嘘恋

はらぺこおねこ。

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04 5月5日

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 案内したのは、僕の部屋の隣の客間。
 もとい空き室。

「あ、真治のお隣さん?」

「そうだね」

「夜這いし放題?」

「夜這い?そんなこと出来る根性ないよ」

「違う、違う。
 私が、真治を夜這いするの」

 はるかさんが、そう言って笑う。

「好きにすればいい」

 僕がそう言うとまたあの声が聞こえる。

「お前は、バケモノだ」

 そうだね。
 でも、夜這いとかされないから大丈夫。

 僕は、自分の中にいる僕と話をしていた。

「真治?」

「え?あ……なに?」

「入ってもいいかな?」

「うん。
 どうぞ」

 僕は、ゆっくりとドアの扉を開けた。

「あれ、ベッドしかないね」

「あ、うん……
 シーツは、綺麗にしてあるから心配しないで」

「うん!
 ありがとう!」

 はるかさんは、ニッコリと笑うと僕の頬に軽くキスをした。
 僕の心のなかで、小さな喜びが生まれていた。
 キスされたことに喜んでいるわけじゃない。
 誰も来ないと思いつつも毎日掃除していた部屋に客が来た。
 それが、少し嬉しいんだ。
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