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07 漁猫
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こういうとき、何を会話したらいいかわからない。
何をすればいいのかわからない。
どうすればいいんだろうな。
そんなことを思っていると、みさきさんが口を開く。
「おててつないでもいいですか?」
「え?あ……うん」
僕は小さく頷いた。
そして、ポケットから手を出した。
みさきさんの手はひんやりとして冷たい。
「一くんの手、暖かいね」
「そっかな?」
「暖かいよ……」
僕の心も暖かくなる。
なんだろう……
あ、俺……
今、しあわせなんだ。
これが、しあわせなんだ。
そう思ったとき背中がチクリと痛む。
そして背中がだんだん暖かくなり意識が遠くなる。
「はは。
お前とお前で最後だ!」
見覚えのある男が、僕から何かを抜く。
あれは、ナイフ?
みさきさんの表情が凍っている。
「一くん!一くん!」
みさきさんが、僕の体を揺さぶりそして抱きしめる。
「おい!
俺を無視するな!」
この声……
ああ、あのときの絡んできた男の声か……
「一くん、しっかりしてください!
今、救急車を……」
みさきさんが、ポケットからスマホを取り出す。
「大丈夫……だよ……
なんか……危ない人いる……から……
みさきさん……は逃げて……」
なんだろう、声が出ない。
「嫌です!
一くんが、ここで死ぬのなら私も死にます!
もう……誰かを失うだけの人生なんて……
嫌なんです!」
みさきさんが、そう言うとあたたかい何かが僕の顔に落ちる。
「泣かないでよ……
僕は、大丈夫だから……」
僕は、弱々しくみさきさんの涙を手で拭った。
「おい!
そこで何をしている?」
また別の男の人の声が聞こえる。
紺色の服を着ている……
誰だろう?
「俺は、俺の人生を滅茶苦茶にしたコイツラを殺すんだ!」
何を言っているんだろう?
人生を滅茶苦茶……
ナイフを持った男はナイフを振り回す。
「俺は、政治家の息子だったんだ。
コイツらのせいで俺の人生は滅茶苦茶だ!
あの女の時みたいに命乞いしろよ女!
アイツはなんていったっけ……
そうだ!『私の体を好きにしていいから護だけは助けて!』だっけな!」
護……?
「そう、だから好きにしてやったぜ!
入れたり出したりしまくった!
男にナイフを刺すより女のほうがいいな!
肉は柔らかくて……悲鳴をこらえるあの表情……
ああ、想像するだけで」
僕は、重い体をゆっくりと起こす。
「お前が、護と美姫を殺したのか?」
僕は、その男を睨む。
「ああ?
それがどうした?
人間のクズが死のうが死なないがお前には関係ないだろう?
だって俺のほうが――」
僕は、最後の言葉を聞く前にその男の顔を殴った。
初めて人をおもいっきり殴った。
でも、僕は喧嘩が弱い。
逆に男の力に負けそうになったとき……
みかんが、男の頭に飛んできた。
「一先輩!」
蜜柑ちゃんだ……
葉月先輩や宮崎さんもいる。
紺色の服を着た男の人達もたくさん集まりナイフを持った男が取り押さえられる。
僕は、その場に座り込む……
あれ……力が出ない……
僕……死ぬのかな……
「一くん!」
みさきさんが、僕に近寄る。
そして僕の体を抱きしめる。
「一くん冷たくなってきていてますよ」
「そっか」
「死なないでください……」
みさきさんが、涙を流す。
「死ななかったらずっと一緒にいてくれる?」
こんなときに僕は何を言っているんだろう?
「います。
ずっと一緒にいますから……
死なないでください」
なんだろう、なんかしあわせだな。
僕……
たぶん……
みさきさんのこと……
僕の意識はそこで途切れた。
何をすればいいのかわからない。
どうすればいいんだろうな。
そんなことを思っていると、みさきさんが口を開く。
「おててつないでもいいですか?」
「え?あ……うん」
僕は小さく頷いた。
そして、ポケットから手を出した。
みさきさんの手はひんやりとして冷たい。
「一くんの手、暖かいね」
「そっかな?」
「暖かいよ……」
僕の心も暖かくなる。
なんだろう……
あ、俺……
今、しあわせなんだ。
これが、しあわせなんだ。
そう思ったとき背中がチクリと痛む。
そして背中がだんだん暖かくなり意識が遠くなる。
「はは。
お前とお前で最後だ!」
見覚えのある男が、僕から何かを抜く。
あれは、ナイフ?
みさきさんの表情が凍っている。
「一くん!一くん!」
みさきさんが、僕の体を揺さぶりそして抱きしめる。
「おい!
俺を無視するな!」
この声……
ああ、あのときの絡んできた男の声か……
「一くん、しっかりしてください!
今、救急車を……」
みさきさんが、ポケットからスマホを取り出す。
「大丈夫……だよ……
なんか……危ない人いる……から……
みさきさん……は逃げて……」
なんだろう、声が出ない。
「嫌です!
一くんが、ここで死ぬのなら私も死にます!
もう……誰かを失うだけの人生なんて……
嫌なんです!」
みさきさんが、そう言うとあたたかい何かが僕の顔に落ちる。
「泣かないでよ……
僕は、大丈夫だから……」
僕は、弱々しくみさきさんの涙を手で拭った。
「おい!
そこで何をしている?」
また別の男の人の声が聞こえる。
紺色の服を着ている……
誰だろう?
「俺は、俺の人生を滅茶苦茶にしたコイツラを殺すんだ!」
何を言っているんだろう?
人生を滅茶苦茶……
ナイフを持った男はナイフを振り回す。
「俺は、政治家の息子だったんだ。
コイツらのせいで俺の人生は滅茶苦茶だ!
あの女の時みたいに命乞いしろよ女!
アイツはなんていったっけ……
そうだ!『私の体を好きにしていいから護だけは助けて!』だっけな!」
護……?
「そう、だから好きにしてやったぜ!
入れたり出したりしまくった!
男にナイフを刺すより女のほうがいいな!
肉は柔らかくて……悲鳴をこらえるあの表情……
ああ、想像するだけで」
僕は、重い体をゆっくりと起こす。
「お前が、護と美姫を殺したのか?」
僕は、その男を睨む。
「ああ?
それがどうした?
人間のクズが死のうが死なないがお前には関係ないだろう?
だって俺のほうが――」
僕は、最後の言葉を聞く前にその男の顔を殴った。
初めて人をおもいっきり殴った。
でも、僕は喧嘩が弱い。
逆に男の力に負けそうになったとき……
みかんが、男の頭に飛んできた。
「一先輩!」
蜜柑ちゃんだ……
葉月先輩や宮崎さんもいる。
紺色の服を着た男の人達もたくさん集まりナイフを持った男が取り押さえられる。
僕は、その場に座り込む……
あれ……力が出ない……
僕……死ぬのかな……
「一くん!」
みさきさんが、僕に近寄る。
そして僕の体を抱きしめる。
「一くん冷たくなってきていてますよ」
「そっか」
「死なないでください……」
みさきさんが、涙を流す。
「死ななかったらずっと一緒にいてくれる?」
こんなときに僕は何を言っているんだろう?
「います。
ずっと一緒にいますから……
死なないでください」
なんだろう、なんかしあわせだな。
僕……
たぶん……
みさきさんのこと……
僕の意識はそこで途切れた。
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