嘘恋

はらぺこおねこ。

文字の大きさ
上 下
32 / 95
03 5月4日

32

しおりを挟む
 なにも考えれない。
 頭のなかがまっしろ。
 なのにあの声は、まだ続く。

「触れるな」

「喋るな」

「近づくな」

 様々な声色が僕の頭を刺激する。
 僕は、どうすることもできない。
 向こうから行動に移してくれている。
 僕は、何もしていない。

 逃げる?
 何処に?
 動く?
 動けない。
 怖い?
 怖くない。

 はるかさんの舌が僕の舌に当たる。
 舌と舌がぶつかりあい変な気分。
 はるかさんの息遣いが僕の顔に当たる。
 はるかさんの髪が僕の鼻にあたりむず痒い。
 これ以上はダメだ……

 僕は、強引にはるかさんから身体を離した。
 そして、大きなくしゃみをした。

 その寸前。
 はるかさんの顔が見えた。
 はるかさんは、涙を流していた。

 でも、すぐにそれは笑顔に変わる。
 まずいよね……
 これは、普通の容姿の人間でもやってはダメなことだ。
 僕は、深く反省した。

 でも、はるかさんは笑っている。

「私、職業柄色んな人とキスしたけど、キスの最中にクシャミをされたのは真治が初めてだよ」

「ごめん」

「気にしない!
 恋人でもないのにキスの最中に胸をももうとする男もいるんだもん。
 そんなのに比べたら何億倍もマシ!」

「そっか……」

「キスは、初めて?」

「うん」

「私が、初めての人なのね」

 はるかさんは、そういうと照れながら嬉しそうに笑った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...