上 下
167 / 186
Scene07 コインロッカーの女の子

168 愛してる

しおりを挟む
 怖くて眠れない。
 恐ろしい朝なんてあっという間にやってくる。
 慌ただしく響く床の音。
 姉は怖くなって部屋の鍵を閉めた。

「理香!
 ここを開けなさい!」

「ヤダ!」

 私は、大きな声で抵抗した。

 ドン!
 ドン!
 ドン!ドン!
 ドン!ドン!ドン!
 ドン!ドン!ドン!ドン!

 扉を叩く音が響く。
 暫くドアを叩く音が響いた。
 そして、ドアを叩く音がしなくなった。

 足音が離れて行く……

 助かったのかな?

 一呼吸入れた。
 だけど次の瞬間、私が息を呑んだ。

 カチャリ。

 閉めたはずの扉のドアの鍵が開けられる。
 そして、ママが顔を覗かせる。

「りーかぁー?
 どうして、扉を開けてくれなかったのかなぁー?」

 ママが、怖い笑顔で姉を見た。
 姉は怖くて首を横に振った。

「理香……
 由香は、どこにいるのかなぁー?」

 姉は首を横にふるしか出来ない。

「理香!
 ママね、武君と結婚するの。
 でもね。
 武君と結婚するには、理香と由香を殺さなくちゃいけないの!」

 背筋がぞっと冷たくなるのを感じた。

「だ・か・ら・ね♪
 理♪香♪由香の居場所教えて♪」

 姉は首を横に振った。

 ママは、姉の頬を容赦なく叩く。
 その勢いで思わず倒れてしまった。

 ママが、姉の体を足で踏む。
 何度も。
 何度も。
 何度も。
 何度も踏んだ。

 意識が遠くなっていく……

 容赦なく……
 顔を踏まれ、胸を踏まれ……
 私の意識は、遠くなっていく。

 自分の一生は、なんだったんだろうか……?

 私の一生は、短かったのかもしれない。
 その中で、ママと過ごした時間は長かった。

 私が、もうちょっと大人になればママの考えていることが理解できたのかな?

 私には、お友達も恋人も何もありません。
 ママしかいません。

 ママともっといっぱい話したかったな……

 でもね?
 私、わかったよ。

 悪戯をしてママに手を叩かれた事あった。
 その時は、ただ手が痛かった。

 でもね。
 あの時叩かれた頬は、頬よりも胸が痛かった。
 それはね、きっと私の心が痛かったんだと思う。

 でもね。
 気付いてほしかったな……

 私の心もね。

 『痛い』って、感じることのできる人間だって事を……

 そして、パパ……
 ずっとママと3人でいたかったな……
 パパとママ。
 ふたりがいるだけで私はすくわれた気がする……

 私の人生なんだったんだろう?

 嬉しい事も楽しい事もこれから沢山あったのかな?

 由香……

 貴女は、生きて……
 沢山生きて……

 私の分まで生きて……

 それが、私の願いです。

「理香?
 由香の居る場所教える気になった?」

 私は、何も答えれない……
 だって、私はもう死んでいるから。
 私は、私の体を見つめている。

 ママが、何かを言っている。
 だけど、私にはわからない。

 武さんが、ケタケタと笑っている。

 何かを言っている。

 でも、私にはわからない。

 姉は少し離れた場所から自分の体を見つめていた。

 何も出来ない。
 何も出来ない。

 苦しい。
 つらい。

 歪んだ気持ちのまま姉は、生涯を終えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

初めてなら、本気で喘がせてあげる

ヘロディア
恋愛
美しい彼女の初めてを奪うことになった主人公。 初めての体験に喘いでいく彼女をみて興奮が抑えられず…

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

【R18】通学路ですれ違うお姉さんに僕は食べられてしまった

ねんごろ
恋愛
小学4年生の頃。 僕は通学路で毎朝すれ違うお姉さんに… 食べられてしまったんだ……

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

夜の公園、誰かが喘いでる

ヘロディア
恋愛
塾の居残りに引っかかった主人公。 しかし、帰り道に近道をしたところ、夜の公園から喘ぎ声が聞こえてきて…

処理中です...