芋洗THE係長の事件簿

07 誰がために鐘は鳴る。

誰がために鐘は鳴る。その3

　空は、どんよりと曇り空。
　俺と玉藻が出逢ったのもこんな日だった。
　俺は、不食の能力で色んな人の所に連れ回されていた。
　政治家、医者、難病の人……
　全ての不幸を食べていた。
　それが、お金になるから……
　毎日毎日不幸を食べていた。
　学校になんてほぼ通えない。
　それくらいに忙しかった。
　俺の幸せはなんだろう？
　ふとそんなことを思っていた。
　クラスでも俺は浮いていた。
　だけど、もっと浮いている女の子がいた。
　女の子の名前は、多摩月　玉藻。
　俺のクラスメイトで、先月転入してきたばかりの女の子。
　クラスに馴染めず、何故かいじめられ毎日泣いていた。
　それは、昔の自分を見ているようでつらかった。
　俺も昔は、毎日いじめられて泣いていた。
　体にできている無数のシミが、原因だった。
　原因の発端は、教師の一言だった。
「君は、きちんと体を洗っているのかい？
　不潔にしているからそんなシミができるんじゃないかな？」
　これから、俺は不潔な人間としていじめられ続けていた。
　でも、6歳の時に受けるギフト検定で俺は、オールウェポンという能力もあることがわかった。
　不食の能力は、その前から知っていた。
　でも、みんなには内緒にしていた。
　このことがみんなにバレてから、手のひらを返すように優しくなった。
　相談されることも多くなった。
　僕の不食が目的だった。
　人の不幸を自然に食べる。
　子供ながらに色々不幸があるらしく、僕をいじめていたヤツの不幸まで食べていた。
　正直鬱陶しかった。
　でも、誰も仲良くはしてくれなかった。
　友達なんてひとりもいない。
　寂しい。苦しい。つらい。
　色んなモノが俺の頭の中をぐるぐると回る。
　今日の天気は、曇天。
　今にも雨が振りそうだった。
　それでも俺は、家に帰りたくなかった。
　家には、生意気な弟と俺の能力でお金を稼ごうとする両親しかいない。
　家でも外でも俺はひとりだった。
　だから、遠回りしていつもは通らない公園を通って帰ろうと思った。
　玉藻がいつものようにいじめられていた。
　男子に殴られ女子に蹴られ。
　見ていて胸がざわついたのを覚えている。
　すると男子のひとりがこんなことを言い出した。
「こいつ裸にしてやろうぜ……」
　玉藻の顔が青くなった。
「おもしろそう。
　そうだ、ロリコンのホームレスさんの前で裸にしようよ」
　女子が楽しそうに笑う。
「イヤ……」
　玉藻が、首を横に振った。
「はい、みんなーせーのー」
　男子がそう言うと他の男子や女子が声を出す。
「お前に拒否権はなーい！」
　男子は、そう言って玉藻の胸を服の上から触った。
「おい、コイツ生意気にも胸があるぜ？」
　すると他の男子も興味津々で玉藻の胸を触る。
「じゃ、下の方にも毛が生えていたりして……」
　女子が、そう言うと男子たちが玉藻のスカートに手を当てる。
　流石に可愛そうだと思った。
　俺は、静かにいじめられている玉藻の方へ近づいた。
「あ、亜金だ……」
　女子が、そう言って俺の方を見る。
　すると全員が俺の方を見た。
　俺は、ただ一言こう言った。
「もう4時過ぎてるよ……」
　するとみんな慌て出す。
「ヤバい！塾の時間だ！」
「私、ピアノの時間……！」
　玉藻をイジメていたクラスメイトたちは、慌ててその場から離れた。