マーメイド

はらぺこおねこ。

文字の大きさ
上 下
10 / 117
02 繋ぐ手

10

しおりを挟む
 壱は、ジャージを着たピノと共に駅に向かった。
 するとメガネのショートカットの女性が壱の方を見ていた。

「あ、美知子さん。
 おはようございます」

 壱は、その女性に挨拶をした。
 するとその女性は小さく言葉を放つ。

「……35分」

「え?」

 壱は、その言葉に首を傾げる。

「35分早いですね。
 デートは、30分前に行動ですよ」

「あ……えっと」

 壱は、戸惑う。

「そう戸惑わないでください。
 お兄ちゃんと呼びますよ?」

「えー。
 それは、困るなー」

 壱が、苦笑いを浮かべながら小さく笑う。

「壱、この人だれ?」

 ピノが、少し警戒しながらそう言った。

「あ、この人は――」

「海道 美知子です」

 美知子が、そう言ってメガネの縁に手を当てる。

「美知子……さん?」

「そう美知子さんです。
 貴方がピノさんですね?」

 美知子の問にピノは元気よく答える。

「うん!
 ピノがピノだよ!」

「元気がいいですね。
 ピノさんにはなまるをあげましょう!」

 美知子は、そう言って笑うと指先でマルを描いた。

「わーい。
 はなまるだー」

 ピノは、無邪気に笑う。

「でも、壱さんにはバツです!」

「え?どうして?」

 壱が首を傾げると美知子は、ため息をつく。

「わかりませんか?
 こんな可愛い女の子にジャージで歩かせるなんて!
 ダメですよ!レッツドレスアップです!」

 美知子は、そう言ってピノの手を引っ張った。

「どれすあっぷ?」

 ピノが戸惑いながらそのまま美知子に引っ張られた。
 壱は、そのふたりのあとを静かについて歩いた。
 そして着いた場所は、ゴスロリショップ。

「ここは……?」

 壱が入りにくそうな表情を浮かべる。

「ゴスロリショップです。
 この店は、アリスをモチーフとしたゴシック・ロリータショップなのでピノさんが着ると……
 あらまぁ不思議!本物のゴスロリになれます!」

「えっと……?」

「ゴシック・ロリータよ!
 永遠なれー!」

 美知子が、そういうとピノも真似して言った。

「なれー」

 そして、ふたりはそのままお店の中へと消えた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

自習室の机の下で。

カゲ
恋愛
とある自習室の机の下での話。

【フリー台本】一人向け(ヤンデレもあるよ)

しゃどやま
恋愛
一人で読み上げることを想定した台本集です。五分以下のものが大半になっております。シチュエーションボイス/シチュボとして、声劇や朗読にお使いください。 別名義しゃってんで投稿していた声劇アプリ(ボイコネ!)が終了したので、お気に入りの台本や未発表台本を投稿させていただきます。どこかに「作・しゃどやま」と記載の上、個人・商用、収益化、ご自由にお使いください。朗読、声劇、動画などにご利用して頂いた場合は感想などからURLを教えていただければ嬉しいのでこっそり見に行きます。※転載(本文をコピーして貼ること)はご遠慮ください。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

処理中です...