことを考えたくなかった。

「理香？」

　ママが、優しくそう言って理香の肌に触れる。

「これって、タバコの跡？」

　　気付いてくれた。

　理香の心に何かが明るいものが見えた。

「誰にやられたの？
　もしかして、武君？」

　理香は、大きく頷いた。
　涙が出そうになった。

「そいつが、言うことを聞かないからだよ。
　これは、しつけだな。
　そう、しつけ！」

　武さんが、そう言ってケラケラと笑う。

「理香！
　きちんと武君の言う事を聞かなきゃダメでしょ！」

　心の光が一気に暗くなる。
　どうしたらいいのか、わからない。


　　私が、悪いの？
　　私は、何もしていないよ？
　　それとも何もしていないからダメなのかな？

「理香！
　なんとかいいなさい！
　武君にごめんなさいは？」

「え……？」

「理香！」

　静は、そう言って理香の頬を叩いた。

　　痛い……
　　痛いよ、ママ。
　　どうしてだろう？
　　頬を叩かれたのに胸が痛い。