いけめんほいほい

Scene03 麦わら帽子はまだ早い

39 避けるチャンピオン

金髪男の仲間は意識が戻らない。
診察の結果。
極度の薬物中毒だった。

自分のせいじゃない。

百道もわかっている。
でも殴るとはそういうことなのだ。

百道がその男を殴るシーンはYou Tubeにあげられていた。

女の子を守ったと応援してくれるもの。
相手を傷つけたと罵倒するもの。

いろんな存在がいた。

そのとき恋次は……

「海夜ちゃんとデートだったの？」

「おいおい、怪我させてへこんでいる友達に言う言葉か？」

「童貞は童貞しか笑わないって言葉知ってる？」

「何が言いたいんだ？」

「童貞の気持ちは童貞にしかわからないんだ」

「俺も童貞だぞ？」

「マジ？」

「高校生になってないだぞ？早くないか？」

「友よ！！！」

恋次は百道に抱きついた。

「殴るぞ！」

百道は恋次に拳を向ける。
恋次はそれを避ける。

「避けるのうまいな」

百道は笑う。

「殴るのは苦手だけど殴られるのは避けたい」

「避けるチャンピオンになれるぞ」

「えー、なんかダサい」

「スキあり！」

百道は恋次を拳を向ける。
恋次はそれを避ける。

百道は何度も恋次の拳を向ける。
恋次は何度も避ける。

「才能あるぞマジで」

恋次はそう言って小さく笑った。