嘘恋

はらぺこおねこ。

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01 チェーン電話

02

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 大きな音を立てる目覚まし時計。
 僕は、ゆっくりと体を起こして目覚まし時計を止める。

「嫌な夢だ」

 僕は、つぶやく。
 僕は、いつになったらこの呪縛から逃れるのだろうか?

 僕は、自分の手を見つめる。
 そこには、カフェ班があった。
 体中にあるそれが、皆が僕をバケモノと呼ぶ理由だ。

  レックリングハウゼン病。

 大人になり、親に聞いて初めて聞いた病名。

 この病気は3000人に1人の割合で、発症する皮膚に現れる病気。
 しかし、親がこの病気を持っていると子供は2人に1人の割合で発症する。

 僕は、後者だ。
 親も苦しんだはずなのに、どうして僕を産んだのか……
 僕は親を恨んだ。
 今でも恨んでいる。

「苦しむとわかっていて、どうして僕を生んだの?」

 聞いてはいけない一言だったのだろう。

 子供は残酷だ。
 思った事をすらすら言葉に出す。

 それを残酷だという大人はもっと残酷だ。
 だってそうだろう?
 口には出さないだけでその大人も僕のことをバケモノだと思っているのだから。
 だから、大人になってからは疑心暗鬼。
 いつからか僕はこう思うようになっていた。


  全ての人間は、僕を“バケモノ”だと思っている。


 そして、それと同時に僕の中にもうひとりの僕が生まれる。
 声が聞こえるんだ。
 誰かを信用しようとすると、頭の中で声が聞こえる“お前はバケモノだ”
 誰かを好きになろうとすると、頭の中で声が聞こえる“お前はバケモノだ”

 そのたびに僕は思う。
 そのたびに僕は否定する。

  違う、違う、違う!
  僕は、バケモノなんかじゃない!

 そのたびに僕は否定していた。
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