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05 夏休み
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場所が場所なだけに行くことはできなかった。
数日後、美姫と護が返って来た。
冷たくなり二度と笑わぬその姿に成り果てて……
「美姫……護……
なにがあったの?」
答えは返ってこない。
もう死んでいるから……
美穂と護の動くことのない体を見て川名さんが声を上げて涙する。
僕は声が出ることすらなかった。
涙すらこぼれなかった。
「なんで……?
いったい誰が……」
あとから到着した宮崎さんが驚いている。
「宮崎さん来てくれたんだね……」
「いったいなにがあったの?」
宮崎さんに起きた出来事を説明した。
美姫と護が空港で通り魔によって刺され、犯人は今逃亡していること……
護は美姫を守るために必死で守ったけどナイフでめった刺しされたこと。
美姫は、動かなくなった護に泣きながら抱きしめ、そしてそのまま犯人にナイフで背中を何度も切りつけられたことを……
すべてが絶望、すべてに失望。
どうして美姫は、死んだの?
僕のジンクスが弱くなった?
僕が好きだったら美姫はしあわせで済んだよね?
どうして?
答えはわからない。
僕にはなにもわからない。
ただ誰かが頭をチョップする。
振り向くと葉月先輩がそこにいた。
「なにするんですか?」
僕は、葉月先輩に尋ねた。
「目の前で女の子が泣いているの!
今できることをしてあげなさい!」
僕は、川名さんの方を見る。
川名さんは大声を上げて泣いている。
どうして川名さんがここまで泣いているかわからない。
だけど、僕は川名さんの肩をたたいた。
川名さんが振り向く。
「大丈夫?」
僕はそれしか言葉が出なかった。
「すみません。
でも、今は……」
僕は、川名さんの体を抱きしめてみた。
体が勝手に動いたんだ。
「ごめん」
そして、何故か謝る僕……
「ありがとうございます」
川名さんが耳元でお礼をいう。
「うん」
「これからは、私があなたを護りますから。
毎日、ご飯作りに行きます。
毎日、起こしに行きます。
だから……だから、私を嫌わないでください」
「大丈夫。
もう誰も傷つけない。
もう誰も傷つかない。
僕が護るんだ」
僕は、そう言ったときはじめて涙がこぼれた。
数日後、美姫と護が返って来た。
冷たくなり二度と笑わぬその姿に成り果てて……
「美姫……護……
なにがあったの?」
答えは返ってこない。
もう死んでいるから……
美穂と護の動くことのない体を見て川名さんが声を上げて涙する。
僕は声が出ることすらなかった。
涙すらこぼれなかった。
「なんで……?
いったい誰が……」
あとから到着した宮崎さんが驚いている。
「宮崎さん来てくれたんだね……」
「いったいなにがあったの?」
宮崎さんに起きた出来事を説明した。
美姫と護が空港で通り魔によって刺され、犯人は今逃亡していること……
護は美姫を守るために必死で守ったけどナイフでめった刺しされたこと。
美姫は、動かなくなった護に泣きながら抱きしめ、そしてそのまま犯人にナイフで背中を何度も切りつけられたことを……
すべてが絶望、すべてに失望。
どうして美姫は、死んだの?
僕のジンクスが弱くなった?
僕が好きだったら美姫はしあわせで済んだよね?
どうして?
答えはわからない。
僕にはなにもわからない。
ただ誰かが頭をチョップする。
振り向くと葉月先輩がそこにいた。
「なにするんですか?」
僕は、葉月先輩に尋ねた。
「目の前で女の子が泣いているの!
今できることをしてあげなさい!」
僕は、川名さんの方を見る。
川名さんは大声を上げて泣いている。
どうして川名さんがここまで泣いているかわからない。
だけど、僕は川名さんの肩をたたいた。
川名さんが振り向く。
「大丈夫?」
僕はそれしか言葉が出なかった。
「すみません。
でも、今は……」
僕は、川名さんの体を抱きしめてみた。
体が勝手に動いたんだ。
「ごめん」
そして、何故か謝る僕……
「ありがとうございます」
川名さんが耳元でお礼をいう。
「うん」
「これからは、私があなたを護りますから。
毎日、ご飯作りに行きます。
毎日、起こしに行きます。
だから……だから、私を嫌わないでください」
「大丈夫。
もう誰も傷つけない。
もう誰も傷つかない。
僕が護るんだ」
僕は、そう言ったときはじめて涙がこぼれた。
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