嘘恋

はらぺこおねこ。

文字の大きさ
上 下
57 / 95
04 5月5日

57

しおりを挟む
 僕は、湯船につかると溜息をついた。

「なんで、こんな事になったんだろう」

 なんで、僕なんかを気に行ってしまったのだろう……
 僕なんて、何のとりえもないただの……

「バケモノ」

 わかってる。
 はるかさんは、僕が珍しいだけだ。
 そのうち、飽きてバイバイするだろうさ……
 あの時みたいに、僕を珍しがって……
 見えない僕の身体の部分を見て、笑ったり気持ち悪がったりするんだ……
 僕は、鏡を見つめると大きなため息をついた。
 こんな、化け物みたいな僕の口によくキスなんて出来たな……
 今日だけで、何度キスした事か……
 親にも気味悪がられて僕を捨てたんだ……
 なのに、はるかさんは……
 僕は、溜息をついたあと軽めに体と頭を洗うと風呂場を出た。
 リビングに着くと、はるかさんが眠そうにソファーでウトウトとしていた。
 僕は、はるかさんの肩を軽く揺らした。
 はるかさんは、ウトウトと僕の顔を見た。

「真治……?」

「こんな所で、眠っていたら風邪をひくよ?」

「うん?」

「真治、抱っこ……」

 抱っこ……
 人に触れる?

「お前は、化け物だ!」

 わかっている。
 だけど、僕は……

「真治。
 は・や・く……」

 はるかさんは、色っぽい声で、そう言うと僕の首筋をなでた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

酷い扱いを受けていたと気付いたので黙って家を出たら、家族が大変なことになったみたいです

柚木ゆず
恋愛
 ――わたしは、家族に尽くすために生まれてきた存在――。  子爵家の次女ベネディクトは幼い頃から家族にそう思い込まされていて、父と母と姉の幸せのために身を削る日々を送っていました。  ですがひょんなことからベネディクトは『思い込まれている』と気付き、こんな場所に居てはいけないとコッソリお屋敷を去りました。  それによって、ベネディクトは幸せな人生を歩み始めることになり――反対に3人は、不幸に満ちた人生を歩み始めることとなるのでした。

義母の秘密、ばらしてしまいます!

四季
恋愛
私の母は、私がまだ小さい頃に、病気によって亡くなってしまった。 それによって落ち込んでいた父の前に現れた一人の女性は、父を励まし、いつしか親しくなっていて。気づけば彼女は、私の義母になっていた。 けれど、彼女には、秘密があって……?

〖完結〗幼馴染みの王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。

藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。 何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。 同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。 もうやめる。 カイン様との婚約は解消する。 でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。 愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません! 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。

【完結】お世話になりました

こな
恋愛
わたしがいなくなっても、きっとあなたは気付きもしないでしょう。 ✴︎書き上げ済み。 お話が合わない場合は静かに閉じてください。

心から愛しているあなたから別れを告げられるのは悲しいですが、それどころではない事情がありまして。

ふまさ
恋愛
「……ごめん。ぼくは、きみではない人を愛してしまったんだ」  幼馴染みであり、婚約者でもあるミッチェルにそう告げられたエノーラは「はい」と返答した。その声色からは、悲しみとか、驚きとか、そういったものは一切感じられなかった。  ──どころか。 「ミッチェルが愛する方と結婚できるよう、おじさまとお父様に、わたしからもお願いしてみます」  決意を宿した双眸で、エノーラはそう言った。  この作品は、小説家になろう様でも掲載しています。

【完結】母親になれなかった私達へ

九時せんり
現代文学
母親の呪縛から逃れられず、母親になれなかった人たちへ。

処理中です...